虎の巣head

四天王論

(2023年01月07日発表、2025年02月16日一部修正)

 はじめに
 1.四天王の所持するお遣いアイテムについての謎
  (1)雨雲の腕輪を貰ったことの真相
  (2)雨雲の腕輪×2の効果
  (3)その他についての理由
   (i)火神防御輪×2
   (ii)タイニィフェザーの依頼
   (iii)疾風の靴×2
   (iv)アディリスの依頼
 2.「涙を拭いて」の真相
  (1)GBサガにおける「涙を拭いて」
  (2)アディリスの異常性
  (3)四天王の過去
  (4)名前の意味
  (5)「涙を拭いて」の真相

はじめに:

 ロマ1の物語の大きな柱の一つとして四天王のお遣いイベントがある。
 本稿ではこの一連のイベントをもとに、ゲーム内や文献では語られない四天王の過去について言及する。

1.四天王の所持するお遣いアイテムについての謎

 水竜からアフマドの娘を取り返す際に、水竜は次のように語る。
 「ベイル高原の真ん中にグレートピットというでかい穴が開いている。そこにアディリスという奴が棲んでいる。そ奴に雨雲の腕輪を貸したままになっている。それを取り戻してこい。」(ゲーム内の台詞)

 そして、アディリスのもとに訪ねると、アディリスは次のように語る。
 「北バファルのスカーブ山にタイニィフェザーが棲んでいる。そいつから疾風の靴を借りてきてほしいのだ。」(ゲーム内の台詞)
 

 それから、タイニィフェザーのもとに訪ねると、タイニィフェザーは次のように語る。
 「トマエ火山の中にフレイムタイラントが棲んでいる。そいつから火神防御輪という頭輪を貰ってきてくれ。」(ゲーム内の台詞)

 最後に、フレイムタイラントのもとに訪ねると、フレイムタイラントは次のように語る。
 「俺は凍気を発する武器や魔法が苦手だ。それでそういう武器やアイテムを自分で集めて自分の安全を確保しているのだ。そこでだ、アイスソードという武器があるらしい。それを持ってきてくれ!」(ゲーム内の台詞)
 

 以上の台詞から関係を整理すると、四天王それぞれがもともと所有していたお遣いアイテムは、
 ・水竜       :雨雲の腕輪(これをアディリスに貸し出していた)
 ・アディリス    :無し
 ・タイニィフェザー :疾風の靴
 ・フレイムタイラント:火神防御輪
 となる。

 これらのアイテムは邪神封印戦争の際に四天王がエロール側についたことに対するエロール側からの信義の現れであろうから、アディリスだけ無いというのは不公平である。
 そこで、公平にすることを考えると、アディリスはエロール側のアイテムではなく、エロールの独演会チケット(「涙を拭いて」イベント)を貰ったと考えることができるだろう。
 従って、四天王それぞれがもともと所有していたお遣いアイテムは、
 ・水竜       :雨雲の腕輪
 ・アディリス    :エロールの独演会
 ・タイニィフェザー :疾風の靴
 ・フレイムタイラント:火神防御輪
 となる。
 

 しかし・・・である。
 四天王の台詞やイベントをもとに整理すると上記のようになるが、実際にはアディリス、タイニィフェザー、フレイムタイラントは自分の背後にもう一つずつお遣いアイテムを持っている。
 即ち、四天王それぞれがもともと所有していたお遣いアイテムは、
 ・水竜       :雨雲の腕輪(アディリスに貸し出していたもの)
 ・アディリス    :雨雲の腕輪(アディリス背後の宝箱)、エロールの独演会
 ・タイニィフェザー :疾風の靴、疾風の靴(タイニィフェザー背後の宝箱)
 ・フレイムタイラント:火神防御輪、火神防御輪(フレイムタイラント背後の宝箱)
 となるのである。
 

 そうすると今度は水竜が一つ足りなくなるので、公平性を保つために水竜も雨雲の腕輪をもう一つ貰っていたすると、四天王それぞれがもともと所有していたお遣いアイテムは、
 ・水竜       :雨雲の腕輪×2
 ・アディリス    :雨雲の腕輪、エロールの独演会
 ・タイニィフェザー :疾風の靴×2
 ・フレイムタイラント:火神防御輪×2
 となる。

 上記の分配はゲーム内の事実と公平性をもとに推測したものであるから現時点では確証はない。
 しかしながら、この分配を前提とすると(不思議と)四天王に関わるいくつかの真相について説明することができるのである。
 ということで、以下では上記の分配から見えてくる四天王の真相について言及する。
(1)雨雲の腕輪を貰ったことの真相
 上記の分配でまず気になることはアディリスも雨雲の腕輪を貰っていることである。
 「水」の水竜だから雨雲の腕輪、「風」のタイニィフェザーだから疾風の靴、「火」のフレイムタイラントだから火神防御輪というのは司る属性が対応しているので分かりやすいが、「土」のアディリスが雨雲の腕輪というのはイレギュラーである。

 そこで、四天王のステータスを眺めてみる。
■水竜
HP
9851/9928 74 101 74 74 74 74 74 0 74 4 - - -
- - - - - - - - - - - - -
1:牙14(毒牙、麻痺牙)
術法:なし

■アディリス
HP
10817/10902 74 111 74 74 74 74 74 0 74 4 - × -
- - - - - - - - - -
1:毒霧14(毒霧(憑依))
2:牙14(毒牙、麻痺牙)
土:99/99/0(なし)

■タイニィフェザー
HP
9339/9412 74 96 74 74 74 74 74 0 74 4 - - -
- - - - - - - - - - - - -
1:くちばし14(石化くちばし)
術法:なし

■フレイムタイラント
HP
9825/9902 74 101 74 74 74 74 74 0 74 4 - - -
- - - × - - - - - - - - -
1:炎14(炎(全))
2:牙14(毒牙、麻痺牙)
火:99/99/0(なし)

 上記のように、それぞれの属性耐性に着目すると、耐性のある属性と同系統のアイテムを貰っていることが分かる。
 つまり、水竜とアディリスが「水属性耐性あり」だから雨雲の腕輪、タイニィフェザーが「風属性耐性あり」だから疾風の靴、フレイムタイラントが「火属性耐性あり」だから火神防御輪ということである。

 これで水竜だけでなくアディリスも雨雲の腕輪を貰ったことについてのそれなりの説明はついたように見えるかもしれない。
 しかしながら、水竜とアディリスが雨雲の腕輪を貰ったことの本当の理由は実は別のところにあるのである。
 では、その真相である雨雲の腕輪の持つ(本来持っていた)耐性を見てみましょう。
名称
58:雨雲の腕輪 3 1 - - - - - - - - - - - - - -
 上記のように雨雲の腕輪はゲーム内では耐性効果は無いが、本来は雷属性と石化属性に対して耐性を持っていたのである。
 そして、雷属性と石化属性を持っている攻撃方法と言えば、
技名 対象 属性 (追加)効果 特性 タイプ 算出
石化くちばし 0 5 近1

石化
石化 - 3-4 物単(石化剣)
 言わずもがな、石化くちばしである。

 かつての邪神封印戦争ではミルザと四天王のエロール派、そして邪神一派が入り乱れて闘う混戦状態が予想された。
 その際、邪神をも恐れさせたというタイニィフェザーの石化くちばしは味方側にとっても脅威であった。
 つまり、混戦の中でタイニィフェザーの石化くちばしが味方に誤爆した場合、フレイムタイラントは火属性耐性を持っているため石化することは無いが、水竜とアディリスは石化くちばしに対する耐性が無いため下手したら石化してしまうのである。
 そのような最悪の事態を避けるために、水竜とアディリスは雷属性と石化属性耐性を持つ雨雲の腕輪を装備することで石化くちばしの誤爆による石化を未然に防いだのであろう。

(2)雨雲の腕輪×2の効果

 上述の分配では、雨雲の腕輪を水竜はもともと2つ、アディリスは1つ持っていたことになっている。
 つまり、アディリスは雨雲の腕輪を既に1つ持っていたのに、ゲーム開始時には水竜から1つ借りて2つ所持する状態になっている。
 一方で、水竜は雨雲の腕輪をアディリスに1つ貸し出しても、手元にはまだ1つ残っているにもかかわらず、アディリスから返してもらって2つ所持する状態に戻そうとしている。
 このように、上記の分配をもとにすると、水竜とアディリスは雨雲の腕輪を常に1つは持っているにもかかわらず、2つ所持した状態にしようとしているようなのである。
 これは一体何故であろうか?

 この疑問についての答えは四天王の中での水竜とアディリスの共通点に着目することで見えてくる。
 それは「自分の住処に生息しているモンスターを制御できているかどうか」ということである。
 タイニィフェザーが一言発すればスカーブ山内部に生息しているモンスター全てが「お前達とは戦わないようにボスに言われてるぞ。」状態になることから、タイニィフェザーはスカーブ山内部のモンスター全てを支配下に置いていることが分かる。
 また、トマエ火山の炎系モンスターは全てフレイムタイラントの支配下にあるし、トマエ火山に生息するそれ以外のモンスター達もフレイムタイラントとがその気になれば鎮圧させることができる。
 #フレイムタイラントとの交渉により、トマエ火山内部とジェルトンの炎系ではないモンスターは全ていなくなる。
 

 このようにタイニィフェザーとフレイムタイラントは自分の住処のモンスターを制御できているのであるが、一方で水竜とアディリスにはそのような気配が見られない。
 おそらく水竜とアディリスは自分の住処にサルーイン一派のモンスターがうじゃうじゃと徘徊していることを不快に思っていたことでしょう。
 #特に、アディリスの住んでいるフロアの一つ上階は虫だらけでさぞかし嫌な思いをしていたことでしょう。
 

 そんな状況に対しての特効薬が雨雲の腕輪×2であったのである。
 かつての大戦において水竜は雨雲の腕輪を2つ貰っていた。
 なぜ2つなのかと言うと、1つは石化くちばしの誤爆対策としての防御面での目的のためであり、もう1つは他の四天王に比べて攻撃方法に乏しい水竜の攻撃方法を増やすという攻撃面での目的のためであった。
 雨雲の腕輪単品でも大雨を降らすことができるのであるが、水竜が雨雲の腕輪を2つ装備したことで、想定外の効果が表れたのである。
 それは大洪水であった。
 雨雲の腕輪を同時に2つ装備していることで大雨を圧倒的に凌ぐ大量の水を呼び出すことができてしまったのである。
 雨雲の腕輪×2にはこのような効果があったので、水竜は自分の住処にモンスターが溢れてくると定期的に雨雲の腕輪×2を使用して大洪水を引き起こして害虫駆除を行っていたのである。

 そして、その噂を聞きつけたアディリスは自分の住処でも害虫駆除をしたいと考えたが、自分の手元には雨雲の腕輪は1つしか無く雨を降らせることしかできなかった。
 そこで、アディリスは水竜から雨雲の腕輪を1つ借りてくることで大洪水を起こして害虫駆除をしたわけである。
 #アディリスも水属性耐性があるから大洪水でも大丈夫。

 それから時が流れ、水竜の神殿内に再びモンスターが沸いてきたので、水竜は害虫駆除をしたくなってきた。
 ところがアディリスに雨雲の腕輪を1つ貸し出しているため、自分の手元には雨雲の腕輪が1つしかなく、大洪水を引き起こすことができない。
 それが「アディリスから雨雲の腕輪を返してもらってこい」というのがロマ1の物語における水竜からの依頼につながるわけである。
 

(3)その他についての理由

(i)火神防御輪×2

 フレイムタイラントは冷気が弱点であるから、本当は冷属性耐性防具が欲しかった。
 しかしながら、ロマ1の世界には冷属性耐性のある防具の存在は確認されていないのである。
 それ故に過去の大戦時もフレイムタイラントは自分の望む冷属性耐性防具を手に入れることができなかった。

 ではどうして火神防御輪なのか?
 火神防御輪の耐性は、
名称
96:火神防御輪 4 7 - - - - - - - - - - - - - -
 上記のように、「火属性と水属性に耐性あり」である。

 フレイムタイラントは、
HP
9825/9902 74 101 74 74 74 74 74 0 74 4 - - -
- - - × - - - - - - - - -
1:炎14(炎(全))
2:牙14(毒牙、麻痺牙)
火:99/99/0(なし)
 上記のように水属性が弱点ではないものの、耐性は無いので、火神防御輪を身につければ水属性耐性を得られるという利点はある。
 しかしながら、「冷気が苦手だから冷気を発するものを集める」というフレイムタイラントの慎重な性格から察すると、水属性耐性を得るという目的よりは、「自分の得意な炎を無効化できるものも集める」という理由から火神防御輪×2を貰ったのではないだろうか。

(ii)タイニィフェザーの依頼

 タイニィフェザーは冒険者にフレイムタイラントから火神防御輪を貰ってくるように依頼してくるが、タイニィフェザーはどうして火神防御輪を欲しているのか?
 おそらく、タイニィフェザーはサルーインの復活の兆しを感知しており、そのために再戦に備えて自身の強化(耐性強化)を計ったのである。
 その際にターゲットになったのはフレイムタイラントの火神防御輪である。
 かつての大戦でもフレイムタイラントは火神防御輪を貰ったものの、上述した通りコレクション目的であったため戦いの中で用いることは無かった。
 それ故に、「使わないなら私が有効活用してやるからよこせ!」というのがタイニィフェザーの理屈である。

(iii)疾風の靴×2

 疾風の靴は素早さを上昇させる効果を持つ防具である。
 無論、巨鳥であるタイニィフェザーが人間用の疾風の靴を履くことなどできないが、古代の英知で作られた疾風の靴をタイニィフェザーは身につけるだけで(履くのではなく、文字通り身につけるだけで)その効果を引き出せたのであろう。
 そして、水竜とアディリスが雨雲の腕輪を2つ同時に使うことで1つの場合を凌駕した効果を引き出したように、タイニィフェザーも疾風の靴を同時に2つ身につけることで1つの場合を凌駕した効果を引き出した。
 それは神速・・・タイニィフェザーの速さはまさに目にもとまらぬ領域に達したのだった。

 かつての大戦の際にミルザはアディリスに乗って戦った(大全集, 小林画伯のイラスト)。
 空中戦ならばアディリスではなくてタイニィフェザーに乗ればいいのに・・・と以前は思っていたのであるが、疾風の靴×2を身につけたタイニィフェザーは速過ぎて、とてもじゃないが乗り物としては使えなかったわけである。

 また、速過ぎるが故におそらくタイニィフェザーもその速さを制御しきれていなかったのであろう。
 それ故に、石化くちばしの誤爆も多発しがちだったため、水竜とアディリスが雨雲の腕輪で石化予防をすることは必須だったのである。
 

(iv)アディリスの依頼

 アディリスは冒険者にタイニィフェザーから疾風の靴を借りてくるように依頼してくるが、アディリスはどうして疾風の靴を欲しているのか?
 おそらく、アディリスもサルーインの復活の兆しを感知していた。
 それ故に、タイニィフェザーと同様に再戦に備えて自信の強化(素早さ強化)を計ったとも考えられるが、アディリスとしては別の意図があったと考えられる。
 それは「タイニィフェザーを遅くする」ことである。
 かつての大戦の際に疾風の靴×2を身につけたタイニィフェザーは制御できないほどの神速で飛び回り、誤爆も多発していた。
 それ故に、「次の戦いではそんなに速くなくていいから、疾風の靴は1つに抑えておけよ!」というのがアディリスの要望である。

2.「涙を拭いて」の真相

 1.においてかつての大戦時に四天王がエロール側から貰ったアイテムの配分とその理由について述べたのであるが、まだ一つ謎が残っている。
 それはアディリスが貰ったエロールの独演会チケットである。
 言い換えれば、これはロマ1の物語においても理由が不明なままである「どうしてアディリスはエロールに『涙を拭いて』を演奏してもらっているのか?」という謎の真相に直結する。
 

 ロマ1研究の歴史において「涙を拭いて」イベントの発生条件を解明されたOvertureの降雪氏は、「意外と知られていないんじゃないですか。フレイムタイラントを殺してからアディリスに会うとこの曲が聴けるというのは。」という大事典に記載された対談をもとに、「『涙を拭いて』は本来はフレイムタイラントを殺害後限定のイベントであった」という立場のもとで、
 >「悠久の時を共に生きた仲間の死に心痛めたアディリスを、ハオラーンが静かに慰める」
 >それこそが「涙を拭いて」であると私は思いたいところです。
 というように、「涙を拭いて」は「フレイムタイラントの死を悼むための演奏である」というように推察されています。

 しかしながら、虎の巣のロマ1論の立場としては「ゲーム内での事実」を一番に重視します。
 従って、ゲーム内において「涙を拭いて」の発生条件に全く関係の無いフレイムタイラントの生死を「涙を拭いて」の演奏理由として納得することはできかねます。
 つまり、フレイムタイラントが生きていてもエロール(ハオラーン)は「涙を拭いて」を演奏するわけですから、「フレイムタイラントの死を悼んでいるわけではない」と判断せざるを得ないのです。
 そこで、本章ではゲーム内の事実をもとにして、どうしてアディリスはエロールに「涙を拭いて」を演奏してもらっていたのか?の真相について言及する。

(1)GBサガにおける「涙を拭いて」

 そもそも「涙を拭いて」とは何なのかと言うと、GBサガ1、2において特定の登場人物の死の際に流れるBGMである。
 #後作のロマ2では壊れて動かなくなったコッペリアに話しかけた際に流れる。
 従って、「涙を拭いて」が流れる場面は誰かの「死」を伴う場面であると考えられるのであるが、ではアディリスに関わる「死」とは何なのであろうか?

(2)アディリスの異常性

 ゲーム内で登場する四天王のアディリスは四天王の中でも特異な存在である。
 具体的には以下のようなイレギュラーな特徴を持っている。
 ・四天王の中で唯一専用グラフィックではない(ドラゴンS系と同じ)。
 ・四天王の中で唯一エロールに「涙を拭いて」を演奏してもらえる。
 ・四天王の中で唯一司る属性と耐性属性が一致していない(「土」属性を司るが、土属性耐性は無く、水属性耐性がある)。
 ・四天王の中で唯一状態異常耐性も充実している(不動、即死耐性だけでなく、幻、毒、麻痺耐性も持っている)。
 ・四天王の中で唯一超再生能力を持っていて不死身である(討伐されても階層切り替えで復活する)。
■アディリス
HP
10817/10902 74 111 74 74 74 74 74 0 74 4 - × -
- - - - - - - - - -
1:毒霧14(毒霧(憑依))
2:牙14(毒牙、麻痺牙)
:99/99/0(なし)

 四天王のステータスの基本値は74でどれも同じであり、HPと腕力の違いは種族による違いとして容認できる範囲である。
 しかしながら、「専用グラフィックではない」、「エロールに演奏をしてもらえる」という点を除いたとしても、他の3点については明らかに他の四天王とは異質な特徴である。
 これらの事実からアディリスは四天王の中でも特殊な存在であるということが言える。

 そこで、(3)ではこれらの事実をもとにして四天王の過去のエピソードについて推察する。

(3)四天王の過去

 「サルーインはモンスターの父だ。しかし、奴にとって俺たちは道具でしかない。俺は1000年前の戦いの時、水竜、タイニィフェザー、アディリスたちとエロールについた。」(ゲーム内の台詞)とフレイムタイラントが語るように、四天王はサルーインに造られたモンスターであるが、サルーインに不信感を抱いたため裏切った。
 不信感を抱かせる原因となった「奴にとって俺たちは道具でしかない。」と四天王に確信させるだけの出来事があったはずであるが、一体何があったのか?
 

 時は邪神封印戦争の頃、サルーインに造られた四天王はモンスター軍を率いて各地で暴れていた。
 そんな中、エロールが10個のデステニィストーンを作って結界を作り、サルーインの封印を目論む。
 負けず嫌いのサルーインはエロールに対抗して自分版のデステニィストーンを作り、巨大蛙モンスターに埋め込んでジュエルビーストを造り出した。
 その際、その素材となった巨大蛙モンスターは、水竜が「だがデステニィストーンのあまりにも強い力のために奴は狂ってしまった。」(ゲーム内の台詞)と語ることから察すると、おそらく四天王とは旧知のモンスターであったのだろう。
 #「奴は狂ってしまった」ということは狂う前を知っているということだから。
 

 サルーインはジュエルビーストを造ったものの、ジュエルビーストは暴走状態になってしまったため、サルーインにとっては失敗作であった。
 そこでサルーインはジュエルビーストを僻地に破棄し、別の手段でモンスターの強化を図ることにした。
 その手段とは・・・モンスターの合成である。
 そして、その標的(実験台)としてサルーインの目にとまったのがアディリスであった。

 ジュエルビースト造りに失敗したサルーインが次の実験材料として目を付けたのは自分の配下のドラゴンS系だった。
 サルーインは考えた。
 「こいつ四天王の一角だけど、いまいち面白くないんだよなー。」
 「こいつ、いつも相方と一緒に行動しているな・・・待てよ・・・あの2匹のドラゴン、合体させて双頭のドラゴンにしたら面白いんじゃね?」
 邪悪な興味が2匹のドラゴンに向けられた。」

 2匹のドラゴンの1匹は土属性で、もう1匹は水属性。
 この土属性のドラゴンがアディリスで、2匹はおそらくつがいであった。
 2匹1組で幸せに暴れていたのであるが、2匹の眼前に突如邪神サルーインが現れた。
 そして、サルーインは「お前たちは仲がいいなー。だから、お前達を永遠に一つにしてやろう!」と語ると、アディリスらの返答を待つことなく、合成を決行した。
 その結果・・・2匹は合成されたのであるが・・・サルーインの意図した双頭のドラゴンにはならず、見た目は合成前のドラゴンSと全く変わらなかったのである。
 「・・・失敗か・・・」
 サルーインはそう呟くと、失敗作の前から姿を消した。

 その場に残された合成されて1匹になったドラゴンは意識を取り戻した。
 その意識は・・・アディリスだった。
 サルーインの合成実験によって、もう1匹の相方の力はアディリスに取り込まれたが、相方の意識はもはやどこにもなかった。
 この合成実験により、アディリスは土属性耐性を失ったものの、相方の水属性耐性を受け継ぐとともに、状態異常耐性や超再生による不死身の力を得たわけである。
 アディリスは自身に流れる水の力を感じることで、相方が消滅してしまったことに気付き、ただただ悲しみの咆哮をあげるのであった。

 サルーインによって旧知の巨大蛙モンスターは狂わされ、アディリスら2匹のドラゴンは合成させられてしまった。
 このようなサルーインの改造実験が「自分たちはサルーインの道具でしかない」と四天王に不信感を抱かせたわけである。
 「次は自分が実験台にされてしまうかもしれない。」
 そんな疑念を四天王が抱えていたところに、アディリスが「相方の仇をとる!」とサルーインに反旗を翻した。
 こうして、これに同調した他の四天王とともに、四天王はエロール側についたのであった。
 

(4)名前の意味

 (1)では挙げなかったが、アディリスが他の四天王と異なっている点がもう一つある。
 それは、
 ・四天王の中で唯一名前に込められた意味が不明である。
 ということである。
 「水竜」ならば「水の竜」、「タイニィフェザー(Tiny Feather)」は「小さな羽」、「フレイムタイラント(Flame Tyrant)」ならば「炎の暴君」というように、名前が体を表すような側面があるが、「アディリス」だけはそうではないのである。

 しかしながら、アディリスに(3)で述べたような過去があったとしたらどうであろうか?
 アディリスは「Adilis」と表記する。
 おそらく2匹のドラゴンはアディリー(Adily)と呼ばれる種族のドラゴンであったが、1匹に合成されてしまったため、「合成されても2匹である」という意味を込めて複数形の「Adilies」・・・アディリースと名乗ることにした。
 そして、アディリースが縮まってアディリスとなったのである。

 そんな都合よく、名前が変わるのか?と思うかもしれないが、よい例がタイニィフェザーである。
 先に四天王の名前の意味を列記した際に、タイニィフェザーが「小さな羽」という意味を持つ事については違和感を持った方も多いことでしょう。
 それもそのはずで、大事典にはタイニィフェザーについて「名前の通りに、小規模ながら天候を変える力がある」という説明があることから察すると、タイニィフェザーはもともと「タイニィウェザー」(Tiny Weather)という名前であったが、訛って?「タイニィフェザー」になっているようなのである。
 このような名前の変化があるのだから、「アディリース」が「アディリス」になったという話もありえないとは言い切れないでしょう。
 

 以上のように、「アディリス」という名前にも他の四天王と同様に体を表す側面、即ち「アディリー達(2匹のアディリー)」という意味が込められているのではないでしょうか。
 #なお、「アディリーって何?」という質問は「タラールって何?」とか「アムトって何?」と尋ねているようなものでナンセンスである。

(5)「涙を拭いて」の真相

 (4)で述べたような経緯で四天王はエロール側についた。
 そして、共闘についての信義の現れとして四天王はエロール側のアイテムを貰うことになったのであるが、3匹の四天王がアイテムを2つずつ貰ったのに対して、アディリスは石化くちばし対策の雨雲の腕輪を1つだけもらことにした。
 その代わりとして、消滅した相方を追悼してもらう約束をエロールをしたのである。
 従って、アディリスがエロールに「涙を拭いて」を演奏してもらっている理由は「1000年前にサルーインによって消滅させられた相方を偲ぶため」ということになる。
 

 この理由をもとにさらに推察を進める。
 「涙を拭いて」イベントは、
 ・戦闘回数576回の時間経過でエロール(ハオラーン)がアディリスの傍らに出現し、592回の時間経過で姿を消す。
 ・アディリスを討伐していなければ、エロールが「涙を拭いて」を演奏する。
 というイベントである。

 戦闘回数については、その時間に演奏をしてもらう約束になっていたということで何も問題ないが、「アディリスを討伐していない」という条件、即ち、アディリスを討伐すると演奏してもらえなくなるのは何故だろうか?
 この疑問も(4)で述べた過去のエピソードを前提とすれば説明することができる。

 アディリスは消滅した相方を偲ぶためにエロールが訪れるのを待っていた。
 すると、冒険者が訪れて戦いを挑んできた。
 1000年もの間、誰にも敗北することのなかったアディリスであるが・・・冒険者は強かった。
 まさかの敗北を喫して、合成獣となって初めて絶命したのである。
 ・・・その時、奇跡が起こった・・・
 臨死体験でアディリスは1000年ぶりに消滅した相方と再会することができたのである。
 そこでどのような言葉が交わされたのかは分からないが、超再生の力により復活したアディリスは幸せそうな顔をしていた。
 

 そんなアディリスのもとにエロールが訪れて演奏を始めようとすると、アディリスはそれを制した。
 アディリスは呟いた。
 「・・・もういい・・・再会できたのだから・・・」
 このような理由により、アディリスを討伐した場合にはエロールの演奏を聴くことができないのでしょう。

 ゲーム内においてアディリスを討伐してから再度話しかけると、もう依頼をしてくることはなく、「よく来たな。帰りは裏の近道を使っていいぞ!」(ゲーム内の台詞)を言うだけである。
 この台詞により実際に裏道を通れるようになるし、加えて「スカーブ山」の地名も記載される。
 何も知らなければ「討伐されたことでアディリスは服従したのか?」と思うかもしれません。
 しかしながら、実際はそうではなく、「1000年ぶりに相方に再会させてくれた冒険者に対するアディリスからの感謝の気持ち」なのではないでしょうか。
 

おわりに:

 本稿では、四天王の過去と「涙を拭いて」の理由について言及した。
 「巨獣達の宴」においてアディリスは四天王で最強の力を持っていることを示したが、その強さの理由は今回言及したアディリスの悲しい過去にあるのではないでしょうか。
 つまり、合成獣だから強いという肉体面での強さはもちろんのこと、それだけでなく、相方の死(消滅)も背負っているから精神面でも強いのである。

 四天王アディリスと言えば、専用グラフィックの無い不遇なイメージが強いかもしれませんが、本稿によってアディリスに対する見方が変われば幸いである。

四天王論補論

(2025年02月22日発表)

 
はじめに
 1.武具の大きさ
  (1)巨人の里の販売品の大きさ
  (2)四天王が人間サイズの武具を貰った理由
  (3)オブシダンソードの大きさ
 2.旧水竜と現水竜
 3.アディリスへの生贄文化
 4.タイニィフェザーの「風」要素
  (1)失われた風の法力
  (2)石化と風化
 5.フレイムタイラントとジュエルビーストの受難
  (1)炎のモンスター分類
  (2)邪神の改造実験
   (i)サルーインの創ったデステニィストーン
   (ii)第一の犠牲者:フレイムタイラント
    (a)フレイムタイラント爆散
    (b)まがい物のデステニィストーン
   (iii)第二の犠牲者:ジュエルビースト
  (3)余談:ジュエルビーストの召喚具?

はじめに:

 本稿は四天王に関わるいくつかの話題について、四天王論の補足としてまとめたものである。
 言わば、四天王に関わる短編ロマ1論の詰め合わせである。

1.武具の大きさ

(1)巨人の里の販売品の大きさ

 aruruさんから以下の質問をいただいた。
 投稿者:aruru 投稿日:2024/09/30(Mon) 12:11
 ふと思ったのですが、巨人族の村で販売しているということは巨人は巨人のために販売しているのが普通だと考えますが、なぜ人間が装備できるのか。メタ的な内容かもしれませんが、巨人族の村で販売しているのに人間で扱えるサイズになっているから巨人族はツンデレなのでは?と思いました。

 この疑問に対する本稿の見解としては、「巨人の里の武具は巨人サイズのものもあれば人間サイズのものもあって、主人公たちは人間サイズのものを購入している」ということなのでしょう。
 と言うのは、おそらく古代神時代には巨人と旧人類が共生していたので、巨人たちは巨人用だけではなく旧人類用にも装備を作っていたと思われるのである。
 そして、その在庫が今も巨人の里にはたっぷりあるので、それを譲ってもらっているというわけである。
 

(2)四天王が人間サイズの武具を貰った理由

 四天王論において邪神封印戦争時のエロールから四天王への報酬について述べたが、(1)を勘案すると「巨人サイズの巨人の里グッズもあるならば巨人と同サイズの四天王たちは巨人サイズのものを貰ってもいいはずなのに、どうして人間サイズのものを貰ったのか?」という新たな疑問が生じる。
 この疑問については、そもそも四天王は人間型ではないので巨人サイズであっても巨人の里グッズを着用することはできなかったけれど(シルベンやブラウが装備の着脱をできないのと同様)、エロールが「神の力」でそれらの恩恵を受けることができるようにしてくれると言うので、それならば「着用できずにかさばる巨人サイズよりも所持していてもかさばらないコンパクトな人間サイズのほうがいい!」ということで人間サイズを貰ったわけである。

(3)オブシダンソードの大きさ

 武具の大きさに関する疑問に関わって、オブシダンソードについても言及しておく。
 オブシダンソードは主人公らが入手した際には人間が扱えるサイズであるが、オブシダン譲渡でサルーインが装備した際には明らかに大きくなっている。
 #人間の身長がおよそ1.7mに対して、サルーインの身長は10m超えである。(モンスター論を参照)
 
 これはおそらく、ミニオンから献上されたオブシダンソードをサルーインが「神の力」で自分サイズに変化させたのでしょう。

2.旧水竜と現水竜

 水竜、アディリス、タイニィフェザー、フレイムタイラント。
 この4匹は「四天王」と総称されるモンスターであるが、正直なところ「水竜」という名前には違和感があると思っている。
 と言うのは、水竜についてはクジャル族が信仰の対象として「水竜様」と呼んでいるだけで、本当は水竜にも本名(他の四天王のようなカタカナ言葉の名前)が別にあるのではない?と思っているのである。

 そこで、水竜の本名は何なのか?と考えてみると、水竜の姿はFF3以降の登場で既にお馴染みになっていたリバイアサンによく似ているので、何も知らずに水竜の姿だけを見たら「リバイアサンだ!」と思う人もいるであろう。
   
 #出典:(中)ファイナルファンタジー3,スクウェア.(右)ファイナルファンタジー5,スクウェア.

 しかしながら、ロマ1には水竜とは別にリバイアサンが登場する。
 それも、FFシリーズでお馴染みの海蛇型ではなく、「一本角の生えた魚」という従来のイメージを覆すインパクトのある姿である。
  

 では、皆さんは以下の説明文を読んでロマ1のどのモンスターを想起するでしょうか?
 >創造神マルダーによって造り上げられた、太古の昔から存在しているモンスター。
 >いわゆる「荒ぶる神」で、人間の信仰の対象となっているが、恐れられてもいるのだ。
 >それというのも、定期的に生贄を捧げないと、船を次々と沈没させてしまうからである。

 「人間の信仰の対象になっていて、生贄を捧げる必要がある」ということなので水竜を想起する人も多いと思うが、実は上記は大事典におけるリバイアサンの説明なのである。
 このようにリバイアサンの説明は「クジャル族に信仰されていて、生贄の儀式が行われてきた」水竜と重なるのである。
 それ故に、水竜には次のようなエピソードがあったのではないかと推察する。
 古代神時代の頃からマルディアスの海(特に現クジャラート近海)ではリバイアサンが暴れまわっていた。
 新しい神々の時代になって現生人類の西方系人種(クジャル族)の間では近海で暴れるリバイアサンを「荒ぶる神」として信仰の対象とし、畏敬の念を込めて「水竜様」と呼んで、生贄を捧げて怒りを鎮めていた。

 その後、3邪神が活動を開始し、サルーインによって現水竜が造られた。
 現水竜はマラル湖を自分の縄張りとして暴れていたが、その姿を見たクジャル族は「水竜様がマラル湖にも出没するようになった。」と勘違いしたのである。
 つまり、リバイアサンも現水竜も水中にいて全貌が分からなかったため、この頃にはリバイアサンと現水竜が混同されて、どちらも「水竜様」と呼ばれていたのである。
 

 さらにその後、リバイアサンはエロールに捕獲されて最終試練で飼育されることになり、四天王はサルーインを裏切ってエロールと結託する。
 その際に、現水竜は他の四天王たちに言ったわけである。
 「何かよく分からないけれど人間どもが私のことを『水竜様』って呼んでいる。気に入っているから、みんなも私のことをこれからは『水竜』と呼んでくれ!」と。
 こうして「サルーインはモンスターの父だ。しかし、奴にとって俺たちは道具でしかない。俺は1000年前の戦いのとき、水竜、タイニィフェザー、アディリスたちとエロールについた。」(ゲーム内のFタイラントの台詞)というように、仲間内でも「水竜」と呼ばれるようになったのであった。
 #それ以前はおそらく仲間内では本名で呼ばれていた。
 このように、「水竜」という名前はもともとはリバイアサンに対する敬称であったが、それが混同されたことによって現水竜にも使われるようになったわけである。
 そして、その混同によって名前とともに現水竜に引き継がれてしまったのが「水竜様への生贄文化」である。
 現水竜はそもそも生贄を欲していないので、生贄が無いからといって暴れたりはしない。
 実際、水竜祭りが長く途絶えているにもかかわらず、それを理由に現水竜が暴れたという事実は無い。
 故に、おそらく現水竜にとっての「生贄」はあくまで「人間からの貢ぎ物」であり、積極的に食料として欲しているわけではなく、「いただけるのならばいただきますよ!」くらいの感覚なのだと思われる。

3.アディリスへの生贄文化

 Nayumaさんから以下のコメントをいただいた。
 投稿者:Nayuma 投稿日:2024/02/17(Sat) 17:57
 すっごい今さらの話だったら申し訳ないんですけど、グレートピットのアンデッドの多さって、昔は死体を投げ捨ててたのかなー、もしくは今もゴールドマインで事故死した人とか・・・とか、敵配置の物語を考えるんですよね。

 グレートピットにはどうしてアンデッドが多いのか?
 大事典の「水竜は信仰の対象になっているが、他の四天王は崇拝の対象にはなっていない。神話の解釈が歪められ、土の四天王アディリスなどは、むしろ恐怖の対象になっているのが現状である。」という記述から察すると、もしかしたらバファルには荒ぶる巨竜への人身御供(生贄)文化があったのかもしれません。
 つまり、死体遺棄をしていたのではなく、生きた人間をダイレクトに突き落とす・・・もしくは動けなくして穴底に放置とか。
 仮にそういう文化があったのならば、そのキッカケとなった出来事があったはず・・・ということで、四天王論で述べたアディリスの過去を前提としてバファルの生贄文化の経緯について以下のように推察してみた。
 
 かつてベイル高原付近で厄災が起こった。
 ある日を境にグレートピットから恐ろしい雄たけびが轟くようになり、それに伴って周辺の住民や旅人が病に倒れ、ある者はそのまま命を落とし、ある者は発狂して暴れまわるようになってしまった。
 バファルの人々は、この厄災がベイル高原に棲む巨竜の怒りによって引き起こされたものであると信じて、怒りを鎮めるためにグレートピットに生贄を捧げることにした。
 それにより巨竜の怒りは治まったようでベイル高原付近は平穏を取り戻したものの、それは一時的なもので、何年(何十年)かのスパンで再発してしまうために、定期的に生贄を捧げる文化が根付いたのであった。
 さて、事の真相としては、邪神封印戦争の際にサルーインの改造実験によって相方を失ったアディリスの悲しみは長い年月を経ても癒えることは無く(四天王論を参照)、沈痛な気持ちはアディリスの中でドンドン膨れ上がっていった。
 そして、その悲しみを堪えきれなくなったときに、その感情のままに泣き叫んだ。
 その際に、大量の毒霧(毒)と毒霧(憑依)がドバーっと吐き出されて、それがグレートピットから溢れてベイル高原周辺を覆ってしまったのである。
 
 悲しみのままに泣き叫んでいたアディリスであったが、グレートピット入り口の異変(生贄投下)を察知して、「やっべ!またやっちまったよ!」と我に返り、自分を落ち着かせることで一時は治まる。
 しかしながら、年月が経つことで再び悲しみを我慢できなくなって爆発してしまうために、厄災発生→生贄投下→厄災発生→生贄投下→・・・が繰り返されてきたのであった。

4.タイニィフェザーの「風」要素

(1)失われた風の法力

 四天王は4元素を司っていて(基礎知識編)、タイニィフェザーは「風の属性を極めた四天王の一角」(大事典)らしいのであるが、タイニィフェザーの「風」要素は謎である。
 確かに「疾風の靴」と「風の囁き」に関わりがあり、「風属性耐性持ち」なので「風」要素が無いわけではないのだけれど・・・風の法力を持っているわけではないし、タイニィフェザーの一番の特徴と言えば必殺の「石化くちばし」であり、それは風属性と言うよりも対の土属性のイメージが強いのである。
 #石化効果のある術法「ストーンスタチュー」は土属性の最上位術法である。
 
 
 しかしながら、風属性を極めた先が「石化くちばし」・・・つまり、風属性を突き詰めたら土属性に辿り着いたとすると、そういう話はロマ1の「術法を消す方法」のシステムを想起させられるのである。
 即ち、
 術系統は火/水、土/風、光/闇、邪/気、魔/幻の順で対になっていて、各系統の組の前者を前術、後者を後術とすると、
 ・前術の現在法力、最大法力、術法習得値に0でないものがあるならば前術の現在法力、最大法力、術法習得値がセーブされる。
 ・前術の現在法力、最大法力、術法習得値が全て0ならば後術の現在法力、最大法力、術法習得値がセーブされる。
 という仕組みである。

 この仕組みに基づけば、「タイニィフェザーはもともとは風の法力を持っていたが風術を極めすぎてしまって風の法力がオーバーフローして土術の領域にまで入ってしまった。その結果、何やかんや(セーブ&ロード)の前術(土術)判定に引っかかってしまって、風の法力を完全に失ってしまって現在に至っている。」というように説明することができるのである。
 #水術と風術は「術法を消す方法」によって忘れることができるので、水竜が水の法力を持っていないことについても、この仕組みで説明できるかもしれない。水竜に「火」属性要素があればだけど。

 なお、最初に「石化くちばし」は土属性のイメージがすると述べたけれど、実際には火、雷、石化属性持ちなので、「雷属性」という風の属性の要素を持っている。
 故に、おそらくタイニィフェザーは石化くちばしを研鑽で鍛えまくっていたら通常では設定されていない「風術成長促進」効果が発動するようになってしまい、結果として風の法力がオーバーフローしてしまって風の法力を失ってしまったのであろう。

(2)石化と風化

 タイニィフェザーと言えば「石化くちばし」であるが、「石化」は土属性のイメージなので、風属性のイメージとして「風化」の可能性を考えてみた。
 風化とは「地表の岩石が、日射・空気・水・生物などの作用で、しだいに破壊されること」である。

 タイニィフェザーによる風化・・・もしかしたらタイニィフェザーの真骨頂は石化くちばしによる石化の先にあるのかもしれない。
 つまり、タイニィフェザーは相手を石化して終わりではなく、その後に石化した相手に対して羽ばたきまくって雨風や砂粒等を叩きつけて猛烈に風化を加速させて楽しむという趣向があるのではないだろうか。
 #石化した相手をそのまま叩き壊すのはタイニィフェザーの流儀としては面白くないのであろう。
 
 そうだとすると、天候が崩れているときにタイニィフェザーが石化した相手を風化させようと必死で羽ばたいている姿を見た者が「巨鳥が羽ばたいて天候を悪化させた!」と勘違いして、その巨鳥を「タイニィウェザー(小さな天候)」と呼ぶようになり、それが訛って現在のタイニィフェザーという名前になったのかもしれない。

5.フレイムタイラントとジュエルビーストの受難

(1)炎のモンスター分類

 ロマ1には炎絡みのモンスターが複数登場するが、それらを本稿では以下の4タイプに分類してみた。
分類 該当するモンスター
体内に炎を宿している ケルベロス、キメラ、ツイーター、レッドドラゴン(S&L)、ゴールドドラゴン(S&L)
身体に炎の属性を纏っている 火のファンダム
身体から炎を放出している フレイムドッグ、フレイムイーター、イフリート、火の精霊
骨が燃えている フレイムタイラント
 #火のファンダムは「身体を火の属性の粘液で覆っているモンスター」(大事典)と説明されている。
 #「身体が炎でできている」という分類の可能性も考えたが、仮にそうならば物理攻撃が効かないと思われるので、そういったモンスターは実体化して「身体から炎を放出している」という分類に属すと判断した。
     

 上記の分類で注目してほしいのが四天王の一角フレイムタイラントである。
 フレイムタイラントと「身体から炎を放出している」モンスターたちはどちらも自身が燃えているという点については同じであるが、「身体から炎を放出している」モンスターたちは自身の身体が燃え尽きずに維持されているのに対して、フレイムタイラントは自身の身体が燃え尽きて骨になってしまっているのである。
 つまり、燃えているモンスターの中でもフレイムラントだけが異質なのである。
 どうしてフレイムタイラントだけ身体が燃え尽きてしまっているのだろうか?
 この疑問についての本稿の見解を以下で述べる。

(2)邪神の改造実験

(i)サルーインの創ったデステニィストーン

 水竜は「実はサルーインもデステニィストーンを創ったのだ。そして、それを一匹のモンスターの体に埋め込んだ。奴の名はジュエルビースト!ありとあらゆる攻撃に耐える恐るべきモンスターだ!だが、デステニィストーンのあまりにも強い力のために奴は狂ってしまった。」(ゲーム内の台詞)と語っている。
 また、サファイアについて「サルーインの作り出したデステニィストーン。何の力を持つのかは定かではない。現在はジュエルビーストに埋め込まれている。」(大事典)と説明されている。
 これらの情報からすると、ジュエルビーストに埋め込まれているデステニィストーンはサファイア一つだけだと思うかもしれない。
 しかし、果たして本当にそうなのだろうか?

 以下はジュエルビーストのステータスである。
■BE:ジュエルビースト
HP
8389/8471 68 88 68 68 68 68 68 0 68 4 - - -
- - - -
1:ダブルアタック2
2:舌14(巻きつく、毒舌)
3:体当たり14
術法:なし

 そして、以下は10個のデステニィストーンの耐性である。
名称
E0:ルビー 0 128 0 - - - - - - - - - - - - -
E1:アクアマリン 0 128 0 - - - - - - - - - - - - - -
E2:トパーズ 0 128 0 - - - - - - - - - - - - - -
E3:オパール 1 128 0 - - - - - - - - - - - - - -
E4:ダイヤモンド 1 128 0 - - - - - - - - - - - - - -
E5:ブラックダイア 0 128 0 - - - - - - - - - - - - - -
E6:ムーンストーン 1 144 0 - - - - - - - - - - - - - -
E7:オブシダン 0 254 0 - - - - - - - - -
E8:エメラルド 0 128 0 - - - - - - - - - - - - - - -
E9:アメジスト 1 144 0 - - - - - - - - - - - - - -
 #「避」は盾欄に装備した場合の回避力なので注意。

 双方を比較して見逃せない点は、ジュエルビーストの持つ攻撃属性耐性が完璧すぎるということである。
 つまり、世界の管理者であるエロールが創ったデステニィストーンの(経年劣化していないときの)耐性効果を鑑みると、サルーインが創ったサファイア一つだけで完全な攻撃属性耐性を持てたとは到底考えられないのである。
 それ故に、実際のところは、サルーインはエロールへの対抗心からエロールを真似して10種のサルーイン版デステニィストーンを創り、それらをジュエルビーストに順々に埋め込んでいった結果、丁度サファイアを埋め込んだ時にジュエルビースト内でのパワーバランスが崩れてジュエルビーストが暴走してしまったのではないだろうか。

 と言うことで、Wikipedia宝石の一覧を参考にして、以下のようにサルーイン版の10種のデステニィストーンを見繕ってみた。
 なお、デステニィストーンは属性エネルギーを凝縮させると宝石になるのではなく、例えば「火のルビーは、凝縮した火の力を炎のように赤いルビーに封じ込めた宝石である。」(大事典)と説明されているように、宝石に属性エネルギーを込めることで創られている。
エロール版 サルーイン版
属性 宝石名 種類/色 宝石名 種類/色
ルビー コランダム/赤 サンストーン 長石/赤
アクアマリン ベリル/青 サファイア コランダム/青
トパーズ 珪酸塩鉱物/多様 ガーネット ガーネット/多様
オパール オパール/虹 トルマリン 電気石/黒
ダイヤモンド 元素鉱物/多様 パール パール/多様
ブラックダイア 元素鉱物/黒 ブラックパール パール/黒
オブシダン 流紋岩/黒 オニキス 石英/白黒
ムーンストーン 長石/白 キャッツアイ クリソベリル/黄
エメラルド ベリル/緑 ラピスラズリ 珪酸塩鉱物/青
アメジスト 石英/紫 ターコイズ 燐酸塩鉱物/緑

 #補足:気持ちとしてはエロール版に対抗・対応するような気持ち、かつゲームでよく目にする宝石から選抜した。
 ・サンストーンはその名前の通りムーンストーンの対になる宝石らしい。
 ・キャッツアイ、トルマリンはロマ2での扱いを考慮するとしょぼく見えるかもしれないが、それは見なかったことにする。
 ・ジュエルビーストに埋め込まれている複数の赤と黄の宝石は複数のサンストーン(赤)とキャッツアイ(黄)が散りばめられているのかもしれない。そう言われてみれば黄色の宝石は「猫の目」っぽく見えるように思う。
 ・当初はパールとブラックパールを入れるつもりはなかったけれど、対応という観点から(やむなく)位置づけた。しかしながら、きっと巨獣クラスのすっごい貝獣から生成されたのだと思えば・・・ロマンシングであろう。
 ・余談であるが、「アンバー」や「ジルコン」も宝石の一覧に挙がっている。それならば、アイスソードの「アイス」も氷というそのままの意味ではなく、マルディアス固有の「限りなく氷に近い分子構造を持つ」(基礎知識編)宝石の名前を意味しているのかもしれない。
 

(ii)第一の犠牲者:フレイムタイラント

(a)フレイムタイラント爆散

 マルディアスに生息していた恐竜について、大事典には「リガウ島の草原には、古代神の時代より生き続けている恐竜が住んでいる。マルディアスにいたとされる恐竜の大半は、サルーイン封印戦争に巻き込まれて絶滅してしまったが、このトリケラトプスだけはエリスの加護で生きながらえる事ができたのだ。」と説明されている。
 このようにマルディアスには邪神封印戦争の頃までは様々な恐竜が生息していたということから察すると、おそらくフレイムタイラントはもともともはティラノサウルスタイプの恐竜がサルーインの邪気に侵されて狂暴化したモンスターだったのだと思われる。
 故に、当時はまだ燃えておらず、生身の身体であったが、燃えさかる戦場を動じることなく暴れまわる姿から「炎の暴君」と称され、邪神四天王の一角に数えられていたのである。
 
 #出典:ファイナルファンタジー6,スクウェア.

 そんなある日のことだった。
 サルーインはエロールの創ったデステニィストーンに興味を持って、自分でも創ってみることにしたのである。
 そして、サルーインが最初に創ったのは燃え盛る炎の力を凝縮して宝石に詰め込んだ「火」のサンストーンであった。
 「ふふふ・・・ははははは!!エロールにできることは私にもできるのだ!!!」
 はち切れんばかりの炎の力を放出するサンストーンを眺めながらサルーインは考えた。
 「この炎の力・・・これを炎の暴君に与えたら、名前通りの炎の力を与えられるかも・・・。」
 思い立ったら即実行、生身時代のフレイムタイラントにサンストーンを投与することが決定した。

 「えぇ・・・それ飲まないといけないんですか!?」
 見るからに危険なサンストーンに怖いもの知らずのフレイムタイラントもさすがに一抹の不安がよぎったが、相手はモンスターの父サルーイン・・・逆らうことはできず、しぶしぶ差し出されたサンストーンを飲み込むことにした。
 「熱!・・・ゴクリ・・・ん、ん、んんん!!!・・・ウボァー!!!」
 フレイムタイラントは断末魔とともに身体が内部から爆散した。
 そして、残ったのは燃えさかる骨だけだった。
 「あっれー?失敗か、難しいな。次はもうちょっと抑えてみるかな。」
 一連の惨事を傍観していた四天王の残り3匹はドン引きしたのであった。
 
 #参考・出典:ファイナルファンタジー6,スクウェア.

(b)まがい物のデステニィストーン

 そもそもエロールが創ったデステニィストーンとはどういうものだったのかと言うと、運命石論3で述べたようにサルーインを封印するために「マルディアスの世界そのものの力を利用して結界を張る」ことを意図して創られたものであった。
 つまり、凝縮された属性エネルギーをただ宝石に詰め込んだだけではなく、世界(プログラム)に干渉するような加工もしてあったのである。
 #世界(プログラム)に干渉するように加工してあったから、結果として運命干渉効果という意図せぬバグも発生してしまった。

 一方で、サルーインは世界に干渉するようなことを意図して自分版のデステニィストーンを創ったわけではないので、当然世界に干渉するような加工などしていなかった。
 #そもそも、サルーインは世界の管理者ではないのでそういう加工をすることはできない。
 つまり、サルーインが最初に創ったデステニィストーンである「火」のサンストーンとは、ただ膨大な炎のエネルギーを凝縮させただけの塊・・・言い換えれば、ただの爆弾だったために、フレイムタイラントに取り込まれた際に暴発してしまったのである。
 しかしながら、フレイムタイラントはサンストーンによって爆散したものの、何やかんやの奇跡的な力で意識は燃える骨に留まっており、結果としてサルーインの当初の目論み通り、名前通りの「炎の暴君」に変貌したのであった。
 #奇跡的な力・・・おそらくサルーインが炎のエネルギーを一ヵ所に留めようとした力が爆発後にも残っていて、その留まる力に燃え盛る炎だけでなくフレイムタイラントの意識も引っかかったために事件後も活動できているのだと思われる。
 

(iii)第二の犠牲者:ジュエルビースト

 デスやシェリルを封殺した二つの月の光を浴びながらもへこたれずに暴れ続けていたサルーインである。
 フレイムタイラントを爆散させてしまったくらいの失敗ではへこたれることなく再度マイデステニィストーン創りに邁進した。
 そして、今回は前回の失敗を反省し、エネルギーを込め過ぎないように気を付けて10個のデステニィストーンを完成させたのである。

 キラキラ煌めくマイデステニィストーンを眺めながらサルーインは考えた。
 「そう言えば、四天王とつるんでいるキラキラした蛙がいたなー。あいつをもっと輝かせてやろう!」
 こうして、当時は準四天王くらいの能力値だったジュエルビーストが第二の被験者に決定し、デステニィストーンを一つ投与してセーフ、もう一つ投与してセーフ、まだセーフ、まだセーフ、・・・というように表面張力で水が溢れ出さないギリギリを攻めるかのようにジュエルビーストにデステニィストーンを投与していった結果、丁度サファイアを投与したところでジュエルビーストの体内の属性エネルギーバランスが崩壊してしまい暴走モードに突入してしまったわけである。
 「また失敗か。案外、宝石創りは難しいものだな。・・・うん、満足。宝石創りはもうやめよう。」
 自分たちの弟分であったジュエルビーストがフロンティアに投棄されたとの報を聞いて、四天王らはドン引きしたのであった。
 
 #出典:ファイナルファンタジー5,スクウェア.

 フレイムタイラント爆散とジュエルビースト暴走という被害を出したところで、サルーインのデステニィストーン創りは終了した。
 しかし、サルーインの狂気の改造実験はまだ終わらない。
 次のターゲットは四天王論で述べたドラゴンS系2匹(アディリス)であり、その失敗によって四天王らの邪神一派からの離反が確定したのであった。

(3)余談:ジュエルビーストの召喚具?

 ジュエルビーストがもともとは四天王らの巨獣グループに属していたとすると、暴走さえしていなかったならばジュエルビーストの召喚具を貰えるような展開もあったかもしれない。
 フレイムタイラントは「火の揺らめき」、水竜は「水の流れ」、アディリスは「土の温もり」、タイニィフェザーは「風の囁き」・・・では、ジュエルビーストの召喚具はどんな名称になったのだろうか?

 蛙さんは宝石がキラキラしているから属性は「光」だろうか。
 それならば「光の輝き」とか「光の煌めき」がパッと思いつくが、光術に「スター~」という名称が付けられていることを勘案すれば「光の瞬き」も悪くないだろう。

あとがき:

 本稿は「四天王論補論」ということで四天王論の補足・・・なのであるが、実のところの執筆動機は運命石論3の補足である。
 と言うのは、「運命石論3」において「エロールがデステニィストーンを創ったことで運命干渉効果が引き起こされた」と述べたが、実はその時点では運命干渉効果の不具合は起こっておらず、サルーインがさらにデステニィストーンを創ったことでパワーバランスが崩れて不具合が起こったという可能性もあるのである。
 しかしながら、サルーインがエロールに比肩するようなデステニィストーンを創れていたのならば、もっと邪神一派の強化に有効に利用できていたはずであるが、そういった事実はゲーム内や文献では確認できない。
 故に、サルーインの創ったデステニィストーンには属性強化や属性耐性の効果はあっただろうが、「運命干渉効果を引き起こすような効果は無かった」というのが運命石論3の補足として押さえておきたかったことである。