虎の巣head

運命石論Ⅰ -英雄に宝石は与えられたのか?-

(2021年8月14日発表)

 はじめに
 1.邪神封印戦争の時系列についての疑問
 2.疑問点についての推察
  (1)デステニィストーンは2セット作られた?
  (2)光のダイヤモンドは2個作られた?
  (3)デステニィストーンはミルザに与えられていない?
 3.邪神封印戦争の時系列についての結論

はじめに:

 運命石・・・デステニィストーンのことです。
 本稿のタイトルが「デステニィストーン論」ではなく「運命石論」なのは何か特別な意味を込めているわけではなく、当サイトの左側の項目欄に「デステニィストーン論」だと1行で収まらないので仕方なく・・・といった経緯です。

 さて、本題に入りますが、デステニィストーンと言えばロマ1の物語の中核をなすアイテムであるにもかかわらず、ゲームをプレイして実際に手に入れてみても「あれ?」と困惑させられ、その真相としてはそれらのほとんどが(耐性の設定はされているものの、それが反映されるようになっていないために)効果が無いという前代未聞のアイテムである。
 そんなデステニィストーンに関わるいくつかの疑問とその真相について、本稿を含む2編の運命石論において言及したいと思います。

1.邪神封印戦争の時系列についての疑問

 「まだ人間が、この世に生まれて間もない頃、悪しき三柱の兄弟神がおりました。長兄のデス、弟のサルーイン、末妹のシェラハ。彼らは、恐ろしいモンスター達を率いて神々の王エロールと人間達に戦いを挑みました。激しい戦いでした。デスとシェラハはエロールと神々の力に屈し、最後には降参しました。しかし、サルーインだけは戦いをやめませんでした。エロールは、サルーインを封じ込めるため10種の力の宝石を作り、人間達の選んだ一人の英雄に与えました。その戦士ミルザは見事に役目を果たしサルーインを封じました。彼も命を失いましたが、その名前と宝石の物語は伝説として世に残りました。」
 これは皆さんもご存じのロマ1のオープニングデモで語られる邪神封印戦争についての説明である。
 「なるほど、エロールからデステニィストーンを託されたミルザが命を賭してサルーインを討伐したんだなー。」となると思います。
 

 では次は、基礎知識編に記述されている邪神封印戦争についての説明を見てみましょう。
 「三邪神は正しき神々に戦いを挑んだ。エロールは第二の月、愛の女神アムトを産んだ。エリスとアムトの二つの月の力で、闇の力を押さえたのである。デスは冥府に追い落とされ、封印された。長い戦いに決着をつけるべく、エロールは十種の宝石に魔力を込め、結界を張った。シェラハにはエロール自ら光のデステニィストーンをつけさせ、闇の力を封じた。シェラハは全ての記憶を失い、世界を彷徨うシェリルという一人の女になった。しかし、サルーインだけは、エロールの力に屈しなかった。人々は勇者ミルザを選んだ。ミルザはエロールの試練を果たし、神々の武器と鎧を身につけサルーインと戦った。サルーインは遂に結界に沈んだが、ミルザも傷を負い斃(たお)れた。」(マルディアスの神々の世界[1]、三邪神と神々の戦いより抜粋)

 OPデモと基礎知識編を比べてみると、基礎知識編のほうが当時の経緯がより詳しく述べられているのであるが、話に微妙な食い違いのように思える箇所が生じているのである。
 エロールはサルーインを封印するために10種のデステニィストーンを作った。
 これはどちらも同じである。しかし、違いがあるのはその後である。
 OPデモでは「エロールはデステニィストーンを作ってミルザに与えた」と述べられているのに対して、基礎知識編では「エロールはデステニィストーンを作って結界を張り、ミルザには神々の武器と鎧を与えた」と述べられているのである。
 つまり、基礎知識編ではエロールがミルザにデステニィストーンを与えたことについては全く述べられていないのである。

 さらに、文献を見てみましょう。
 大全集には邪神封印戦争について次のように記述されている。
 「滅びたサイヴァの身体からデス、サルーイン、シェラハが産まれ、彼らはエロール達に戦いを挑む。エロールはアムトを産み、闇の力を抑えてデスを冥府に封印。さらに十種の宝石に魔力を込め、結界を張ると同時にシェラハに使って力と記憶を奪い、一人の女とした。サルーインは神々の武具を身につけた勇者ミルザとの戦いで結界に沈む。」(タイトルごとに見る神話とその構造、RS1~神々の戦い~より抜粋)
 記述内容としては基礎知識編と同様で、エロールはデステニィストーンを作って結界を張ったということは述べられているが、デステニィストーンをミルザに与えたことについては述べられていない。
 また、基礎知識編においてもダイヤモンドでシェラハを封印したことについて述べられていたが、大全集ではデステニィストーンを作って結界を張ると「同時に」シェラハが封印されたと、封印された時期についても明言されている。

 さて、上記で着目した食い違いから生じる邪神封印戦争についての疑問点を整理してみましょう。
 まず、OPデモではエロールは10個のデステニィストーンをミルザに与えたと述べられているのに対して、基礎知識編や大全集の記述においてはエロールがミルザにデステニィストーンを与えたことについては全く触れられていないことから、エロールはデステニィストーンをミルザに与えたのか?ということが第一の疑問点である。

 次に、仮にエロールがミルザにデステニィストーンを与えたのだとしても、基礎知識編や大全集の記述をもとにすると、エロールは結界を張るためにデステニィストーンを作り、結界を張ると同時にシェラハに光のダイヤモンドを装着して封印しているのだから、その後にデステニィストーンをミルザに与えたとしても10個ではなく9個ということになってしまう・・・即ち、エロールがミルザに与えたデステニィストーンは10個全てなのか?ということが第二の疑問点である。
 

 以上の疑問点を一言にまとめるならば、「エロールはデステニィストーンを10個全てミルザに与えたのか?」ということである。

 「OPデモ、基礎知識編、大全集・・・あれ?まだ大事典が出ていないではないか!・・・ということは大事典に答えがあるのでは?」と察しのいい読者の方は思うことでしょう。
 そう、大事典にはいろいろと書かれています。

 まずは大事典のミルザについての解説に書かれていることを見てみましょう。
 「サルーイン封印戦争が熾烈を極めるなか、光の神エロールは世界中にデステニィストーンを配置、サルーインを結界に封じ込めようとした。しかし、結界までサルーインを追い込める者はおらず、神々は絶体絶命の危機に瀕していたのだった。そこに現れたのが伝説の戦士ミルザである。」(輝の章 マルディアスの神々 ミルザ)
 ・・・結界を張るためにデステニィストーンを世界中に配置した。
 世界の各地に配置してあるのならば、デステニィストーンをミルザに与えることはできないようにも思える。

 一方で、火のルビーについての解説にはエロールがミルザに語った言葉(「ミルザの書」)として次のように記述されている。
 「第一なる力は火の力なり。火は神より汝ら人の子に遣われし知恵の象徴にして、天なる光と熱とを汝らのもとに送る。我、火の力を集めて一個の紅玉を造り汝に与う。火の力を操り、邪神とその下僕らを業火のもとに焼きつくすべし。」(輝の章 火のルビー)
 紅玉とはルビーのこと・・・つまり、エロールがルビーを作ってミルザに与えたと書かれているのである。

 同様に他のデステニィストーンについてもエロールが作ってミルザに与えたと書かれている。
 先に疑問点として指摘したシェラハに装着されているはずのダイヤモンドについては、ブラックダイアの解説に、
 「ミルザはダイヤモンドとブラックダイアを合わせ持つことにより、エロールの意思を受け継ぐにふさわしい存在であることを証明したという。」(輝の章 ブラックダイア)
 と記述されているので、ミルザは確かにダイヤモンドも与えられているらしい。

 このように大事典によると、デステニィストーンは結界を張るために世界中に配置されたと記述されている一方で、10個全てがミルザに与えられたとも記述されているのである。
 「エロールはデステニィストーンを10個全てミルザに与えたのか?」という疑問は大事典を参考にしても、すんなりとは解消されないのであった。
 はてさて、真相はどうなっているのか?
 本稿ではこの疑問点の真相について推察を進める。

2.疑問点についての推察

 いくつかの可能性を挙げて、真相に迫ってみましょう。
(1)デステニィストーンは2セット作られた?
 デステニィストーンはそもそも何のために作られたのか?
 1.で示したように基礎知識編や大全集によるとサルーインを封印するための結界を張るために作られたもののようではあるが、その一方で大事典のエロールがミルザに語る言葉によればエロールがミルザを強化するために作ったものとも読み取れる。
 それならば、もしかしたらエロールは結界用のデステニィストーンとミルザに与える用のデステニィストーンの2セットを作ったという可能性が考えられるだろう。
 

 エロールは世界中にデステニィストーンを配置して結界を張ったが、サルーインを結界に追い込むことができなかったということなので、デステニィストーンによって作られた結界は世界を覆うほど大きいものなのではなく、イスマスのごく一部程度のかなり小規模のものだったのだろう。
 その代わり、マルディアス中の属性的なエネルギーを一カ所に集約させたかなり強力な結界だったのでしょう。
 #大事典の火のルビーの解説におけるエロールからミルザへの言葉に「天と地と人の力を一にし、~」とあるが、天が神々で、地がマルディアス中の属性的なエネルギーを結集して作った結界を意味しているのだと思われる。

 そして、結界を張ったあとは、もう各地にデステニィストーンを配置しておく必要はなかったのでしょう。
 結界用に使った光のダイヤモンドをシェリルに使用する。
 結界にサルーインを追い込めなかったので、ミルザを強化して結界内にサルーインを追い込むために新たにもう1セットデステニィストーンを作って、ミルザに与えた。
 このような展開ならば、話の筋としては通るでしょう。

 しかし、デステニィストーンが2セットあったのならば、ゲームを進める中でデステニィストーンのどれかで同種のものを2個手に入れられるということがあってもよさそうなものである(が、実際にはそういうことはない)。
 それに、デステニィストーンが2セットあったというのは、正直・・・ロマンシングではないように思う。
 このような理由から、デステニィストーンが2セット作られたという可能性は低いと思われる。
(2)光のダイヤモンドは2個作られた?
 結界を張る用に作られた10個のデステニィストーンとは別に、シェラハ封印用に光のダイヤモンドだけさらにもう一つ作られたという可能性はないだろうか?
 ロマ1関連の文献には主に光のダイヤモンドはシェラハの指にはめられたという情報が記載されている。
 ところが徹底攻略編の光のダイヤモンドの解説には、
 「クジャラートとローザリアの戦争により失われた。サルーイン復活の原因になったと言われている。」(デステニィストーン所在一覧)
 と記述されているのである。
 つまり、光のダイヤモンドは2個作られて、一方はシェラハの封印に使われて、もう一方はミルザに与えられたのである。
 そして、一方のダイヤモンドがシェラハの指にはめられたままで現在に至り、もう一方のミルザに与えられたダイヤモンドは流れ流れてクジャラートとローザリアの戦争で壊れてしまった。
 このような展開ならば、ダイヤモンドでシェラハが封印されたということと、10個のデステニィストーンがミルザに与えられたということが両立できることになる。
 

 しかしながら、この可能性は極めて低いと考える。
 なぜなら、大事典のシェラハの解説に
 「エロールがわざわざ邪や闇のデステニィストーンを作りだしたのは、全ての属性のパワーバランスを保つためであり、現在では崩壊しつつある。」(輝の章 マルディアスの神々 シェラハ)
 と記述されているからである。
 つまり、デステニィストーンを作るにあたってパワーバランスを気にしたエロールが、パワーバランスを崩すことになるダイヤモンドを2つ作るということは考えにくいのである。
(3)デステニィストーンはミルザに与えられていない?
 (1)で示したように、基礎知識編や大全集にはエロールがミルザに神々の武具を与えたということは述べられているが、デステニィストーンを与えたということは述べられていない。
 それならば、真相としてはエロールはミルザにデステニィストーンを与えていないということなのだろうか?
 

 しかしながら、エロールがミルザに10個のデステニィストーンを与えたというのはおそらく実際にあった出来事なのだと考える。
 なぜなら、OPデモで語られているように、ミルザの戦いは宝石の物語としてマルディアスの人々に語り継がれているからである。
 
 また、実際にゲーム内においても騎士団領でのハインリヒとの会話でデステニィストーンがマルディアスのおとぎ話に登場していることが分かる。
 

 邪神封印戦争においてミルザは神々の武具を装備し、4体の巨獣(フレイムタイラント、タイニィフェザー、アディリス、水竜)を引き連れてサルーインに挑んだ。
 神々の武具、4体の巨獣・・・これらはかなりのインパクトのはずである。
 ところがOPデモによると、それらを差し置いてミルザの戦いは宝石の物語として語り継がれているのである。
 即ち、ミルザの戦いにおいてデステニィストーンは神々の武具や4体の巨獣が霞んでしまうほどのさらなるインパクトのある働きをしたということなのでしょう。
 #桃太郎で例えるならば、刀やお供(犬、猿、雉)はそっちのけで、きび団子に焦点が当てられて語られるようなものである。

 仮に、デステニィストーンを結界を張るためにだけしか使わなかったのだとしたら、デステニィストーンがミルザに与えられることはなかったことになるので、その存在がおとぎ話に組み込まれることはなかったでしょう。
 しかし、実際にはデステニィストーンはミルザの戦いにおいて最もインパクトのある働きをしたものとして語り継がれているのである。
 従って、基礎知識編や大全集にはエロールがミルザにデステニィストーンを与えたことについては述べられていないが、本稿の推察としては、エロールがミルザに10個のデステニィストーンを与えたのは実際にあった出来事であると結論づける。

3.邪神封印戦争の時系列についての結論

 以上の考察によって、本稿は「エロールは10個のデステニィストーンを作り、その全てがミルザに与えられた」と結論づけた。
 従って、基礎知識編や大全集で述べられている「エロールはデステニィストーンで結界を張るとともに、光のダイヤモンドでシェラハを封印した」というのは時系列順としては誤っていることになる。
 つまり、ミルザに10個のデステニィストーンが与えられたわけなので、光のダイヤモンドによるシェラハの封印はデステニィストーンが不要になるミルザのサルーイン討伐後になるはずである。
 果たして、そのような展開でも不都合は生じないのか?
 この点についてさらに推察を進める。

 もう一度、邪神封印戦争についての記述を見てみましょう。
 「エロールは第二の月、愛の女神アムトを産んだ。エリスとアムトの二つの月の力で、闇の力を押さえたのである。デスは冥府に追い落とされ、封印された。」(基礎知識編)
 「エロールはアムトを産み、闇の力を抑えてデスを冥府に封印。」(大全集)
 基礎知識編や大全集のこれらの記述には、二つの月の効力がデスに限定してしか述べられていない。

 一方で、大事典のアムトの解説には次のように記述されている。
 「サルーイン封印の戦争においてエロール達神々は苦戦していた。特に三邪神の一人シェラハの魔力の前には立ち向かう術がなかったのだ。彼女の闇のパワーを封じるには闇を打ち払うだけの光がなくてはならず、エリスの司る銀の月の光では力不足であった。そこでエロール(#大事典ではサルーインになっているが誤りのため修正する)は月をもう一つ創ることにした。赤い月の女神アムトの誕生である。アムトは銀の月の女神エリスと協力して一緒に地を照らし、絶望の闇を消し去った。」(輝の章 マルディアスの神々 アムト)

 また、大事典のシェラハの解説には次のように記述されている。
 「シェラハは戦いにおいて辺り一面に暗黒の闇を生み出し、己の戦いの舞台とした。そしてエロール達の攻撃を次々と闇の中に消し去り、暗黒の力で神々に大打撃を与えた。しかし、エロールの創り出した神アムトとエリスによって闇は相殺され、その薬指には光のダイヤモンドがはめられて、永遠に封じられてしまったのだ。」(輝の章 マルディアスの神々 シェラハ)

 このように、基礎知識編や大全集では二つの月の力の効力はデスに限定してしか述べられていないのであるが、大事典によるとそもそも二つの月はデスに対してのものではなく、シェラハを弱体化するために創られたものなのである。
 そして、二つの月の力で闇の力が失われてシェラハは無力化されたわけなので、二つの月の力が健在ならばシェラハは無力なままということになる。
 従って、シェラハを無力化してすぐさま光のダイヤモンドで封印しなくても、無力化されたシェラハをどこかに幽閉しておいて、サルーインを討伐した後に光のダイヤモンドで封印したという展開でも十分に筋が通ることになる。
 #シェラハの弱体化を意図した二つの月であったが、副次的にまさかのシェラハ以上に抜群に弱体化させられてしまった残念な長兄デス様なのでした。
 

 以上から、邪神封印戦争の時系列は次のようになると結論づける。
  ・二つの月の力でデスとシェラハが無力化されて降参する。
 →・エロールがサルーインを封印するために10個のデステニィストーンを作り、結界を作るが、サルーインを追い込めず。
 →・ミルザがエロールから神々の武具と10個のデステニィストーンを与えられて、サルーインを結界に追い込み、封印する。
 →・エロールが光のダイヤモンドでシェラハを封印し、シェリルにする。

 本稿のまとめとしては、基礎知識編や大全集で述べられている「エロールはデステニィストーンで結界を張ると同時にシェラハを光のダイヤモンドで封印した」というのは誤りで、実際には「エロールはデステニィストーンで結界を張ったが、サルーインを追い込めなかったので、デステニィストーンをミルザに与えた。ミルザがサルーインを結界に追いやった後に、シェラハを光のダイヤモンドで封印した」と思われるということである。

運命石論Ⅱ -主神はどうして所在地を明らかにしたのか?-

(2021年8月14日発表)
(2023年01月13日、4.(2)オパールの所在地不明の理由を修正(シルバーが所持して航海中→何者かが所持して移動中))

 1.とある著作物についての疑問
 2.デステニィストーンの真の効力
 3.デステニィストーンの劣化の原因
 4.エロールの思惑
  (1)執筆の理由
  (2)所在地不明の理由
  (3)エロールの思惑とフラーマの思い

1.とある著作物についての疑問

 バファル帝国の首都メルビルには世界最大にして最古の図書館がある(大事典 覇の章 メルビル)。
 そして、その図書館には次のように書かれた本がある。
 「デステニィストーンのある場所
  火のルビー:バイゼルハイム      水のアクアマリン:クリスタルレイク
  土のトパーズ:カクラム砂漠      風のオパール:? 
  光のダイヤモンド:?         闇のブラックダイア:?
  気のムーンストーン:二つの月の神殿  邪のオブシダン:凍った城
  魔のエメラルド:魔の島        幻のアメジスト:フロンティア」
 この本は読むために古文書が必要というわけでもなく、来訪者が誰でも閲覧可能である。
 ゲームを初めてプレイする人にとっては伝説のアイテムの所在地が示されているため貴重なヒントになるだろう。
 

 しかしながら、ゲームをプレイする人にとってはありがたい存在であるが、ロマ1の物語の中においては極めて謎な存在である。
 この本のタイトルは「世界のデステニィストーン」といい、ロマ1の物語の舞台からおよそ80年前のAS922年に発行された(大事典、シェラハの項目)
 著者はハオラーン・・・即ち、現在にマルディアスに主神エロールである(大事典、シェラハの項目)。
 つまり、本稿の主要な問いは、「どうしてエロールはこんな本を書いたのか?」ということである。
 同図書館に所蔵されている「世界神殿めぐり」(AS907年発行、ハオラーン著)(大事典、エロールの項目)を執筆した勢いで「世界のデステニィストーン」も執筆してしまったわけでもあるまい。

 先の大戦において、デステニィストーンによって作られた結界に邪神サルーインは封印された。
 率直に考えて、邪神サルーインの復活を目論んで、まず最初にするであろうことは、封印に使われたデステニィストーンに何かしらすることであろう。
 実際に、ロマ1の物語の舞台の数年前に、邪神の手先によってフロンティアの北の黒海に沈んでいた闇のブラックダイアは破壊されている。
 闇のブラックダイアは光を弱め、闇を強化するにもかかわらず、破壊されているのである。
 つまり、この本の存在は邪神の復活を目論む者たちにとっても、とってもありがたい存在なのである。

 また、この本の存在は邪神の復活を目論んでいない者にとっても、とってもありがたい存在になりえただろう。
 デステニィストーンはロマ1の世界ではおとぎ話で語られる存在なので、必ずしも世界中の全ての人がその存在を信じているわけではないだろうが、ロマ1の舞台は未知の世界に夢と希望とロマンを求めた冒険者たちの時代であるから、その存在を信じて実際に探しに行く人がいても不思議ではない。
 #本稿の筆者(とら)を例にすると、屈斜路湖のクッシー、洞爺湖のトッシー、本栖湖のモッシー、池田湖のイッシー、etcの存在を今でも信じていて、その都度、探しに行っているようなものである。
 この場合、邪神を復活させるつもりはなくても、運よく発見したものの不慮の事故でデステニィストーンを破損させてしまうということも十分に考えられる。

 このように、この本の発行は普通に考えるとリスクしかないように思われるのである。
 当然、エロールがそのリスクのことを考えていなかったということはないであろうから、そのリスクを分かったうえで発行したということになる。
 では、どうしてエロールはこの本を書いたのか?
 本稿ではこの疑問点についての真相について推察を進めたい。

 ・・・それにしても、気の毒なのはローザリア国王の英雄カール1世である。
 アクアマリンはカール1世自身の手によって意図的にクリスタルレイクの洞窟に隠された(基礎知識編 デステニィストーンの解説)。
 隠された正確な時期は定かではないが、北バファル戦争が終結したAS899年から「世界のデステニィストーン」が発行されたAS922年の間のどこかであろう。
 つまり、カール1世が密やかに隠したにも関わらず、その数年後にはカール1世の意に反するように「世界のデステニィストーン」で公表されてしまったのである。
 カール1世が「世界のデステニィストーン」を目にしたかどうかはわからないが、読んでいたとしたら「えぇ・・・。どうして誰も知らないはずなのに、バレちゃってるの!!!???」と愕然としたことでしょう。

2.デステニィストーンの真の効力

 「世界のデステニィストーン」を執筆したエロールの思惑に迫るために、まずはデステニィストーンの効力について整理しておく。

 文献には次のように記述されている。
 「デステニィストーンの真の力は装備した者を相反する力より守ること。火のルビーを装備すれば、水の術法のダメージが減るという具合だ。」(徹底攻略編,デステニィストーン所在一覧)
 「デステニィストーンのルビーには火の力があり、指にはめておくと、水の攻撃術法を受けた時のダメージが弱まる。」(基礎知識編,術法ガイドの火術の項目)
 実際にロマ1をプレイすると、多くのデステニィストーンは効果が謎なものの、水のアクアマリンでは火属性攻撃を無効にすることができるので、デステニィストーンには属性耐性効果がある(あった)というのは事実なようである。
 これらのことから、デステニィストーンの効力というと防御面を思い浮かべがちであるが、過去の邪神封印戦争においてミルザが用いた際にはどうやら様相が違ったらしい。

 大事典にはミルザが用いた際の効果について次のように記述されている。
 「ミルザはルビーの力によって己の剣に炎の衣をまとわせて戦ったと伝えられている。」(輝の章 火のルビー)
 「サルーインとミルザの戦いでは、ミルザに邪悪の炎を打ち払う力を与え、傷ついた体を素早く癒して戦い続けさせたという。」(輝の章 水のアクアマリン)
 「ミルザはオパールの力によって風を自在に操り、多数の敵を一瞬のうちに打ち倒したといわれる。」(輝の章 風のオパール)
 「ミルザはサルーインとの死闘に臨むに際し、大地の力によって強化された鎧をまとい、大地から生気を受け取りながら戦い続けたという。」(輝の章 土のトパーズ)
 「ミルザは自分を包囲したモンスターの大軍を幻惑し、同士討ちを誘って危機を脱したという。」(輝の章 幻のアメジスト)
 「ミルザは魔の力を用いて時間を操り、邪神との長い戦いに耐え抜いたという。」(輝の章 魔のエメラルド)

 これらの記述から推察すると、
 ・「己の剣に炎の衣をまとわせて」→ファイアウエポン
 ・「邪悪の炎を打ち払う力」→邪悪な炎が地相に関するものならばレインコール、状態異常に関するものならば毒消しの水
 ・「傷ついた体を素早く癒して」→癒しの水
 ・「風を自在に操り、多数の敵を一瞬のうちに打ち倒した」→「多数」というと吹雪であるが「一瞬のうちに打ち倒す」というとブラッドフローズなので、もしかしたらそれらの合成術法なのかも?
 ・「大地の力によって強化された鎧をまとい」→ダイヤモンドアーマー
 ・「大地から生気を受け取りながら」→アースヒール
 ・「幻惑し、同士討ちを誘って」→幻影魅力術
 ・「時間を操り」→スロウ、クイック
 というように様々な術法を駆使してミルザはサルーインと戦ったようなのである。
 

 なお、光のダイヤモンドと気のムーンストーンについては次のように記述されている。
 「エロールの光に包まれた戦士ミルザは、敵の放った闇の術法を苦も無く跳ね返したと伝えられている。」(輝の章 光のダイヤモンド)
 「ミルザは鍛錬によって強力な気を身につけて戦ったといわれ、死後に正義の神として気を司る権威を与えられているのだ。」(輝の章 気のムーンストーン)
 光のダイヤモンドについては、ダイヤモンドそのものの属性耐性効果なのかもしれないが、ライトによって闇の術法を弱体化したという可能性もある。
 気のムーンストーンについては、もともと習得していた腕力法や精神法が強化されたのかもしれない。

 さて、上述において肝心な点はミルザが相反する系統の術法も使用しているということである。
 通常、人間は相反する系統のどちらか一方の術法系統しか習得することはできない。
 ロマ1のゲーム内においても、相反する系統の術法を使用できるのは邪神サルーインだけである。
 つまり、過去の大戦においてミルザはデステニィストーンの効力によって、人を超えた神に匹敵する存在になっていたのである。

 また、大事典にはミルザが闇術や邪術を使用したという記述は無いが、闇のブラックダイアと邪のオブシダンも与えられていたわけだから、その効力によって使用しようと思えば闇術と邪術も使用できたのではないか?とも思われる。
 しかしながら、大事典にはエロールからミルザへの言葉(「ミルザの書」)として次のような記述もある。
 「我汝に力を与えん。(中略)第一なる力は火の力なり。」、「我、火の力を集めて一個の紅玉を造り汝に与う。」(輝の章 火のルビー)
 「我汝に第六の力を与えず、これに近づくを戒む。」、「我闇の力を集めて一個の黒金剛石を造り、汝に与う。」(輝の章 闇のブラックダイア)

 上述のように、エロールはデステニィストーンを与えるという話とは別に各系統の力を与える、与えないという話もしているのである。
 ロマ1において術法を使うためには法力と術法習得値の両方が必要である。
 どちらが欠けていても術法を使うことはできない。
 従って、「ミルザはルビーの力によって己の剣に炎の衣をまとわせて戦った」という記述も併せて推察すると、おそらく、
 ・ミルザがエロールから与えられた力とは各系統の法力である。
 ・デステニィストーンは所持者に術法習得値を付与する効果がある。
 と言えるのではないだろうか。
 よって、ミルザはエロールから闇術や邪術の法力は与えられなかったので、闇のブラックダイアと邪のオブシダンを与えられていたものの闇術と邪術を使用することはできなかったであろう。

 以上のように、ミルザは過去の大戦においてデステニィストーンの効力によって闇と邪を除いた8系統の術法もガンガン使用することができる神様状態になっていた。
 属性攻撃は効かないわ、物理攻撃をしてもすぐに自然回復してしまうわで、完全に手詰まりで、相手をさせられたサルーインが気の毒に思えるくらいである。
 それ故に、ミルザとサルーインの戦いが、神々の武具でも巨獣達でもなく「宝石の物語」として語り継がれているのも納得であるし、決戦前にサルーインが「あの敗北がエロールの仕組んだ罠だったと証明し~」と反則級の相手と戦わされたことを「罠だ!」とぼやきたくなる気持ちも分からないでもありません。
 

 思うに、邪神封印戦争における決戦は激闘の末にミルザがサルーインと相打ちしたかのように語られているが、実際にはそうではなく、戦闘ではミルザがサルーインを圧倒して、結界の中に追いやることができたに違いない。
 しかし、そんな神に匹敵する力を人間の肉体で耐えることができるわけもなく、その代償としてミルザの命は燃え尽きたのではなかろうか?
 例えるならば、(厳密には違うけれど気持ちとしては)ハンターハンターの「ゴンさん状態」の代償のようなものである。
 従って、ミルザの死因は、サルーインの攻撃による負傷なのではなくて、エロールによる過剰なドーピングの副反応なのであろう。

3.デステニィストーンの劣化の原因

 前章で述べた通り、かつての大戦の際にはデステニィストーンには相反する属性系統に対する耐性効果だけでなく、各系統の術法習得値を付与するという効果もあったと考えられる。
 しかしながら、大戦から1000年の時を経たロマ1の物語の舞台においては、属性耐性効果を確認できるのは水のアクアマリンと幻のアメジストだけであり、術法習得値の付与効果に至っては確認できるデステニィストーンが一つもないという状況である。

 この点について改めて確認をしておくと、ロマ1の物語の舞台におけるデステニィストーンの属性耐性効果は以下のようになっている。
 〇は耐性ありで、△は属性設定無効である。
 ロマ1は「属性」と「属性に対する振る舞い」が別々に設定されていて、属性が「火」でそれに対する振る舞いが「耐性あり」ならば「火属性に対して耐性あり」となり、属性が「火」でそれに対する振る舞いが「弱点」ならば「火属性が弱点」となる。
 そして、属性設定無効とは「属性」の設定はされているものの、「属性に対する振る舞い」の設定がされていないために、耐性ありにも弱点にもなっていないという状態である。
名称
火のルビー - - - - - - - - - - - - -
水のアクアマリン - - - - - - - - - - - - - -
土のトパーズ - - - - - - - - - - - - - -
風のオパール - - - - - - - - - - - - - -
光のダイヤモンド - - - - - - - - - - - - - -
闇のブラックダイア - - - - - - - - - - - - - -
気のムーンストーン - - - - - - - - - - - - - -
邪のオブシダン - - - - - - - - -
魔のエメラルド - - - - - - - - - - - - - - -
幻のアメジスト - - - - - - - - - - - - - -

 上記のように、属性設定が機能しているのはアクアマリンとアメジストだけで、他のデステニィストーンは「属性に対する振る舞い」が設定されていないために、属性耐性効果が全くないのである。

 このように、1000年前と比較して明らかにデステニィストーンの効力は劣化してしまっているのである。
 では、どうしてデステニィストーンは劣化してしまっているのか?
 それはおそらく保存状態の悪さからくる経年劣化である。
 本章では、その理由について述べる。

 以下に、ロマ1の物語の舞台における各デステニィストーンの所在地を示す。
 ・火のルビー:騎士団領のバイゼルハイムの塔
 ・水のアクアマリン:クリスタルレイクの洞窟
 ・土のトパーズ:カクラム砂漠の地下
 ・風のオパール:アロン島の海賊シルバーの洞窟
 ・光のダイヤモンド:放浪するシェリル
 ・闇のブラックダイア:フロンティア北の黒海の底(にあったが破壊済み)
 ・気のムーンストーン:アロン島の二つの月の神殿
 ・邪のオブシダン:バルハラントの凍った城
 ・魔のエメラルド:魔の島の塔
 ・幻のアメジスト:放浪する詩人ハオラーン

 上記にさらに各場所の地相属性を追記すると以下のようになる。
 ・火のルビー:騎士団領のバイゼルハイムの塔 →地相はおそらく無属性(塔内では戦えない)
 ・水のアクアマリン:クリスタルレイクの洞窟 →地相は水属性
 ・土のトパーズ:カクラム砂漠の地下 →地相は水属性
 ・風のオパール:アロン島の海賊シルバーの洞窟 →地相は水属性
 ・光のダイヤモンド:放浪するシェリル →放浪しているので一定ではない
 ・闇のブラックダイア:フロンティア北の黒海の底 →地相はおそらく水属性(黒海には行けない)
 ・気のムーンストーン:アロン島の二つの月の神殿 →地相は無属性
 ・邪のオブシダン:バルハラントの凍った城 →地相は無属性
 ・魔のエメラルド:魔の島の塔 →地相は無属性
 ・幻のアメジスト:放浪する詩人ハオラーン →放浪しているので一定ではない

 お気づきでしょうか?
 属性耐性効果が残っている水のアクアマリンは地相が同系統属性の水属性の場所に所蔵されていたのに対して、他のデステニィストーンは地相の属性が宝石の属性系統と異なる場所に所蔵されていたのである。

 幻のアメジストについては、大事典に次のように記述されている。
 「幻の力はエロールに近いものでありながら、同時に人の目を欺くたぶらかしにもなりかねない危険性を持つ。アメジストは人の手には渡らず、エロール自身が最も安産な場所に隠したという。」(輝の章 幻のアメジスト)
 自然界に幻の地相の場所があるのかどうか、その場所にエロールがアメジストを隠したのかどうかは定かではないが、少なくとも幻の力に近いエロールが所持していたことは確かである。

 これらのことから、水のアクアマリンと幻のアメジストは宝石と同系統属性の場所にあったために、その効力がまだ残っていたのであり、それ以外のデステニィストーンは宝石と同系統属性の場所になかったために効力が失われてしまったのであると推察される。
 

 よって、水のアクアマリンと幻のアメジスト以外のデステニィストーンが仮に以下のような場所にあったら、ロマ1の物語の舞台の時期までその効力を保持できていたかもしれない。
 ・火のルビー →カクラム砂漠やトマエ火山
 ・土のトパーズ →自然界に土属性の場所は確認されていないので劣化は防げなかったかもしれない。
 ・風のオパール →サンゴ海や最終試練
 ・光のダイヤモンド →自然界に光属性の場所は確認されていないが、光術「ライト」で地相を光属性にし続ける。
 ・闇のブラックダイア →自然界に闇属性の場所は確認されていないが、サルーイン一派が所持して闇術「ダークネス」で地相を闇属性にし続ける。
 ・気のムーンストーン →自然界に気属性の場所は確認されていないので劣化は防げなかったかもしれない。
 ・邪のオブシダン →自然界に邪属性の場所は確認されていないが、魔の島は邪気の発生場所なのでもしかしたら・・・。
 ・魔のエメラルド →自然界に魔属性の場所は確認されていないので劣化は防げなかったかもしれない。
 #海賊シルバーがオパールを所持してサンゴ海で活躍していた頃は、きっとオパールの属性耐性効果はまだ健在だったことでしょう。

 また、属性耐性効果を残している水のアクアマリンであっても、1.で述べた通りクリスタルレイクの洞窟に隠されたのはロマ1の物語の舞台から80~100年ほど前であり、おそらくそれ以前の900年間のほとんどは水属性ではない場所にあったことから、水のアクアマリンの効力もかろうじてギリギリ残っている程度なのではないだろうか。

4.エロールの思惑

(1)執筆の理由
 2.と3.において、保存状態による程度の違いはあるものの10個のデステニィストーンは1000年の時を経て確実に経年劣化しているという事実について述べた。
 ロマ1のゲーム内においてデステニィストーンの戦闘に関わらない場面での効果、つまり、
 ・気のムーンストーンによる除念効果
 ・魔のエメラルドの不老不死(失敗版)効果
 ・光のダイヤモンドの封印効果
 といった効果が確認されているので、完全にただの石になったわけではないだろうが、属性耐性効果や術法習得値の付与効果が失われていることから経年劣化は揺るぎのない事実と言える。
 それならば当然、デステニィストーンの経年劣化に伴ってサルーインを封印した結界の力も徐々に弱まってしまっていると考えるのが妥当であろう。
 

 さて、ここで本稿の出発点となった問いに戻りましょう。
 どうしてエロールは「世界のデステニィストーン」という書物を執筆し、デステニィストーンの所在地を公表したのか?
 それは、デステニィストーンの経年劣化に伴い、邪神を封印した結界の力も弱まってきて、邪神の復活が迫ってきていることを人間たちに知らせるためだったのではないだろうか。
 つまり、人間たちが実際に効力を失ったデステニィストーンを手にして、「これはヤバいのではないか!?」と危機意識を持つことで、邪神復活の日に備えてほしかったのであろう。

 ロマ1の物語の舞台からおよそ100年ほど前のAS900年くらいに、エロールはおそらくデステニィストーンの劣化とそれに伴う結界の力の弱体化を察したのでしょう。
 「サルーインがいずれ復活する。このままでは・・・いけない!!」

 エロールは最終試練を突破した世界を救う素質のある者の質問に対して次のように答えている。
 「かつて神同士の戦いがあった。その時、この世界は一度死んだ。それほど神の力は激しいのだ。私は二度とこの世界を死なせたくない。」
 「人は自分の運命を自分で決める権利がある。サルーインのなすがまま滅び去るか、それともサルーインに立ち向かうか、自分たちで選ぶがいい。」
 このように、エロールはマルディアスの世界を守りたいという思いと、そのためには人が自分たちで守るしかないという思いがあるのである。
 そこでエロールは草葉の陰から人間たちを支援することを意図して、サルーイン復活の兆しを知らせるために、「世界のデステニィストーン」を執筆することにしたのである。
 
(2)所在地不明の理由
 「世界のデステニィストーン」において3個の宝石の所在は「?」となっており、どこにあるのかが明示されていない。
 即ち、風のオパール、光のダイヤモンド、闇のブラックダイアの3個の宝石である。
 これは決してエロールがその3個の所在地を把握できていなかったからではないだろう。

 まず、風のオパールについては、エロールが執筆した当時のAS920年頃には、おそらく何者かが常にオパールを所持した状態で世界中を移動していたために、特定の場所を明示することができなかったからであろう。
 次に、光のダイヤモンドについては、シェリルの存在とその経緯について記載したら、当然、闇の女王シェラハの復活につながってしまうために、それは避けたかったからであろう。
 #邪神封印戦争において神々は闇の女王シェラハにかなり苦戦を強いられている。
 最後に、闇のブラックダイアについては、上記の2個の所在地が「?」である明確な理由があるのだから、ブラックダイアの所在地を記載しなかったことについても明確な理由があるはずである。
 憶測でしかないが、おそらく使い方によってはサルーインやシェラハの闇の力を増強するような効力や、闇の力に共鳴してシェラハの居場所が発覚するような効力があったのかもしれない。
 それ故に、ダイヤモンドと同様に発見されると危険なため、敢えて「?」としたのであろう。
 #しかし、そんな効力があるとは知らず、サルーインの配下の者たちはブラックダイアを躊躇なく破壊してしまったのでした。
(3)エロールの思惑とフラーマの思い
 デステニィストーンはそもそもはサルーインを封印するための結界を張るために作られたものなので、劣化はしているもののその存在は少なからず結界の存続に影響していたと思われる。
 しかし、時が経てばいずれ結界は消えてサルーインが復活してしまうので、仮にデステニィストーンが壊されてしまったとしても、それは復活が多少早まる程度の誤差の範囲と考えたのかもしれません。
 むしろ、「デステニィストーンが破壊されたところを人間たちが実際に目にしたほうが危機感を持ってくれるのでは?」とさえ考えていたのではないだろうか。

 そのような思いがあったからなのか、エロールは「世界のデステニィストーン」の執筆後にはより直接的にサルーインの復活を知らせようと行動しているのである。
 徹底攻略編の光のダイヤモンドの解説には「クジャラートとローザリアの戦争により失われた。サルーイン復活の原因になったと言われている。」(デステニィストーンの所在一覧)とあるが、光のダイヤモンドはシェリルの指にずっとはめられているので、当然この話は嘘である。
 ではどうしてこんな話があるのかというと、これはエロールが詩人ハオラーンの姿で吹聴した噂話ではないだろうか。
 

 AS922年に「世界のデステニィストーン」を発行したものの、デステニィストーンは多くの人たちにとってはおとぎ話の存在であり、「世界のデステニィストーン」は創作物もしくは偽書のように受け取られたのかもしれません。
 そこで、AS925年に起こったクジャラートとローザリアでの戦争という悲劇的かつ衝撃的な出来事と関連づけて、「あの戦争でデステニィストーンが一つ壊れてしまった。これは・・・邪神が復活するのでは?」と語り歩くことで、邪神復活が迫っていることに気づかせようとしたのでしょう。
 無論、光のダイヤモンドが壊れてしまったと嘘をついたのは、光のダイヤモンドはシェラハの復活に直接かかわるため、その存在はもう無いと詐称することで、光のダイヤモンドへ関心がいくことを避けるという側面もあったと思われる。

 このようにエロールは草の根の警鐘活動を行ったのであるが、AS1001年のロマ1の物語の舞台を見る限り、残念ながら多くの人たちにはほとんど響くことなく終わってしまったようである。
 しかしながら、邪神の復活を察して、危機に備えようとした人間も確かに存在した。
 それは火のルビーの守護者フラーマである。
 フラーマは伝え聞く火のルビーの効果と現状との違いや世界の動向から危機を察し、予知能力によって邪神復活を確信したのでしょう。
 #ゲーム内において、サルーインの復活に言及しているのは、サルーイン本人とミニオン達、詩人ハオラーン、そしてフラーマだけである。つまり、人間ではフラーマだけなのである。
 

 ・・・
 そして、時は流れ、騎士団領にも幾多の厄災が降りかかるが、それらを振り払って危機を救ってくれる勇者が現れることになる。
 フラーマはその勇者がサルーインに立ち向かう覚悟を決めた際に、勇者に火のルビーを託す。
 もはや属性耐性効果も術法習得値の付与効果もない火のルビーを託す。
 下手したら「何の効果もない石ころを押し付けられた!詐欺だ!」とクレームを入れられかねないにも関わらず、フラーマが火のルビーを勇者に託した理由は、
 「邪神の強大な力に圧倒され、窮地に追いやられたとしても、臆することなく心を燃やし続けることができる!」
 ・・・そんな効果が火のルビーには残されていたからなのかもしれません。
 

運命石論Ⅲ

(2025年02月08日発表)

 
はじめに
 1.「デステニィストーン」と名付けられた理由
  (1)「デステニィストーン」という名称についての疑問
   (i)邪神と戦う運命を背負わされる?
   (ii)いつ頃、誰に名付けられたのか?
  (2)邪神とデステニィストーンの関わり
   (i)エロールの意向
   (ii)サルーインの証言
    (a)「エロールの仕組んだ罠」とは何を意味するのか?
    (b)主人公たちを倒すことがどうして罠であったことの証明になるのか?
    (c)邪神の完全復活
   (iii)現生人類が選ばれた理由
  (3)デステニィストーンの真相
   (i)エリスの証言
   (ii)キャスティングされた人々の一例
    (a)再会できないディアナとアルベルト
    (b)譲渡されたバーバラ
    (c)グレイへの言葉
   (iii)ニーサの啓示
  (4)補足:デステニィストーンは互いを呼び合う?
 2.エロールの言動の真相
  (1)エロールの言動についての疑問
  (2)エロールの真意
   (i)結界を補強することはできないのか?
   (ii)エロールの心境の変化
    (a)想定外の事態
    (b)エロールの決断
    (c)シェラハへの対応
    (d)補足:複数人のハオラーン
  (3)もう一つの可能性
 あとがき

はじめに:

 運命石論Ⅰ及びⅡにおいて、デステニィストーンに関わるいくつかの謎の真相について言及してきた。
 しかしながら、デステニィストーンに関わる謎はまだまだ残されている。
 そこで、本稿ではデステニィストーンのさらなる謎に焦点を当てることを通して、ロマ1の物語の舞台が置かれている状況の真相について言及する。

1.「デステニィストーン」と名付けられた理由

(1)「デステニィストーン」という名称についての疑問
 本稿で最初に掲げる問いはズバリ「デステニィストーンはどうしてデステニィストーンという名称なのか?」ということである。
 ゲーム内で入手できるデステニィストーンには効果のあるもの、無いものどちらもあるけれど、いずれも名称につながる「運命」要素は何も感じられない。
 また、お伽話で語られている内容や関連文献を見てみても、邪神を封印するための結界を張るためにエロールに創られて、ミルザのドーピングに使われて、闇の女王シェラハの「シェリル」化にも使われたということは分かるけれど、これまたやはり「運命」要素は何も感じられない。
 このように、よくよく考えてみるとデステニィストーンからは全く「運命」要素を感じられないのに、どうして運命石・・・デステニィストーンなどという名称が付けられたのであろうか?
(i)邪神と戦う運命を背負わされる?
 「邪神と戦う運命・宿命を背負わされるから、デステニィストーンという名称なのだ!」と考える人もいるかもしれない。
 しかしながら、果たしてそれは正しいだろうか?
 少なくともゲーム内ではそんな描写は全く無い。
 デステニィストーンを一つも持っていなくても邪神とは戦うことになるし、主人公らよりも長い期間デステニィストーンを所持していた人物(例えば、フラーマ)が邪神との戦いに臨むわけでもない。
 

 また、デステニィストーンによって邪神が封印されたわけなので、邪神一派としてはデステニィストーンを破壊することで邪神を復活させたいと考えるのは当然のことであろう。
 実際にそういう理由から「闇」のブラックダイアは邪神一派によって早々に破壊されている。
 故に、デステニィストーンを所持していることが邪神一派にバレたならば狙われる(邪神一派とのゴタゴタに巻き込まれる)というのは至極当然のことと言える。
 そんなある意味では当たり前な副次的効果をわざわざ「邪神と戦う運命・宿命」なんて特徴づけて「運命石(デステニィストーン)」と名付けるのだろうか?
 普通に考えたら副次的な特徴ではなく、主要な特徴に基づいて名付けられたと考えるのが妥当であろう。
(ii)いつ頃、誰に名付けられたのか?
 デステニィストーンは邪神封印戦争時にエロールによって創られたのであるが、ではその名称はいつ頃、誰によって付けられたのか?
 それに関わる貴重な証言をゲーム内で見ることができる。
 エリス「オウルがあなたをこの森に連れて来たとき、この子だけはデステニィストーンに引き寄せられることが無いようにと願っていたのですが・・・」
 ニーサ「そのデステニィストーンを持ち、世界に生きる全てのもののチャンピオンとしてサルーインを阻止するのです。」
 このように神々も「デステニィストーン」という名称を当たり前のように用いているのである。
 

 また、エロールはロマ1の物語の舞台からおよそ80年前のAS922年にハオラーン名義で「世界のデステニィストーン」という本を出版している。(大事典、シェラハの項目)
 #その本はメルビル図書館に配架されている。
 

 このようにデステニィストーンという名称は神々公認であるということから考えると、邪神封印戦争後に人々が名付けたというよりは、製作者であるエロールが(「いつ頃か」はまだ分からないけれど)自ら名付けたと考えるのが妥当であろう。
 それならば、10種の属性で特徴づけられるそれらの宝石がエレメントストーン(属性石)やマジックストーン(術法石)のような名称ではなく、デステニィストーン(運命石)と名付けられる原因となった「運命」要素のある出来事がエロールにあったはずである。
 その出来事とは一体何なのであろうか?
(2)邪神とデステニィストーンの関わり
 デステニィストーンは邪神サルーインを封印するために創られたものである。
 そこで、サルーインとの関わりの中でデステニィストーンの「運命」要素に関わる出来事があったのか?について検討してみる。
(i)エロールの意向
 これまでのロマ1論を前提とすると、邪神封印戦争のあらましは以下のようなものであったと推察される。
 新しい神々による新しい世界創りが始まった矢先に3邪神も誕生して世界を荒らし始めてしまった。
 エロールは自分を創り出したサイヴァから新しい世界の復興と管理を任されていたので(古代神話論を参照)、それを阻害する3邪神の存在を苦々しく思っていた。
 しかしながら、3邪神はチートアバターであったサイヴァの残骸から再構築されて生まれたものであったため、現在世界の管理権限を持つエロールであっても3邪神のプログラムにアクセスして制御することは不可能だったのである。
 「かつての古代神戦争のように神々同士で全面戦争をしたら世界は再び壊滅してしまうだろう。」
 「そもそもサイヴァの特質を受け継いでいる3邪神を一時的に倒すことができたとしても、いずれ再構築して復活してしまうだろう。」
 「そうだとすると、今打ち倒したとしても延々とイタチごっこを続けなければいけなくなってしまう。」
 「それならば、鎮圧・制圧して、自分の制御下に置いておいた方がいいのではないか。」
 そういった思惑から、エロールは3邪神との全面戦争は避け、3邪神の力を削ぐ作戦に徹することにしたのであった。
 

 目論み通り、エリスとアムトの二つの月の力によってデスとシェラハは弱体化させられて降伏。
 デスはエロールの要求を飲んで「死者の王」として冥府の管理を任された。
 シェラハにもおそらくエロールは何かしらの役割を・・・例えば「夜の女王」を任せようとしたが、「嫌じゃ、嫌じゃ、妾(わらわ)はそなたらとは馴れ合いとーない!」と拒否されたため、止む無く「光」のダイヤモンドによる「シェリル」化が執行されたのである。
 #現在のマルディアスの昼夜はエロールが太陽の光具合を変えることで管理していると思われる(「ちょっとした話題」の「マルディアスの太陽」を参照)。シェラハが「夜の女王」の役割を受け入れていたら、今とは違った昼夜システムになっていたであろう。

 そして、残るサルーインは二つの月の力で弱体化されながらも新しい神々らに屈服することなく腕白に暴れ続けた。
 弱体化されたとはいえまだ世界を消滅させるくらいの力をサルーインが隠し持っていることをエロールは察していたので、新しい神々の力によって迂闊に追い詰めることもできなかったのである。
 即ち、まさに世界を人質に取られたような状況だったわけである。
 #ゲーム内のラストバトルでの邪神の自爆ではイスマス一帯を崩壊させるくらいの破壊力しかなかったが(下図の水色の点程度、「エンディングの場所」を参照)、封印される前ならば世界中を崩壊させるほどの破壊力を持っていたと思われる。それほど神々の力は強大であり、それを徹底的に抑え込まれた状態だったのがラストバトルでのサルーインだったのである。
 

 「破壊衝動を制御できていないサルーインを交渉で何とかするのは不可能だろう。」
 「そして、これ以上サルーインを野放しにしておくわけにもいかない(弱体化された力でも世界を壊滅させかねない)。」
 「それならば、封印するしかない!」
 そう決断したエロールは、新しい神々の力だけではサルーインを封印することはできないと判断し、マルディアスの世界そのものの力を利用してサルーインを封印することにしたのである。
 #サルーインはチートアバターであったサイヴァの耐性を色濃く受け継いでいたので、封印するためにはそれ相応の力(世界規模の力)が必要だった。
 こうしてエロールによって創られたのがマルディアスの世界そのものの力を利用して結界を張るための媒介物となる10個の宝石・・・後にデステニィストーンと呼ばれる宝石であった。
 エロールは10個のデステニィストーンを世界中に配置して結界を張り、その中にサルーインを追い込もうとした。
 しかしながら、血気盛んながらも鋭敏な感知能力を併せ持っていたサルーインは結界の存在に気付いていたため、新しい神々に追いやられても決して結界の中に入ってしまうようなミスをすることは無かった。
 それどころか、エロールを真似して独自のデステニィストーンまで創り出す始末。
 #この頃、サルーインの狂気は配下のモンスターにまで及び始めたため、四天王ら一部のモンスターが邪神一派から離反し、エロールと手を組むことになる。(四天王論を参照)
 

 勝ち確の結界はあるのに、サルーインを追い込むことができない。
 この状況を打破してサルーインとの決着をつけるためにエロールは一計を案じ、現生人類の代表として選ばれた戦士ミルザに全てを託すことにした。
 エロールからデステニィストーンと神々の武具を貸し与えられるとともに、四天王モンスターズをお供に付けてもらったミルザは、何やかんやでサルーインを圧倒して見事にサルーインを結界の中に追いやることに成功した。
 こうして、マルディマスの世界そのものの力によって抑え込まれたサルーインは、その力をほぼほぼ完全に封じられて、イスマスの地下深くに沈められたのであった。
 以上が、デステニィストーンが創られ、それにより張られた結界にサルーインが封印されるまでのあらましである。
 このような展開を眺めてみても、エロールが「運命」要素を感じ取れたような出来事は見当たらないように思う。
(ii)サルーインの証言
 では、封印された当の本人であるサルーインは、この一件のことをどう思っているのか?
 ゲーム内のラストバトルにおいてサルーインは次のように語っている。
 「・・・やっと来たか・・・この日が・・・。この1000年の間、何度となくミルザとの戦いを思い出したぞ。私のただ一度の敗北!ゴミのような人間に神が敗れたのだ!1000年の間、この辱めに耐えてきた。だが今日でそれも終わる。お前たちを葬り去り、あの敗北がエロールの仕組んだ罠だったと証明し、この僅かな傷を拭い去って完全な復活を遂げるのだ。」(ゲーム内の台詞)
 

 この台詞の前半部からは、
 ・サルーインはミルザに敗北したことを認めている。
 ・封印されて動けないながらも1000年の間サルーインの意識ははっきりとしていて、敗北の屈辱に狂いそうになっていた。
 ということが分かる。

 しかしながら、問題は後半部である。
 ・どうしてサルーインはミルザに敗北したことを認めているのに、そのミルザとの戦いをエロールの仕組んだ罠だと思っているのか?
 ・どうして「主人公パーティーを倒すこと」が「ミルザに敗北したのはエロールの仕組んだ罠だったから」ということの証明に繋がるのか?
 この2点については真相が明らかではないであろう。
 そこで、この2点について推察を進めてみることにする。
(a)「エロールの仕組んだ罠」とは何を意味するのか?
 サルーインはミルザとの戦いの何が気に入らなかったのだろうか?
 罠だと言っているのだから、おそらくサルーインにとっては想定外のことがそこにはあったのであろう。
 想定外・・・となると、もしかしたらサルーインにとってのミルザとは「FF5におけるオメガ」のような存在だったのかもしれない。
 つまり、以下のような展開である。
 新しい神々がサルーインを結界に追い込もうとしてくるも、サルーインはそれをかわし続けることを通して「もはや自分を結界に追い込むことのできる者など誰もいない!」と慢心していた。
 そんなサルーインの前に現れたのが、自分の元配下の四天王を引き連れた人間のミルザであった。
 自分から見たら高々能力の知れている四天王に、ゴミのような人間が一人・・・新しい神々を相手にするよりも遥かに容易い。
 サルーインとしては羽虫を追い払うような気持ちであったのだろう。
 ・・・ところがである。
 デステニィストーンのドーピング効果でハンターハンターの「ゴンさん状態」に化けたミルザの圧倒的な力に完全に虚を突かれたサルーインは、為すすべなく一方的に結界に追い込まれてしまったのであった。
 ただのザコだと思ってエンカウントしてみたら圧倒的な力の前に一瞬で全滅させられた・・・というFF5のオメガの如く、サルーインはザコだと思って油断していたらミルザの圧倒的な力の前に完全敗北させられてしまったのである。
 オメガに対して完全敗北を認めた上で「これ、罠でしょ!」と言いたくなるのと同様に、サルーインはミルザに完全敗北させられたという事実を認めた上で「これ、エロールの罠でしょ!」と言いたくなったわけである。
 皆さんもサルーインの気持ちに共感できたのではないでしょうか。
 
 出典:ファイナルファンタジー5,スクウェア.

 実際のところ、エロールがミルザにサルーインを結界に追い込む任務を託したのはエロールの仕組んだ罠だったと言える。
 つまり、新しい神々では警戒されてサルーインを結界に追い込むことはどう足掻いてもできなかったので、慢心したサルーインの心の隙を突くためには人間の力に頼らざるを得なかったのである。
(b)主人公たちを倒すことがどうして罠であったことの証明になるのか?
 次に、どうして「主人公パーティーを倒すこと」が「ミルザに敗北したのはエロールの仕組んだ罠だったから」ということの証明に繋がるのか?について検討する。
 (a)で述べたように、過去のミルザとの戦いではミルザをザコだと思って油断していたために想定外のミルザの猛攻に対応できずに敗北を喫してしまったわけであるから、サルーインは1000年の間、「予めミルザが鬼強化されているということが分かっていたら油断することなく万全の準備で対応して、ミルザを返り討ちにできていたはず!」という悔恨の気持ちに苛まれていたのであろう。
 それ故に、再度自分の前に現れた人間に対して油断することなく万全の準備で返り討ちにすることができたならば、ずっと持ち続けていた「予め分かっていたら自分が負けることなど無かった!!」という仮説が正しかったことを実証的に示すことができたことになるわけである。

 では、封印されながらもサルーインが自分の前に現れる人間に対抗するために用意していた「万全の準備」とは一体何なのか?
 実はそれが「決戦の舞台効果」なのである。
 ラストバトルの決戦の舞台は邪神の心象空間であり(「ちょっとした話題」の「決戦の舞台とは?」を参照)、以下のような効果が確認されている(イベント概要「決戦!サルーイン」の「決戦の舞台効果」を参照)。
 ・決戦の地へ行くとHP全回復。
 ・6ターンまではターン終了時にHP全回復。
 ・6ターン終了時、7ターン以降のHP計算がされる。
 ・6ターンまではターン毎に背景が夜へ。
 ・7ターン以降はHP残量に応じて背景が朝へ。
 ・術法習得値が火9、水6、土9、風21、光0、闇13、邪126、気0、魔1、幻29になる。

 ゲーム内ではこれらの効果しか確認できなかったが、実は他にもサルーインが本当の目的としていた効果もあったのである。
 それは、
 ・デステニィストーンのドーピング効果(術法習得値を付与する効果)を無効にする。(「術法習得値を付与する効果」については運命石論2を参照)
 という効果である。
 つまり、過去の大戦ではミルザがデステニィストーンのドーピング効果によって鬼強化されていたために圧倒されてしまったわけなので、それさえ封じてしまえ人間などゴミ&ザコでしかないというわけである。
 

 ラストバトルにおいて決戦の舞台に主人公らを閉じ込め、主人公らが鬼強化されていないことを確認して、サルーインは決戦の舞台に自分の望んだ通りの効果が付与されていたことに満足していたことであろう。
 しかしながら、サルーインは気付いていなかったようであるが、デステニィストーンは1000年の時を経て、経年劣化により既にドーピング効果は失われてしまっていたのである。
 つまり、サルーインが決戦の舞台に意図的に仕込んでいた「デステニィストーンのドーピング効果を無効にする」という効果は全くの無駄な効果だったわけで、俗に言う「容量(メモリ)の無駄使い」というやつであった。
 従って、この無駄な効果にサルーインが容量を割いていなかったならば、ラストバトルにおいてもっと強いサルーインと戦えていたのかもしれません。
(c)邪神の完全復活
 (a)及び(b)においてサルーインの台詞の真相について言及したが、最後に「この僅かな傷を拭い去って完全な復活を遂げるのだ」という台詞の意味についても言及しておく。
 サルーインの言っている「この僅かな傷」というのは物理的な肉体へのダメージが残っていたということではなく、おそらくミルザとの敗戦で負った心の傷(屈辱感)のことであろう。
 決戦の舞台効果を発動して主人公らを返り討ちにすることによって「予め分かっていたら自分が負けることなどなかった!」ということが証明されれば、ミルザとの敗戦を合理化できたことになるので、屈辱感を払拭することができるというわけである。
 

 しかしながら、そうすることでサルーインの自尊心を完全に復活させることはできるだろうが、主人公らを返り討ちにしたからといって即座にサルーインの能力が完全復活するわけではないであろう。
 と言うのは、未だサルーインはデステニィストーンの結界に封じられた状態だからである。
 「サルーインはラストバトルで主人公らと戦えているではないか!」と思われるかもしれないが、あれも実は決戦の舞台効果の一つであり、あの空間の中だからサルーインは動くことができていただけに過ぎない。
 つまり、決戦の舞台には、
 ・空間内ではサルーインが行動することができる。
 という効果もあったわけである。
 よって、サルーインが語る展望を正しく言い直すならば、「この僅かな傷を拭い去って自尊心を回復させて、それから残りの9個のデステニィストーンを破壊して結界を消滅させて、完全な復活を遂げるのだ!」となるであろう。

 なお、それでもサルーインが本当の意味での完全復活を果たせるわけではない。
 つまり、サルーインはデステニィストーンの結界に拘束されているだけでなく、二つの月の力による弱体化も受けているからである。
 念のためにゲーム中で戦うサルーインも含めて、サルーインの弱体化具合について整理しておくと以下のようになる。
サルーインの形態 説明
本来のサルーイン ・邪神封印戦争前期に暴れ回っていたサルーイン。
 この形態が本当の意味での「完全復活」である。
弱体化させられたサルーイン ・二つの月の力で能力を抑制されたサルーイン。
 デステニィストーンの結界から解き放たれたときに移行する形態である。
結界に封印されたサルーイン ・運命石の結界の力で拘束されて、さらに能力を抑制されたサルーイン。
 ラストダンジョンの最奥から動けない状態であり、能力値自体はイベント概要「決戦!サルーイン」の「真サルーイン」で指摘しているものである。
決戦の舞台のサルーイン ・結界の力で拘束されて動けない状態で主人公らを迎え撃つために、自分が動くことのできる心象空間を展開したサルーイン・・・つまり、ラストバトルで戦うサルーインである。
 空間に特殊な効果を付与するための代償として、戦闘能力は更に制限されてしまっている。

 上記のようにゲーム内のラストバトルで戦うサルーインは本来の力から3段階も弱体化を強いられた状態なのである。
 そういう事情も知らないで、「細腕だ!」「虚弱だ!」「攻撃方法がしょぼい!」等の暴言を吐くのは邪神様に対して失礼でしょう。
(iii)現生人類が選ばれた理由
 邪神とデステニィストーンの話に関わって、「どうしてエロールは邪神を結界に追い込む役目を現生人類に任せたのか?」という疑問についても言及しておく。
 この問いだけ聞くと、「その真相については(ii)の(a)において『慢心したサルーインの心の隙を突くためには人間の力に頼らざるを得なかった』と答えているではないか!」と思われるかもしれない。
 しかしながら、今論点としているのはそういうことではなく、「どうして巨人族ではなく現生人類が選ばれたのか?」ということである。
 巨人族のほうが神々からの被害を被ってきた歴史は現生人類よりも長いし、能力も巨人族のほうが現生人類よりも高いし、世界の復興のためにエロールに協力してきたという実績もある。
 それにもかかわらず、エロールが巨人族ではなく現生人類に誉ある邪神討伐の任務を託してしまったために、それを不満に思った巨人族がエロールらと決別することになり、それがゲーム内において巨人の里の巨人たちが現生人類に対して非協力的な態度をとる原因にもなっているのである。(クローディア去就論を参照)
 

 では、どうしてエロールは邪神を結界に追い込む役目を巨人に任せなかったのか?
 「この作戦は『慢心したサルーインの心の隙を突くため』なのだから、強い巨人族よりも脆弱な現生人類の方が適切だったからではないか?」と思われるかもしれない。
 確かに、現生人類よりも巨人族の方が強いのは事実であろうが、おそらく神々から見たらそんな力の差は微々たるもので、大した違いではないと思われる(それほど、神々の力は別格なのである)。
 #物理的な大きさで見ると、現生人類の身長が約1.7m、巨人族の身長が約3.5mなのに対してサルーインの身長は10m越えなので(モンスター論を参照)、サルーインから見たら現生人類も巨人族もペット程度の大きさでしかない。
 従って、現生人類のほうがより弱いから選ばれたというわけではないと思われる。
 
 #大まかな大きさの比較(サルーイン、巨人族、四天王、現生人類)。

 では、どうして現生人類が選ばれたのかと言うと、おそらく現生人類しかデステニィストーンのドーピング効果(術法習得値を付与する効果)を引き出すことができなかったからであろう。
 つまり、現生人類とデステニィストーンはどちらもエロールに創られたものであるため「対応していた」のであるが、一方で巨人族は古代神時代に創られた旧人類であるため、エロールの力では旧人類に「対応する」ものを創ることができなかったのである。
 例えるならば、新しい周辺機器やアプリケーションが古いパソコンに対応していなくて使えないようなものである。
 エロールは巨人族の気持ちは分かっていたものの、巨人族に対応したデステニィストーンを創ることができなかったために、やむを得ず現生人類に任せることにしたのであった。

 以上のように、邪神とデステニィストーンの関わりについて検討してみたが、そのエピソードの中にもエロールが「運命」要素を感じ取れるような出来事があったようには見えないだろう。
(3)デステニィストーンの真相
(i)エリスの証言
 実のところ、ゲーム内においてデステニィストーンの真相について最も言及していると思われるのはシルベンの正体である銀の月の女神エリスである。
 エリスは、エリスのシンボルを求めて迷いの森に帰って来たクローディアに対して次のように語っている。
 「クローディア・・・やはりあなたの道はここへ続いていたのですね。オウルがあなたをこの森に連れて来たとき、この子だけはデステニィストーンに引き寄せられることが無いようにと願っていたのですが・・・。」(ゲーム内の台詞)
 「私はあなたがこの森で一生穏やかに暮らしていければと望んでいました・・・。しかし デステニィストーンはあなたの運命も引き寄せて、絡み合わせていくようです・・・。」(ゲーム内の台詞)
 

 ・・・デステニィストーンに引き寄せられる?
 ・・・デステニィストーンはあなたの運命も引き寄せて、絡み合わせていく?
 エリスの語っているこれらの言葉は一体どういうことを意味しているのだろうか。
 少なくともこのエリスの言葉からは、デステニィストーンを所持することで所持者の運命に影響を与える効果が発動するわけでなく、デステニィストーンの存在自体が特定の人物の意思に関係なくその人物を引き寄せて、その人物の運命に干渉する効果を持っているということが分かる。
 クローディアについて言えば、皇帝の奇病を治療するために「気」のムーンストーンが必要になり、それを入手するために「エリスのシンボル」が必要になったために迷いの森に帰ってきた際にこの台詞をエリスが語っているわけなので、クローディアは「気」のムーンストーンに引き寄せられたとエリスに見なされているわけである。

 では、エリスの言う「あなたの運命も引き寄せて、絡み合わせていった」結果の「あなたの道はここへ続いていた」とは、どういう運命に続いていたということを意味するのか?
 
 それはおそらく「邪神討伐の運命のことではない」であろう。
 クローディアは皇帝の奇病を治療するためにムーンストーンが必要になったのだから。
 つまり、ムーンストーンが必要になることで実現しうることはクローディアと皇帝(クローディアの実父)の再会なのだから、エリスが嘆いていた「あなたの道はここへ続いていた」とは「逃れたはずの皇位継承問題のゴタゴタに再度巻き込まれてしまう」という運命のことなのであろう。
 暗殺の危機に常に曝される皇位継承問題からクローディアが逃れられないことをエリスは悟ったので「私はあなたがこの森で一生穏やかに暮らしていければと望んでいました・・・。」と願いが叶わなかったことを嘆いたわけである。

 そして、エリスはデステニィストーンについてのさらなる核心的な発言をしている。
 「・・・ああ、やはりエロールはあんな物を創るべきではなかったわ!クローディア、あなたにこのシンボルを授けますが、あなたがデステニィストーンのくびき(束縛)から逃れ、その生を全うすることを祈ります。」(ゲーム内の台詞)
 
 なんと、エリスはエロールがデステニィストーンを創ったこと自体を否定しているのである。
 世界を壊滅させかねないサルーインを封印する必要があることについてはエリスも同じ気持ちであっただろうが、エロールが用いた封印の方法については誤りだったとエリスは断じているのである。

 これらのエリスの台詞からデステニィストーンの真相について推察してみた。
 (2)(i)で述べたように、エロールは新しい神々の力だけではサルーインを封印することはできないと判断して、マルディアスの世界そのものの力を利用してサルーインを封印することにした。
 こうしてエロールによって創られたのが10個のデステニィストーンであった。
 ・・・デステニィストーンはマルディアスの世界そのものの力を利用するための道具であり、凝縮した属性の力を宝石に込めることで作られた。
 #例えば、大事典には「火のルビーは、凝縮した火の力を炎のように赤いルビーに封じ込めた宝石である。」と説明されている。
 ・・・属性の力が凝縮するとは、一ヵ所に属性のエネルギーが密集するということ。
 ・・・密集して大きなエネルギーが生じるということは、世界のエネルギーのバランスに偏りが生じるということ。
 その結果、強大な10個のエネルギーの偏りはマルディアスの世界に「歪み」を生じさせてしまったのである。
 それは世界の管理者であるエロールですら関与することのできない、言わば「マルディアスの世界に生じたバグ」であった。
 #上記で言っている「歪み」とは物理的・空間的な歪みではなく、世界シミュレーションのプログラム上の歪みである。

 具体的に何が起こったのかと言うと、古代神時代のシナリオ(脚本)の断片がマルディアスに生きる者たちに作用するようになってしまったのである。
 古代神話論で述べたように、マルディアスは別次元の存在(古代神)によって創られたシミュレーションの世界である。
 おそらく古代神たちがシミュレーションの世界で遊んでいた頃には、定期的にマルディアス内で発生するイベントもあったであろう。
 そういった過去の使用済みのイベントであったり、没で未使用のイベントであったりが、マルディアスのプログラム上にはまだ残存していて、それらは本来ならばその後にアクセスされることなく埋もれ続けるはずだったが、デステニィストーンによって生じたバグによって、それらのイベントのシナリオ(脚本)が断片的に発生するようになってしまったのである。
 例えば、クローディアならば「皇位継承問題」のシナリオの皇女役に勝手にキャスティングされてしまっていたわけである。
 
 そのシナリオの強制力は強く、新しい神々や世界の管理者であるエロールの力を持ってしてもキャスティングされた人物をそのシナリオから降板させることはできなかった。
 当然、キャスティングされた人物の個人の意思でどうこうできるものでもなかった。
 #エリスが「デステニィストーンのくびき(束縛)から逃れ~」と言っているので、偶発的な降板はありえるかもしれない。

 エロールがデステニィストーンを創ったときに、エロールの未来視にはミルザが勇敢に邪神と戦う一連のエピソードが映っていた。
 ところが、エロールはそのビジョンにデジャブ(既視感)を感じた。
 つまり、エロールはサイヴァからマルディアスの管理を任された際に古代神時代の記録も引き継いでいたので、そのビジョンが古代神時代のイベントと全く同じ展開であることに気付いたのである。
 エロールはさらに様々なマルディアスの人物について未来視することで確信した。
 「やっばー・・・やっちまった・・・創った10個の宝石の影響で人々の運命に昔のイベントが干渉してしまっている・・・。」

 顔面蒼白のエロールを見て問い詰めてきた愛娘のエリスにエロールは全てを白状した。
 「そんなものを創るから!パパのバカ!」
 愛娘に罵られて泣きっ面に蜂状態のエロールはしょんぼりしながら呟いた。
 「・・・この10個の宝石・・・運命に干渉するから・・・デステニィストーンと呼ぶことにしよう・・・」
 こうした経緯により、エロールによって「デステニィストーン」と名付けられたのであった。
 以上のように、本稿では、デステニィストーンを創ったことで古代神時代のシナリオ(脚本)の断片がマルディアスに生きる者たちの運命に干渉するようになってしまったために「デステニィストーン」を名付けられたのだと推察する。
 肝心なことは、デステニィストーンを所持しているかどうかは関係なく、デステニィストーンが存在すること自体が運命への干渉効果を発生させ続けているということである。
(ii)キャスティングされた人々の一例
 エリスの見解によれば、デステニィストーンの運命干渉効果によってクローディアは「皇位継承問題」のシナリオの皇女役としてキャスティングされているようである。
 では、運命干渉効果によって逃れられない運命に巻き込まれている人物は他に誰かいるのだろうか?
(a)再会できないディアナとアルベルト
 顕著なのは、ディアナとアルベルトの姉弟であろう。
 クローディア去就論において、弟捜索の旅に出たディアナがアルベルトと再会できずに「あの子が生きていると耳にしてから世界中を探して歩いたのに、いつもすれ違いで・・・」(ゲーム内の台詞)となってしまったのは、たまたま運が悪かったとか、神のいたずらとかそういうものではなく、ナイトハルトの命令によりバラ騎士隊によって意図的に二人が再会できないようにされていたからであると述べた。
 このディアナとアルベルトが再会したくても再会できないという現象は、まさに「再会できない姉弟」のシナリオの姉役にディアナ、弟役にアルベルトがキャスティングされてしまった結果なのである。
 二人が再会を望んでも抗えない大きな運命の力(プログラムの力)が働いて再会できない。
 ナイトハルトは自分の意思により意図的に二人を再会させないようにしたのであるが、そのナイトハルトの意思決定さえもデステニィストーンの運命干渉効果の影響を受けたものだったのである。
 つまり、デステニィストーンの運命干渉効果は、シナリオに沿って物語が進行するようにマルディアスに生きる者たちの意思決定にも影響を与えてしまうのである。
 

 古代神時代の「再会できない姉弟」のシナリオは本来ならば再会してハッピーエンドだったかもしれない。
 しかしながら、ディアナとアルベルトが巻き込まれているのは、バグでアクセスしてしまったそのシナリオの断片である。
 故に、アルベルトが主人公の場合、邪神を討伐して、エンディングでアルベルトの生存を確認してロマ1の物語は終わるので、その後の展開としは誰もがディアナとアルベルトの再会を思い描くであろうが、もしかしたら運命干渉効果により永遠に再会できないという可能性もあるのである。
(b)譲渡されたバーバラ
 バーバラの固有イベントである「『幻』のアメジスト」では、エロールの化身ハオラーンからバーバラに踊りの報酬として「幻」のアメジストが譲渡される。
 世の中にはこのハオラーンの行為を「意図的に邪神との戦いに巻き込む卑劣な行為」と捉えている人もいるようであるが、本稿における見解はそうではない。
 おそらくエロールはバーバラを見た時に、バーバラが運命干渉効果によってキャスティングされてしまっている兆候を感じたのではないだろうか。
 それは決して「邪神との戦い」のような規模の大きなイベントではなく、おそらく旅芸人だからこそのイベントだったのではないかと思われる。
 

 例えば、旅芸人の踊り子が旅先で芸を披露していたところ、その美麗さが噂となり王宮に招聘されることになった。
 ところが、その招聘の目的は王宮の女帝が永遠の美を求めるためのもので、踊り子には怪しい術がかけられて・・・悲惨な最期を遂げてしまう。
 そんなイベントが古代神時代にあったのかもしれない。

 自分がデステニィストーンを創ったせいで、この踊り子は悲惨な最期を迎えてしまうかもしれない。
 そう思ったエロールは「自身が最も安全な場所に隠していた」(大事典)おかげで未だに「幻」耐性と「即死」耐性の健在だったアメジスト(運命石論2を参照)をバーバラに譲り渡したのである。
 アメジストで怪しい術を防ぐことができたのならば、きっと違う結末を迎えられるはずだと!

 なお、バーバラが「永遠の美を求める女帝」のシナリオに本当にキャスティングされていたかどうかは定かではないが、実際にキャスティングされていたとしても今回はシナリオの断片だったが故にイベントが進行することなく終わってしまったようである。
 それ故に、怪しい術を使用する「永遠の美を求める女帝」役のマハラジャクイーン(そして、その配下の魔法使い、魔法使い2)がロマ1のゲーム内では未使用になってしまっているのであろう。
■A4:マハラジャクイーン
HP
703/709 26 26 26 26 26 26 26 0 26 4 - - -
- - - - - - - - - - - - - - - -
装備:なし
火:20/20/15(ファイアボール、セルフバーニング)
風:20/20/15(エレメンタル、ウインドバリア)
闇:20/20/15(ブラックファイア、ホラー、ダークネス)
邪:20/20/15(イーブルスピリット、アゴニィ、ポイズンガス)
魔:20/0/15(スペルエンハンス、マジックヒール、エナジーボルト)
 #闇術・邪術の習得により肉体の崩壊が進行しているため、美しい女性から「美」を奪って自身の美しさを蘇らせようとしていた。
(c)グレイへの言葉
 ゲーム内においてエロールと主人公の一人グレイとの間に何か特別なやり取りがあるわけではない。
 それにもかかわらず、グレイのエンディングではエロールが「・・・グレイよ、本当に見ていたよ。君のすばらしい戦いを!!」(ゲーム内の台詞)と呟くのである。
 これはなぜだろうか?
 もしかしたら、「邪神討伐」のシナリオに「邪神と戦う者」役としてキャスティングされているとエロールに見立てられていたのがグレイだったということなのかもしれない。
 

 以上のように、運命干渉効果によってキャスティングされている可能性のある人物たちを挙げてみた。
 他の登場人物たちも少なからず運命干渉効果の影響を受けていると思われるが、本稿での言及はここまでにしておく。
(iii)ニーサの啓示
 最後に、砂漠の地下で聞くことのできるニーサの台詞についても触れておく。
 「我が子らよ・・・サルーインが帰ってきます。それを止めることができなければ、世界は再び破滅の危機を迎えます。そのデステニィストーンを持ち、世界に生きる全てのもののチャンピオンとしてサルーインを阻止するのです。あなたにできなければ、できる人を探しなさい。」(ゲーム内の台詞)

 デステニィストーンの存在に否定的だったエリスに対して、デステニィストーンが邪神討伐に必要なものであるかのように語るニーサ。
 ところが、ニーサが勧めてくる「土」のトパーズは、地底人に認めてもらって大地の剣、さらにはガーラルシューズを入手できるという邪神討伐に関しての間接的なメリットはあるものの、経年劣化により耐性効果等は失われているので邪神討伐に関しての直接的なメリットは皆無である。
 さて、ニーサはどうしてデステニィストーンが邪神討伐に関してさも必要なものであるように語ったのであろうか?
 

 この問いの答えは、おそらくニーサはデステニィストーンが経年劣化により効果が失われてしまっていることも、運命干渉効果があることも知らなかっただけである。
 古代神話論で述べたように、ニーサは古代神・・・即ち、他の仲間たちがサイヴァに強制的に引退させられた後もマルディアスに干渉している唯一の外の世界の人であり、現在はマルディアスの環境整備・保守といったメンテナンスをしながらマルディアスを見守っているだけなのだと思われる。
 当然、ずっとマルディアスの出来事を見ているわけではないので、部分的に見た邪神封印戦争時のエピソードからデステニィストーンが邪神討伐に必要なものだと思い込んでいたわけである。
 故に、冒険者たちがニーサの祭壇に訪れた際には、ノリノリでデステニィストーンを託す神の啓示をしたのであろう。
(4)補足:デステニィストーンは互いを呼び合う?
 余談であるが、WSC版についても触れておく。
 世の中にはWSC版を「ロマ1の完全版だ!」と言ってありがたがっている人たちがいるようであるが、私(虎の巣管理者)としては「いかがなものか?」と思っている。
 私がそのように思う最たる理由は「SFC版では入手できなかったデステニィストーンの『光』のダイヤモンドと『魔』のエメラルドが入手できる」というWSC版の追加要素にある。

 まず、SFC版においてデステニィストーンを全て集められないということについては、後年に河津氏が「ロマサガでは全部集めることができなかったディスティニーストーン。これは、バグとか容量が足りなかったとかではなくて、最初からの予定どおりでした。全部集まると、集めるのが正解になってしまいます。それが嫌だったのです。集めても集めなくても良い、を明確にする為に全部集めを放棄しました。」(2014年7月5日)と語っているように、「入手できない」というところに開発者の信念・こだわりがあり、その結果として生じた「入手できない」からこその魅力・美があった。
 それにもかかわらず、入手できるようにしてしまったということは、私からしたら開発者側がロマ1への信念・こだわりを捨てて「揃ったほうが嬉しいんだろ?」とファンに媚びたようにしか見えないのである。
 ・・・しかしながら、この指摘はあくまで私の個人的な心情の話であって本題ではない。

 本題であるWSC版追加要素で私が最も問題だと思っている点は「光」のダイヤモンドを入手する際のシェリルの台詞にある。
 具体的に指摘すると、シェリルは次のように語るのである。
 「デステニィストーンは互いを呼び合います。」(ゲーム内の台詞)
 

 皆さんはこの台詞についてどう思いますか?
 明らかにおかしいことにお気づきでしょうか。
 ゲーム内での出来事や、関連文献を見てみても、過去にデステニィストーン同士が引かれ合っていたというような描写は皆無である。
 #運命干渉効果によりデステニィストーンが人や運命を引き寄せる描写はあるが、デステニィストーンを所持していることが原因でさらなるデステニィストーンの入手に繋がるという描写は無い。
 また、この台詞はダイヤモンドの指輪を外してシェラハの記憶を取り戻した状態で話している内容なのだから、邪神封印戦争以降にはそういう出来事が無かったかもしれないが邪神封印戦争時にそういう出来事があったのかもしれない・・・と考えてみても、デステニィストーンが創られた時点では既にシェラハは降参していて、邪神の封印を見届けた後まもなくしてダイヤモンドの指輪で記憶も封じられているわけなので、その間にデステニィストーンが呼び合う(引き合う)ような出来事があったとは到底考えられない。

 つまり、シェリルがこの台詞を語ることのできる理由を説明することができないのである。
 それ故に、この「互いを呼び合う」という設定は原作の設定との整合性を無視した後付け設定であり、私からしたら開発者側が原作の設定との整合性を考えることなく「『スタンド使いは引かれ合う』みたいで格好いいだろ?(こういうのが好きなんだろ?)」というファンへの媚びで作られた設定にしか見えないのである。

 ロマ1は不思議な魅力を持ったゲームであり、その魅力にはロマ1の深みのある世界感設定も間違いなく影響していると思う。
 その世界観設定を滅茶苦茶にする追加要素が加わったWSC版は果たして本当に「完全版」と呼べるものなのでしょうか?

 #なお、シェリルは「光」のダイヤモンドにより力と記憶を奪われて人間化していたのに、どうして「ブラックダイアが既に失われていること」や「エメラルドは現在ウェイ=クビンが所持していること」を知っているのか?という点も気になるが、追手のミニオンがペラペラと喋ったとか、シェラハの記憶が戻ると同時に世界中を感知できる能力が戻って、それにより現状把握をすることができたとかいろいろ考えられうるので、この点については本稿では不問としておく。
 

2.エロールの言動の真相

 第1章ではデステニィストーンの真相・・・実は運命干渉効果を持っていたということについて言及した。
 第2章では、そのデステニィストーンの真相を踏まえて、エロールの言動の理由について推察する。
(1)エロールの言動についての疑問
 最終試練において「何で自分で戦わないんだ?」(ゲーム内の台詞)と主人公らに問われたエロールは次のように心境を吐露している。
 「かつて神同士の戦いがあった。その時、この世界は一度死んだ。それほど神の力は激しいのだ。私は二度とこの世界を死なせたくない。さらに、人は自分の運命を自分で決める権利がある。サルーインの為すがまま滅び去るか、それともサルーインに立ち向かうか、自分たちで選ぶがいい。」(ゲーム内の台詞)
 

 「かつて神同士の戦いがあった。その時、この世界は一度死んだ。」
 ・・・世界が死んだと言っているので、これは邪神封印戦争ではなく、古代神戦争のことを指しているのであろう。
 「それほど神の力は激しいのだ。私は二度とこの世界を死なせたくない。」
 ・・・エロールの世界を守りたいという気持ちが伝わってくる。
 この気持ちがあったから、邪神封印戦争の際には世界を壊滅させないような戦い方で邪神を封印したわけである。
 ここまでの台詞については納得であるが、問題は残りの部分である。
 即ち「さらに、人は自分の運命を自分で決める権利がある。サルーインの為すがまま滅び去るか、それともサルーインに立ち向かうか、自分たちで選ぶがいい。」という台詞である。

 エロールは邪神の復活の兆しを感知していて、邪神の復活が世界の壊滅に繋がることも分かっていた。
 #邪神を野放しにしても壊滅するし、新しい神々が応戦しても壊滅する。
 エロールは世界を守りたいと思っているのだから、それならばそもそも邪神を復活させなければいいだけの話である。
 デステニィストーンの経年劣化によって結界の力が弱まって封印が解けそうになっているのだから、結界を補強するなり何なりで封印が解けないようにすればいいだけの話ではないだろうか。
 それにもかかわらず、どうしてエロールは、邪神一派が活動を開始し、デステニィストーンの一つ「闇」のブラックダイアが破壊されても傍観をし続け、挙句の果てには「人は自分の運命を自分で決める権利がある」と言い出してしまったのだろうか?
 これらの言動からすると、「私は二度とこの世界を死なせたくない」というエロールの発言の本気度を疑いたくなってしまうのである。

 そこで、本章では「どうしてエロールは邪神の復活を阻止することなく、人間に命運を託しているのか?」というエロールの言動の真相に迫ってみる。
(2)エロールの真意
(i)結界を補強することはできないのか?
 結界の力が弱まって邪神が復活しそうになっているのだから、結界を補強することで再度抑え込むことはできないのだろうか?
 結界を張るための媒介物であるデステニィストーンはエロールの創ったものなのだから、再度それらを創ることができないわけでもないと思うのだが。
 もしかしたら、デステニィストーンを再度創ることのできない理由でもあるのだろうか?

 (a)パワーバランスが崩れてしまう?
 部品が壊れたのならば、その部品を修理するか、交換してしまえばいい。
 ということで、劣化したデステニィストーンの代替となる新しいデステニィストーンを創ればいい。
 しかし、それを行おうとすると一時的にではあるが同属性のデステニィストーンが世界に同時に2つ存在してしまうことになる。
 「エロールがわざわざ邪や闇のデステニィストーンを作りだしたのは、全ての属性のパワーバランスを保つため」(大事典)という説明も考慮すると、同属性のデステニィストーンが世界に同時に2つ存在するということもパワーバランスを崩すことに繋がりかねないのかもしれない。
 しかしながら、ロマ1の物語の舞台においては既に「闇」のブラックダイアが破壊されていてパワーバランスが崩れているはずなのにも関わらず、エロールは「闇」のブラックダイアを創り直すなり何なりのパワーバランスを保つための対応をしているようには見えない。
 従って、パワーバランス的なことが原因でデステニィストーンを創り直さないわけではないのかもしれない。
 

 (b)副作用を恐れている?
 1.(3)で述べたように、デステニィストーンを創った際にエロールも想定していなかった運命干渉効果が発動してしまった。
 この効果は言わば「シミュレーション世界上のバグ」であり、現在のマルディアスの管理者であるエロールであっても制御できるものでは無かった。
 それ故に、新たなデステニィストーンを創ることで邪神の復活を阻止することはできるであろうが、その一方で副作用として意図せぬバグが生じてしまう可能性は高い。
 その副作用が邪神復活以上の脅威になる可能性も無いわけでは無いので、エロールはそういう事態を回避するためにデステニィストーンを再度創ることをしなかったのかもしれない。

 しかしながら、それならばデステニィストーンに頼らない別の方法で邪神の復活を阻止しようとすることはできたのではないだろうか。
 エリスが「やはりエロールはあんな物を創るべきではなかったわ!」(ゲーム内の台詞)と嘆いているくらいだから、邪神を封印するための方法の別案はあっただろうし。
 それにもかかわらず、エロールがそういう行動をしていないということは、このままだと邪神の復活を阻止することは「できない」という結論に達したからやっていないのではなくて、そもそも「やろうとしていない」からやっていないのだと思われるのである。
 それならば、「どうしてエロールは邪神復活の阻止を『やろうともしていない』のか?」ということが新たな問いとなる。
 
(ii)エロールの心境の変化
 エロールは邪神封印戦争の際にはミルザに力を託し、1000年後の現在では主人公らに力を貸している。
 どちらもエロールから人間に力が貸与されているのであるが、その際のエロールからの要求内容は双方で明らかに異なっている。
 つまり、ミルザに対しては明確に「邪神を結界に追い込む」という使命を与えているのに対して、主人公らに対しては「人は自分の運命を自分で決める権利がある。サルーインの為すがまま滅び去るか、それともサルーインに立ち向かうか、自分たちで選ぶがいい。」(ゲーム内の台詞)と邪神への対応を完全に丸投げしているのである。
 これは即ち、邪神封印戦争時と1000年後の現在でエロールの心境に変化が生じているということではないだろうか。
 それならば、邪神封印戦争から現在までの間にエロールの心境を変化させるような何かしらの出来事があったということになる。
 そこで、邪神封印戦争時から現在までに繋がるエロールの心境の変化について以下のように推察してみた。
(a)想定外の事態
 古代神話論で述べたように、エロールは「サイヴァがプログラムして作ったマルディアス自動管理システム」である。
 そして、その目的は「かつてサイヴァが楽しんでいたような平安(平和・平穏)なマルディアスを復興し、それを維持する」ことであったため、邪神封印戦争においては古代神戦争のときのような悲劇を繰り返さないように配慮をして3邪神に対応したのである。

 邪神封印戦争後、マルディアスの世界は現生人類の力によって徐々に復興・発展していった。
 最初のうちは世界が復興・発展する様子を満足気に眺めていたエロールであったが、何百年か時間が経過してくると次第にその表情が曇り始めた。
 ・・・人間たちが・・・争いを始めたのである。
 大規模なもので言えば、
  ・バファル帝国によるサンゴ海周辺諸島への侵略行動。(シルバー論を参照)
  ・バファル帝国からのローザリア王国独立戦争。(基礎知識編)
  (・クジャラートによるローザリア王国侵略戦争。(基礎知識編))
  (・クジャラートによる騎士団領侵略戦争。(基礎知識編))
 等があり、小規模なもので言えば、
  ・私利私欲のための強奪や殺人(海賊や強盗、暗殺者や反社会的テロリスト等の跋扈(ばっこ))。
 である。

 それはエロールが思い描いていた目指すべきマルディアスの姿では無かった。
 つまり、エロールが目指していたのは「かつてサイヴァが楽しんでいたような平安(平和・平穏)なマルディアスを復興し、それを維持する」ことであり、「かつてサイヴァが楽しんでいたようなマルディアス」とは古代神話論でも述べているように「どうぶつの森」のような争いの無い世界・・・即ち、平安(平和・平穏)な世界なのである。
 
 出典:あつまれ どうぶつの森,任天堂.

 「・・・どうして、こうなってしまったのだ?」
 エロールは思いがけない事態に対して疑問に思った。
 平安な世界を築くことが目的だったから、その世界の住民となる現生人類を作る際には「争いの心を持たないように創った」はずだったのである。
 しかしながら、実際には現生人類は争いを繰り返す・・・。

 この異常事態の原因として思い当たることは一つしかなかった。
 デステニィストーンの運命干渉効果である。
 古代神時代の争いの記憶が、本来争いの心を持たないように創ったはずの現生人類に伝播してしまったのである。
 先に述べたようにデステニィストーンの運命干渉効果は世界の管理者であるエロールであっても対処できないものであったため、「もはや自分の目指した平安な世界を実現することはできない・・・。」とエロールはただただ落胆することしかできなかった。
(b)エロールの決断
 自分の思い描いていた姿から逸脱してしまったマルディアスを眺めながら、エロールは「このままでいいのか?」と思い悩んでいた。
 「いっそのこと一度リセットして、理想の世界をもう一度最初から創り直したほうがいいのではないか?」
 「しかし、そうすると今マルディアスに生きている者たちの命を自分の手で奪うことになってしまう・・・。」
 平安な世界とマルディアスに生きている者たちの命・・・それらはどちらもエロールにとっては大切なものであったため、どちらを優先したらよいのかエロールは葛藤し、決めかねていた。

 そんな時(ロマ1の物語の舞台からおよそ100年前、AS900頃)、デステニィストーンの力が経年劣化により衰えてきて、邪神を封印している結界の力も弱まってきていることをエロールは感知した。
 「サルーインがいずれ復活してしまう。このままではいけない!!何とかしないと!!」
 エロールは世界の管理者として当然そう思った。
 しかしながら、世界の現状を憂いていたが故に・・・別の思いも抱いてしまったのである。
 「自分でリセットしなくても、サルーインが壊滅させてくれるのならば・・・それもありかもしれない・・・。」

 エロールは世界を創り直すかどうかを自分では決めかねていたが故に、迫った邪神の復活を利用して成り行きに任せて、その結果によって今の世界の行く末を決定することにしたのである。
 サルーインが復活して世界が滅ぼされてしまったのならば、それが今の世界の運命だったということであり、その際は一から世界を創り直せばいい。
 逆に、人間たちがサルーインに対抗して世界を守ったのならば、その際は未来を切り開いた人間たちの可能性を信じて、今の世界の行く末を見守ることにしよう!と。
 そのように決断したために、エロールはサルーインへの対応を全て人間に任せることにしたのであった。
 

 人間の対応次第で今の世界はまもなく終わりを迎えることになるかもしれないので、人間には積極的に動いてもらいたい。
 そう考えたエロールは「世界のデステニィストーン」をロマ1の物語の舞台のおよそ80年前(AS922年)に執筆したり(大事典)、「『光』のダイヤモンドが戦争で失われてしまった~♪」と歌ったりして(徹底攻略編)人間たちにサルーインの復活の兆候を伝えようとしてきたようである。
 しかし、そういったデステニィストーンについての逸話は、残念ながらほとんどの人にとってはお伽噺(創作物語)程度にしか捉えられていなかったようである。
 エロールの思うように積極的に動いてくれる人間はなかなか現れなかったが、満を持して「世界を救う素質がある!」と認めることのできる人物が現れた際には「人は自分の運命を自分で決める権利がある。サルーインの為すがまま滅び去るか、それともサルーインに立ち向かうか、自分たちで選ぶがいい。」(ゲーム内の台詞)と世界の命運を託すことをダイレクトに伝えたのであった。
 
(c)シェラハへの対応
 今の世界の行く末を「成り行きに任せた結果次第」で決定することにしたエロールであったが、その際のルールはあくまで「人間がサルーインに対応した結果次第」に限定していたようである。
 つまり、デスとシェラハも巻き込んで「人間が3邪神に対応した結果次第」とはしなかったということである。
 これは「現在の人間たちが争うようになったのはデステニィストーンの副作用が原因なのだから、デステニィストーンが創られた以降の人間の存在価値が問われるべきなので、デステニィストーンを創る以前に制圧できていたデスとシェラハは除外して、デステニィストーンを創った以降に関わっているサルーインと人間たちだけで決着をつけさせることにしよう!」というエロールの考えに基づいてのものだった。

 デスについては既に話がついているので問題は無かったが、シェラハの存在はエロールにとっての懸念点であった。
 現在は「シェリル」化によって力と記憶が封じられているものの、このタイミングで復活されてはエロールが世界の行く末を見守る際の邪魔になりかねない(「お前の出る幕ではない!」)。
 そうした理由から、エロールはサルーインの復活を阻止するような行動は一切しなかったものの、シェラハの復活を阻止するために以下のような行動はしていたようである。
 ・「世界のデステニィストーン」において「光」のダイヤモンドの所在は「?」にした。
 ・「『光』のダイヤモンドが戦争で失われてしまった~♪」と歌って、既にダイヤモンドは粉砕されているという誤情報を流した。
 ・撹乱用のシェリルを創り出した。
 

 最後の撹乱用のシェリルというのは、シェリルは過去にミニオン(ヒポクリシー)に追われたことがあったため(ミニオン論5を参照)、邪神一派からシェリルへの接触防止を意図してエロールが創り出したものである。
 シェリルはクリスタルシティとノースポイントのパブで働いているのであるが、出現フラグは特に設定されていないのでどちらでもいつでも出現する。
 どちらでもいつでも会えるという現象はシェリルがクリスタルシティやノースポイントを定期的に行き来しているという演出であろうが、実際には毎回冒険者が来訪するタイミングでシェリルが先回りして出迎えていることになってしまっているので極めて不自然である。
 #パブにいるシェリルについて大事典では「何者かから逃げるように店に入って来た」、「彼女は何日か店に通っているうちに、店でしばらく働きたいと言い出した」、「8~9日おきに店に来て働いているらしい」と説明されている。
 しかしながら、一方が本物のシェリルで、もう一方が撹乱用のシェリルと見れば、何も問題は無いことになるのである。
 
(d)補足:複数人のハオラーン
 ディアナ論において世界各地にディアナが複数人同時に存在している理由について述べ、(c)においてシェリルが世界に同時に2人存在している理由について述べた。
 ついでなので、残りの一人・・・吟遊詩人ハオラーンが世界各地に複数人同時に存在している理由についても言及しておく。

 ハオラーンの出現場所は、ウエストエンド、南エスタミル、アルツール、ウロ、ブルエーレ、そして最終試練の6ヶ所である。
 ハオラーンは現在の世界の管理者であるエロールの化身なのだから瞬間移動でも何でもできると思われるが、「美しい青年であるとも、醜い老人であるとも言われている。」(基礎知識編)という記述を考慮すると、おそらく世界各地で見られるハオラーンたちは全員別々に存在しているのだと思われる。
 つまり、これらの詩人はハオラーンA、ハオラーンB、ハオラーンC、・・・のように別個体で世界に同時に存在しているのである。
 最近の例で言うならば、ワンピースの天才科学者ベガパンクのようなもので、本体(エロール)がいて、その分身であるサテライトたち(ハオラーンたち)が同時に存在していて、それら全てが意識を共有できているという存在なのであろう。
 
 #太陽神エロールとその化身ハオラーンズ。
(3)もう一つの可能性
 本章の結論は(2)で述べた通りである。
 しかしながら、「もしかしたら」の話として、もう一つの可能性についても述べておく。
 本稿の議論及びこれまでのロマ1論の議論は、ロマ1のゲーム内の事象や関連文献の記述を前提として行われている。
 即ち、それらの前提を「真」(正しいもの)として議論を積み上げてきている。
 逆に言えば、その前提が「偽」(正しくない)だったならば、これまでの議論は全て崩壊することになる。

 大事典のエロールについての説明には次のような記述がある。
 「エロール教の提唱者は、ハオラーンという吟遊詩人。」
 「AS15年に作られた教義の内容は、『光の神エロールを中心とした精神家族を形成して、美しい倫理観と価値観を確立、恒久の平和世界の復興に努める』というもの。」
 ・・・このように邪神封印戦争後のマルディアスの正義の指針はエロールの化身ハオラーンが創ったと書いてあるのである。
 つまり、マルディアスにおいて「何が正しいのか」、「何を目指すべきか」をエロール自身が予め人間に吹き込んでおいたということなのである。
 ・・・この構図は、ロマ1より先に登場して私たちに衝撃を与えたあの方の存在を想起せざるを得ない。
 そう、「世界の真ん中に立つ塔は楽園に通じているという。」という創作設定で世界中の人たちを欺いたGBサガ1の神である。
 あくまで「もしも」の話であるが、マルディアスに伝わっている神話やお伽話、加えてロマ1の関連文献に記載されている世界観設定等が全てエロールによってでっち上げられた創作物だったとしたら、エロールもGBサガ1の神と同様の「愉快犯的クリエイター」だったという可能性もあるのである。
 

 GBサガ1の神は塔の最上階に到達した冒険者に喜々として語っている。
 「これは私が創った壮大なストーリーのゲームです!」
 「私は平和な世界に飽き飽きしていました。そこでアシュラを呼び出したのです。」
 「アシュラは世界を乱し面白くしてくれました。だが、それも束の間のこと。彼にも退屈してきました。」
 「私は悪魔を打ち倒すヒーローが欲しかったのです!」

 この台詞をロマ1に当てはめるならば、
 「マルディアスは私が創った壮大なストーリーのゲームです!」
 「私は平和な世界に飽き飽きしていました。そこでサルーインを呼び出したのです。」
 「サルーインは世界を乱し面白くしてくれました。だが、それも束の間のこと。彼にも退屈してきました。」
 「私は邪神を打ち倒すヒーローが欲しかったのです!」
 ということである。

 また、GBサガ1においてはアシュラが四天王(朱雀、白虎、青竜、玄武)を率いて世界を蹂躙していたが、ロマ1においてはサルーインが四天王(フレイムタイラント、タイニィフェザー、アディリス、水竜)を率いて(当初は)世界を蹂躙していた。
 こういった類似性も「私らの人知の及ばない裏側ではGBサガ1の神とエロールが実は繋がっていたのではないか?」という新たな疑念を生じさせてくれるのである。
 

 個人的な思いとしては、全てがエロールの創作物だったのならば筆者(虎の巣管理者)もずっと騙されていたことになるわけで・・・これまでのロマ1論の議論が全て無駄になりかねないので「エロール愉快犯的クリエイター説」を信じたくはありません。
 故に、邪神封印戦争後にエロール自ら地上に降りてエロール教の布教活動に励んだのは、「光の神エロールを中心とした精神家族を形成して、美しい倫理観と価値観を確立、恒久の平和世界の復興に努める」(大事典)・・・つまり、「村長を代表とした平和な村を築く」という「どうぶつの森」のような世界を目指してのものだったと信じたい。
 ・・・しかしながら、真相は分かりません。
 「神のみぞ知る」ってやつです。
 

あとがき:

 本稿では、「デステニィストーンがデステニィストーンと呼ばれるようになった理由」と「エロールが邪神の復活を阻止することなく人間に全てを委ねている理由」について言及した。
 これらの結論は、私はこれまでにいろいろな物語考察ロマ1論を執筆してきたけれど、それらを踏まえた上での私のロマ1の物語に対する見解の最終到達点になったと思っている。
 別の言い方をするならば、本稿で述べた結論は、私が十数年前にロマ1の物語に疑問を持ち始めた頃には決して辿り着けなかったものであり、今まで苦労していくつものロマ1論を執筆してきて、それらを積み上げることでようやく辿り着けたものである。
 今回の結論に辿り着くことができたことを、ロマ1に関する情報を発信するサイト管理者として、そしてロマ1の世界をもっと楽しみたいと思っている一ファンとして嬉しく思う。