
シルバー論
(2023年08月25日「1.シルバーの偉業」を発表)(2023年09月13日「2.シルバーとブルードラゴンの関係」を発表)
本稿の執筆動機
0.はじめに
1.キャプテンシルバーの偉業
(1)シルバーの英雄的行為についての推察
(2)海賊フィッシャー・タイガーと海賊キャプテンシルバー
(i)海賊フィッシャー・タイガーの英雄譚
(ii)海賊フィッシャー・タイガーと海賊キャプテンシルバーの類似性
(3)シルバーとバファル帝国との戦い
(i)シルバーとアロン島
(ii)シルバーとリガウ島
(iii)シルバーによるメルビル襲撃事件
(4)シルバーによるメルビル襲撃事件のその後
(i)海賊キャプテンシルバーの誕生
(ii)バファル帝国の衰退と帝国からの独立
(iii)海賊時代の到来
(5)まとめ:シルバーの英雄譚
(6)補足1:ホークは一匹狼?
(7)補足2:シルバーはゲッコ族?
2.シルバーとブルードラゴンの関係
(1)ブルードラゴンに関する謎
(2)幼竜を救え! -アロン島での戦い-
(i)幼竜を襲った異変
(ii)ゲッコ族の真相
(a)ゲッコ族と人間の関係
(b)ゲッコ族とゴドンゴの関係
(c)ゲッコ族とシルバーの洞窟の関係
(iii)厄災との戦い
(3)幼竜を救え! -リガウ島での戦い-
(i)フレイムタイラントとの戦い
(ii)デスとの交渉
(4)シルバーの最期
(i)シルバー散華
(ii)シルバーの財宝伝説
(iii)幼竜蘇生の代償
(5)エピローグ
(i)シルバーがマスク島に向かった理由
(ii)ドクター・ヒルルクの軌跡
(iii)受け継がれる意志
おわりに
本稿の執筆動機:
2023年1月5日~8日にかけて、河津秋敏氏がtwitterにおいてキャプテンシルバーについて以下のようなツイートをしている。
>ここに一匹の竜がいました。
>竜はエロールに人間にして欲しいと頼みます。(1月5日)
>「海賊になって暴れ回りたい!」
>竜の願いをエロールは聞き届けます。
>「その代わり、十分楽しんだ後で私の願いも聞いてくれ」
>海賊になった竜はシルバーと名乗りサンゴ海の船乗り達を震え上がらせます。
>しかしシルバーは満足出来ません。(1月6日)
>ある日シルバーは吟遊詩人が歌う帝国の至宝の詩を耳にします。
>風のオパールを手に入れれば、すべての海賊を超えた伝説になれる。
>シルバーは帝国からオパールを奪いました。
>そこにエロールが現れます。
>次は自分の願いを叶える番だとシルバーに告げます。(1月7日)
>シルバーはシルバードラゴンに戻り、海賊シルバーの宝を自ら守る事になります。
>ディステニィストーンを手にすべき新たな英雄達が現れるまで。
>シルバーがその任から解放される日は訪れるのでしょうか?
>その時シルバーは何を語るのでしょうか。(1月8日)
筆者は上記の河津氏のツイートが腑に落ちなかった。
自分がロマ1論を執筆することを通して漠然と推察していたシルバー像と全く異なっているというのはともかくとして、SFC版ロマ1の関連書籍で述べられているシルバーと明らかに食い違っていると思ったからである。
一番致命的だと思ったのは、SFC版ロマ1ではシルバーは「伝説の大海賊。現在の海賊たちにとっての英雄である。」(大事典)ということである。
つまり、河津氏のツイートのどこにシルバーの「英雄」要素があると言うのだろうか?
「オパールを入手すると、全ての海賊を超えた伝説になれる」って集団催眠で英雄だと刷り込むのか?
「英雄」ってそんな薄っぺらなものではないはずである。
そこで、本稿ではロマ1関連書籍の情報をもと筆者が推察したシルバーの英雄譚について著すことにする。
なお、シルバーはミンサガでは女性として登場しているようであるが、ロマ1の情報をもとにするとこれはミンサガ製作時の設定改変だと思われる。
つまり、筆者はシルバーのことを男性であると考えている。
というのは、大事典のシルバーの解説では、シルバーは「彼」と呼称されているからである。
また、男性中心の海賊社会において仮にシルバーが女性だったのならば、「女性」という特徴は強調されて「女海賊」や「海賊女帝」という肩書きで呼ばれたであろうが、そういった痕跡は無い。
加えて、時織人のキャプテンホークの解説には「伝説の大海賊シルバーに憧れる。」と記述されているのであるが、果たして男性のホークが女性に「憧れる」という想いを抱くのであろうか?
私見ではあるが、自分の目標となる存在への憧れとなると、男性はやっぱり男性に対して抱くように思うので、一般に男性が女性に対して(生き方のようなもので)「憧れる」ということは無いように思う。
0.はじめに
キャプテンシルバー・・・ロマ1のゲーム内では名前のみ登場する歴史上の人物である。
ゲーム内では以下のようにアロン島の財宝絡みでその名を目にすることになる。
・パイレーツコーストの海賊の台詞「俺達の大先輩キャプテンシルバーがアロン島に隠した財宝・・・まだ誰も見つけてねー。」
・ゴドンゴにおけるホークの台詞「おい、ジャングルにはキャプテンシルバーの財宝が隠された洞窟があるはずだ。知らないか?」
・ジャングルのゲッコ族の台詞「このジャングルにはキャプテンシルバーの財宝ぎゃ、きゃくされている!」

また、ロマ1の文献にはシルバーについて以下のように説明されている。
・「数々の伝説を築いた大海賊。」(大全集)
・「伝説の大海賊。現在の海賊たちにとっての英雄である。」(大事典)
数々の伝説を築いていて、海賊たちから英雄視されているシルバーとは一体何者で、どんな偉業を成し遂げたのか?
本稿では謎に包まれたシルバー伝説について言及する。
1.キャプテンシルバーの偉業
(1)シルバーの英雄的行為についての推察
シルバーは「現在の海賊たちにとっての英雄である。」(大事典)
「英雄」・・・これが第一の手がかりである。
かつて数々の海賊団をまとめて統治したのならば「海賊王」のような称号で呼ばれそうであるが、そうではなく「英雄」である。
英雄とは優れた能力を持っていて、普通の人ではできないことを成し遂げた人物のこと。
例えば、ロマ1の世界で言うならば、邪神封印戦争を終結に導いた銀の騎士ミルザは誰もが認める英雄である。
ロマ2の世界で言うならば、古代人たちの脅威であった数多のモンスターたちを駆逐したのは七英雄である。
メガテンで「英雄」に属すジャンヌダルクは百年戦争における救国の英雄である。
このように、一般に「英雄」とは、その能力をもって強大な力を打ち倒して平安をもたらした人物に与えられる称号なのである。
では、海賊たちから英雄と呼ばれるシルバーは一体何を成し遂げたのか?
それはやはり、海賊たちを武力で制圧してくるバファル帝国の打倒ではないだろうか。
そういう視点でロマ1の世界の歴史を眺めてみると、気になる出来事がある。
それはAS750年頃のアロン島とリガウ島のバファル帝国から独立である。(基礎知識編、大全集)

基礎知識編及び大全集によると、バファル帝国、アロン島、リガウ島の歴史は以下のようになっている。
年 | 事柄 |
AS100頃 | ・バファル帝国がサンゴ海を支配する。 |
AS750頃 | ・アロン島、リガウ島がバファル帝国の支配から離脱する。 |
650年もの長い間、アロン島とリガウ島はバファル帝国に支配されていた。
その長きに渡る支配がAS750年頃に特に理由も述べられることなく終わっているのである。
この歴史的な大事件の背景にシルバーがいたのではないだろうか。
つまり、もしかしたらシルバーは「帝国の支配からの解放の英雄」なのではないだろうか。
(2)海賊フィッシャー・タイガーと海賊キャプテンシルバー
「海賊」で「解放の英雄」というと想起される人物がいる。
それはワンピースに登場したタイヨウの海賊団船長フィッシャー・タイガーである。
彼の逸話はワンピース63巻の第621話「オトヒメとタイガー」、第622話「タイヨウの海賊団」、第623話「海賊フィッシャー・タイガー」において描かれている。

出典:尾田栄一郎(2011年8月)「ジャンプコミックス ワンピース(63)」. 集英社. p.137
(i)海賊フィッシャー・タイガーの英雄譚
魚人島出身の冒険家フィッシャー・タイガーは冒険の途中で人間に捕まり、支配階級の人間の奴隷とされ、人間の狂気の目の当たりにした。
タイガーは命からがらそこから逃げ出す際に他の奴隷たちを放っておけず、単身大暴れをして他の奴隷たちを逃がすことで「奴隷解放の英雄」と呼ばれるようになるとともに、世界政府から「大犯罪者」認定をされることになる。
世界政府から追われる立場になったが故に、タイガーはタイヨウの海賊団を結成し、追手との闘いの日々を繰り広げることになったのであった。
海賊フィッシャー・タイガーの鉄の掟は「人間を殺さないこと」であった。
魚人を虐げてきた人間たちを憎む子分たちにタイガーは語る。
「殺したら負けなんだ!!あいつらと同類になりてェのか!!?」
「これは差別の歴史への復讐じゃねェんだ!!俺がマリージョアでやったこと(奴隷の解放)もそう・・・つまらねェ世の鉄則は破ったが、虐げられる者たちの解放でしかない!!」
「このタイヨウの海賊団は『解放』と『自由』、それ以上の意味は持たねェ!!!」
「俺たちが恨みのままに人間たちへの復讐を始めれば、その後生まれるのは更なる人間たちからの復讐って悲劇だけだ。何の罪もない未来の魚人族が目の敵にされるだろう。分かるか?」
「追って来る者たちとは戦い奪うが最後の一線は守れ。俺たちは誰も殺さない!!!」
そんなタイガーであったが、最終的には元奴隷の人間の子どもを故郷に送り届けた際に人間の罠にかかって海軍に包囲され、深手の重傷を負い、非業の死を遂げたのであった。
(ii)海賊フィッシャー・タイガーと海賊キャプテンシルバーの類似性
さて、上記のようなタイガーの生き様で注目していただきたいのは「人間を殺さない」という信条を持っているということである。
何故ならば、この信条は「伝説の大海賊シルバーに憧れている」(時織人)海賊キャプテンホークの「無益な殺生を嫌う」(基礎知識編)という生き方に類似するからである。
つまり、もしかしたら、ホークが「無益な殺生を嫌う」のは、憧れの存在シルバーの生き方がそうであったからなのかもしれないのである。
それならば、シルバーの人物像はフィッシャー・タイガーの人物像と結構重なる部分が多いのではないだろうか。
そうだとすると、フィッシャー・タイガーが他の奴隷たちを見逃せずに「奴隷解放の英雄」になったように、シルバーも帝国の支配を見逃せずに帝国に反旗を翻して「帝国の支配からの解放の英雄」になったということも十分にありえるように思う。

しかしながら、それならばシルバーの英雄視は海賊たちだけにとどまらず、サンゴ海周辺でもっと語り継がれていてもいいように思うが、実際にはアロン島やリガウ島でそういった話を聞くことは無い。
シルバーと何かしらの関係があったであろうゲッコ族ですら、シルバーを大恩人と見なしている様子は皆無である。
では、シルバーが「帝国の支配からの解放の英雄」というのはありえないことなのか?
アロン島とリガウ島の独立の経緯について大事典には以下のように説明されている。
アロン島:「かつてはバファル帝国の統治下にあったが、帝国の衰退を理由にその支配を離れ、現在は独立している。」
リガウ島:「長い間バファル帝国の領土であったが、帝国の関心はおもに島内の産物を交易に利用することであり、積極的に植民政策は取られなかった。このため、帝国の統治時代を通じて人口はほとんど増えず、帝国の衰退にともなって現在は小さな半独立国の形態をとっている。」
上記のようにアロン島とリガウ島が独立できたのは、強大であったバファル帝国が衰退したからである。
では、どうして衰退したのか?
その原因がシルバーという可能性は捨てきれないであろう。
即ち、シルバーがアロン島やリガウ島で直接独立運動を行ったわけではなく、大本のバファル帝国を直接襲撃して帝国の力を衰退させることによって、帝国はアロン島やリガウ島の制圧を維持することができなくなり、その隙をついて両島は独立することができた。
そして、両島でシルバーが独立運動を行ったわけではないので、両島の住民たちには帝国の力の衰退の原因がシルバーによるものだとは知られていない・・・ということならば話の筋は通るであろう。
そこで、次節では上記の推察をもとに、シルバーとバファル帝国の間にどのような戦いがあったのかについてさらに推察を進める。
(3)シルバーとバファル帝国との戦い
バファル帝国建国からアロン島とリガウ島独立までの変遷は以下のようになっている。
年 | 事柄 |
AS20 | ・アロン島出身のメルビルがバファルに渡り、商船団を組織し、交易を開始する。 |
AS43 | ・メルビルが皇帝に即位して、バファル帝国建国。 |
AS100 | ・首都メルビルの図書館完成。サンゴ海を支配下におく。地下水道の建設始まる。 |
AS530~550頃 | ・イナーシー沿岸を征服。北バファル(現ローザリア)へ進出する。 |
AS600頃 | ・帝国軍団長ローザ・ライマンが北バファル遠征の功績により、北バファル(現ローザリア)を領地として得る。 |
AS700頃 | ・ライマン家が広大な領地を背景に有力貴族と婚姻関係を結び、勢力を拡大する。 |
AS750頃 | ・アロン島、リガウ島がバファル帝国の支配から離脱する。 |
上記のようにバファル帝国の祖はアロン島出身のメルビルである。
それにもかかわらず後にアロン島はバファル帝国の支配下に置かれ、さらに後のバファル帝国の衰退を機に独立していることから考えると、バファル帝国支配下においてアロン島の住民たちは厚遇されていたわけではなく、圧政を受けて不満を抱えていたようである。
では、バファル帝国支配下においてアロン島の住民たちはどのような仕打ちを受けていたのか?
(i)シルバーとアロン島
アロン島にあるウェイプについて大事典には次のように説明されている。
「アロン島の入り口であると同時に、ジャングルの入り口でもある村。サンゴ採りの拠点にするため、ジャングルの木を切り倒して作られている。」

おそらく、バファル帝国がアロン島を支配下に置いた目的はサンゴ海のサンゴの独占のためである。
つまり、サンゴ貿易によって莫大な富を得るためにアロン島を支配下に置いたのである。
実際、バファル帝国ではサンゴの指輪が皇女の印としての意味を持つが、サンゴの指輪について大事典には次のように説明されている。
「メルビルの北東に位置するサンゴ海で産出されるサンゴを型取り作られている。(中略)海賊がサンゴ海の制海権を握っている現在では、これだけクオリティの高いサンゴを採ることは難しい。現存するいくつかは、かなり昔のものであるといえよう。」
このように質のよいサンゴは皇族が身に付けるほどのものであり、高額で取引されていたことは想像に難くないのである。
それ故に、アロン島の住民たちはサンゴを採集し、バファル帝国に献上する強制労働を課せられることになったのであった。
ゴールドマイン坑夫の「ノルマがきつくって・・・。」(ゲーム内の台詞)の如く、過去にはウェイプで過重な労働が強いられていたのである。

そんな圧政のウェイプでシルバーは生まれたのだと思われる。
そして成長したシルバーも当たり前のことのようにバファル帝国のためにサンゴ採りをする日々を送っていた。
しかし、ある日、何かしらのきっかけで(例えば、ウェイプ駐在員の捨てた新聞のようなものでバファル帝国の栄華を知り)帝国の人々とアロン島の人々の不平等に疑問を持ち、バファル帝国の支配に異を唱えた。
その結果、シルバーは反乱分子として拘束され、バファル帝国によって奴隷として狩られていたアロン島先住民のゲッコ族たちとともにリガウ島送りになったのであった。
そこでシルバーは「人間の狂気」を目の当たりにすることになるのである。
(ii)シルバーとリガウ島
リガウ島について大事典には次のように説明されている。
「長い間バファル帝国の領土であったが、帝国の関心はおもに島内の産物を交易に利用することであり、積極的に植民政策は取られなかった。このため、帝国の統治時代を通じて人口はほとんど増えず、帝国の衰退にともなって現在は小さな半独立国の形態をとっている。」

・・・帝国の関心はおもに島内の産物を交易に利用すること・・・リガウ島の産物・・・高額で取引される産物といえば・・・言わずもがな「恐竜の卵」である。
バファル帝国はサンゴ独占のためにアロン島を支配下に置いたように、恐竜の卵(等の恐竜グッズ・・・おそらく「つの」も取り引きされたのではないだろうか)を独占するためにリガウ島を支配下に置いたのである。
しかし、恐竜グッズの入手には強大な恐竜(トリケラトプス)が立ちはだかり極めて困難である。
それ故に、安い命として投入されたのが、アロン島から奴隷として連れてこられたゲッコ族なのであった。

リガウ島に連れてこられたシルバーもゲッコ族たちとともに軽装備で恐竜の巣に投げ込まれた。
そこには無残に転がるゲッコ族たちの遺骸の山・・・山・・・山・・・。
それをシルバーとともに目の当たりにしたゲッコ族たちの悲痛な鳴き声が恐竜の巣に響き渡った。
リガウ島で目撃した「人間の狂気」がシルバーを反逆者に変えた。
「・・・バファル帝国の横暴をこのまま続けさせてはいけない!」
今まさにシルバーのバファル帝国との戦いが始まったのであった。
(iii)シルバーによるメルビル襲撃事件
恐竜の巣から脱走したシルバーはジェルトンの港に停泊中の帝国の船に侵入し、密航によりメルビルの地に降り立った。
そして、たった一人でメルビルにおいて暴動を起こした。
商業用倉庫等を襲撃し、帝国の活動の財源や資産となるようなものを破壊してまわったのである。
シルバーの目的はあくまでバファル帝国の財源を断って、暴挙を止めること・・・それ故に、向かって来る相手は返り討ちにするが、命を奪うことはしなかった。
「俺はこいつらとは同類にならねェ!」
そして、その勢いのままシルバーはメルビル城に突撃し、傷つきながらも宝物庫にまで辿り着いた。
そこでシルバーは二つの存在と運命的な出会いをしたのである。

一つは「風」のデステニィストーンの「オパール」である。
オパールについて大事典には次のように説明されている。
「マルディアスにおいては、風はウコム神の力の現れと信じられている。ウコムは海神として有名だが、同時に風と嵐の神として畏怖されているのだ。風神としてのウコムは、破壊的な力と奔放さを兼ね備えている。」
「風の象徴であるオパールも、奔放に世界を移動してきた。所有者は次から次へと変わり、名高い海賊シルバーの手に渡ったという記録を最後に、正確な所在地を知る手がかりは失われたままである。」
サンゴ海貿易で発展してきたメルビルはウコム正教派の総本山であり(大事典)、ウコムの力である風の象徴オパールはメルビル王家に献上されていたのであった。
シルバーの目的は宝物庫の財宝を入手することではなく破壊することであったが、オパールについては不思議と自分の手の中にあるべきだと直感し、その宝石を迷わず手に取った。

そして、もう一つはブルードラゴン(L)の幼竜である。
シルバーについて大事典には次のように説明されている。
「彼の宝を守るドラゴンは、かつて彼が助けてやった幼竜の成長した姿ということだ。」
シルバーの一番の宝と言えば風のオパールであり、それを守るのはブルードラゴン(L)である。
たまたま捕獲されたブルードラゴン(L)の幼竜が、珍しいものとして当時の最大国家であるバファル帝国のメルビル王家に献上されていたのであった。
シルバーは、檻に入れられたブルードラゴン(L)の幼竜の姿を、帝国の支配という檻に入れられていた自分の姿と重ねた。
「逃げろ!お前は自由だ!」
そう言うと、シルバーは檻を破壊してブルードラゴン(L)の幼竜を解き放ったのであった。

その直後、大量の帝国兵が宝物庫になだれ込んできた。
追いつめられて死を覚悟したシルバーであったが、その刹那、奇跡が起こった。
シルバーに不思議な力が溢れ出してきたのである。
シルバーは迷わずその力を開放した。
すると、強大な風の力が帝国兵を宝物庫の財宝もろとも全て吹き飛ばしたのである。
シルバーに潜在する風の力、そして並々ならぬシルバーの想いにオパールが共鳴して、眠れるオパールの力を発動させたのである。
まさに邪神封印戦争において「オパールの力によって風を自在に操り、多数の敵を一瞬のうちに倒した」(大事典)と言われているミルザの如く、シルバーは風を操ったのであった。
風を纏ったシルバーを止めることなど、もはや誰にもできなかった。
メルビルの資産物品を吹き飛ばしたり、地下水道を破壊して都市機能を停止させたり、その道中で奴隷たちを開放したり・・・。
嵐のように暴れに暴れて目的を達成したシルバーは嵐のように颯爽と去っていった。
結果、メルビルは壊滅的な被害を被ったが、それにもかかわらずシルバーの襲撃による死者数は0人だった。
(4)シルバーによるメルビル襲撃事件のその後
(i)海賊キャプテンシルバーの誕生
メルビルを襲撃した後、シルバーは帝国から奪った船で海上にいた。
その傍らには一匹の青い竜・・・メルビルの城の宝物庫で解放したブルードラゴン(L)の幼竜の姿もあった。
シルバーに助けられて懐いたのか、はたまた「その蒼い身体には、風の属性がある」(大事典)というブルードラゴン(L)だけに風のオパールの力を纏ったシルバーに惹かれたのか、その真相は定かではないが、シルバーがメルビルから脱出する際にシルバーについて船に乗ってきたのである。
自分の意思で乗船してきた幼竜をシルバーは追い出すようなことはしなかった。
シルバーたちの後方に帝国からの追手の船が見える。
故郷のアロン島に戻れば、アロン島に迷惑をかけてしまうことになるだろう。
故に、シルバーは故郷を捨て、サンゴ海で引き続きバファル帝国と戦い続ける道を選んだのであった。
今ここに海賊キャプテンシルバーが誕生したのである。
(ii)バファル帝国の衰退と帝国からの独立
シルバーの襲撃によりバファル帝国の首都メルビルは大きな被害を受けた。
そのため、メルビルの復興を最優先事項とせざるをえず、アロン島とリガウ島の管理は日に日に手薄となっていった。
帝国の支配に不満を持っていたアロン島とリガウ島の住民や奴隷たちは、これを千載一遇のチャンスとして帝国に反旗を翻し、相次いで独立を勝ち取ったのである。
また、帝国の衰退はこれだけにとどまらなかった。
メルビル復興のための財源確保として、国民への重税や労役(金鉱開発)が課せられただけでなく、地方領主からの金銭の徴収も行われた。
この政策が長く続き、地方領主の不満が溜まったため、最終的には「AS852年に北バファルのライマン家が自治権の拡大を求めて北バファル戦争を起こし」(基礎知識編、大全集)、さらには「AS864年にライマン家がバファル帝国からの独立を宣言し、ローザリアを建国する」までに至ったのである。
(iii)海賊時代の到来
ロマ1の物語において「サンゴ海」と言うと「海賊」を想起することができるが、いつ頃からサンゴ海における海賊時代は始まっていたのか?
サンゴ海について大事典には次のように説明されている。
「海域を支配していたバファル帝国の勢力が衰退した後、海域を掌握する新勢力は表れていない。法の目を逃れて来た者たちがサンゴ海の西岸にパイレーツコーストを作ったのには、そんな背景があるのだ。」
上記のように、バファル帝国がサンゴ海を支配していた頃は海賊の取り締まりが厳しく行われていたのであるが、帝国の衰退に伴って海賊稼業が成り立つようになり、海賊たちが海賊の町パイレーツコ―ストを形成するまでに至ったのである。

さて、シルバーによるメルビル襲撃事件の際に、シルバーたちの他にもメルビルから出港する者たちがいた。
シルバーによって解放された奴隷たちである。
彼らの中には故郷に帰る者も多くいたが、ワケありで逃亡生活を続けざるをえない者たちもいた。
その後者のような者たちは、そのままサンゴ海で海賊稼業をするようになったのである。
自由を手に入れた元奴隷の海賊たちはシルバーに大きな恩義を感じていた。
それ故に、無法者の彼らも大恩人シルバーの言葉には素直に従った。
何かしらのトラブルがあればシルバーがやってきて海賊たちを説き伏せたのである。
シルバーは語る。
「俺たちの敵はバファル帝国だ。民間人を襲うんじゃねェ!」
「帝国の船を襲ってお宝を奪うのはかまわねェが、命はとるんじゃねェ!」
「俺たち海賊は追われている者同士仲間だ。だから、仲間同士で争うんじゃねェ!」
「仲間同士の話し合いでどうしても解決しないなら、マスク島でウコム神に審判をしてもらって決着をつけな!でも、命は取るんじゃねェぞ!」
「ルールはそれだけだ!俺たちは自由だ!思うがままに生きようじゃねェか!」
即ち、シルバーはバファル帝国の金儲けを目的とした人間の狂気の暴走を二度と起こさせないようにするための抑止力としての役割を海賊に与えたのである。
#マスク島について大事典には「マスク島は古くから海賊たちの決闘の場となっている地域だ。この島の密林には古くからウコムが住んでいると言われ、聖域として扱われている。海賊たちが島で決闘を行うのも、海賊の守り神であるウコムに審判をしてもらうという風習が残っているからである。」と説明されている。アロン島出身のシルバーは「マスク島にウコム神が住んでいる」という言い伝えをお伽話等により知っていたので、それを関連させて決闘のルールを定めた。
こういったシルバーの言葉が鉄の掟とした海賊たちに浸透していった。
そして、こうした鉄の掟を持った海賊たちによってパイレーツコーストは形成されたのである。
海賊について大全集には次のように説明されている。
「サンゴ海を縄張りとする海賊集団。一匹狼から徒党を組むものまでいるが、基本的に海賊同士の争いを避け、問題は話し合いで処理する自治的な集団である。」
「パイレーツコーストを根城にしている海賊たちは、主にサンゴ海を航行するバファル帝国の船や、悪徳商人たちから金を巻き上げる、いわば穏健派であった。また、全体を統一するリーダー格も、本来は存在していなかった。ところが最近、ブッチャーを筆頭とする強硬派が台頭し、穏健派追い出しにかかった。特に正統派の海賊であったホークに対する風当たりは強く、決闘と称して罠にかけようとしたぐらいだ。」
このように(最近不穏な動きがあるが)パイレーツコーストの海賊たちはシルバーの定めた鉄の掟を信条としてきたのである。
実際、ゲーム内の台詞からもシルバーの定めた鉄の掟が海賊たちに遵守されてきたことが伺える。
事例1:海賊会議におけるブッチャーとホークのやり取り
ブッチャー「海賊は舐められちゃおしめえだ!襲った船の奴らは必ず皆殺しにするんだ!」
ホーク「やりすぎだ!そんなことをしたら誰もサンゴ海を行き来しなくなるぞ!そうしたら俺たちゃ終わりだ!」
ブッチャー「そうなったら海岸の町を襲えばいいんだよ!」
ホーク「町の連中と戦争する気か?バカバカしい。」
ブッチャー「えーい、次だ!これからは帝国の軍船ともやりあわなきゃならねぇ。今までみたいにバラバラにやってたんじゃダメだ!このブッチャー様の命令で動くんだ!」
ホーク「ふざけんじゃねえ!何でお前なんかの命令に従わなきゃならねーんだ!俺たちゃ自由な海賊だ!誰にも命令はされねー!」
ブッチャー「ホーク!てめえも話が分からねえ奴だな!今日こそは決着をつけてやるぜ!決闘だ!」
ホーク「おおし、受けて立つぜ!」
ブッチャー「場所はマスク島だ!」

事例2:ブッチャーに騙されたと悟ったホークの台詞
ホーク「帝国軍だ!仲間を売るとはあの野郎、最後の一線を越えやがって・・・ブッチャーーーーーーーー!」

事例3:ホークがブッチャーに濡れ衣を着せられた際の下っ端海賊の台詞
下っ端海賊「ホークさん・・・いや、ホーク!あんたにはガッカリさせられたよ。こいつ(帝国兵)にマスク島でブッチャーを待ち伏せしろって言ったそうじゃねえか。いくら憎くても仲間を売ったらおしまいだ。」

このように海賊たちの多くは今なおシルバーの意志(鉄の掟)に準じており、その代表格がホークであった。
一方で、我欲に溺れシルバーの意志(鉄の掟)を踏みにじる者がブッチャーなのである。
(5)まとめ:シルバーの英雄譚
以上のように、シルバーはアロン島とリガウ島をバファル帝国の支配から解放するためにたった一人でメルビル襲撃事件を起こし、結果としてそれが思惑通りアロン島とリガウ島の独立(さらにはローザリアの独立)に繋がるのであるが、それだけでなくサンゴ海を海賊たちの楽園へと変えたのだった。
つまり、シルバーとは、バファル帝国にとっては「風のオパールを強奪しただけでなく、メルビルを破壊して壊滅的な被害をもたらした大犯罪者」であり、一般にはあまり知られていないが「アロン島とリガウ島、さらにはローザリアの独立のきっかけを作った帝国の支配からの解放の英雄」であるとともに、「帝国によって抑圧されていた海賊や、奴隷にされていた者たちに海賊としての命と自由、そして規律(鉄の掟)を与えて現代の海賊の礎を築いた海賊たちにとっての英雄」なのであった。
なお、シルバーは「現代の海賊たちにとっての英雄」(大事典)と紹介されるだけでなく、「大海賊」と称されている。(大事典、大全集、時織人)
「大海賊」という、多くの海賊たちを率いて大海賊団を組織したようなイメージが浮かぶかもしれないが、おそらくシルバーは海賊団を組織することはせず、幼竜とのコンビでバファル帝国と戦い続けたのだと思われる。
なぜなら、シルバーに憧れているホーク(時織人)が、ゲラ=ハとのコンビで海賊を続けているからである。
これはおそらく、海賊たちの間には「シルバーはドラゴンとのコンビで帝国の船に立ち向かっていた」という言い伝えがあり、ホークも(ドラゴンっぽい)ゲラ=ハとコンビを組むことで憧れの存在に近づこうとしたからであろう。
#ホークとゲラ=ハの出会いについては時織人に以下のように説明されている。
・ホークの項目:「ウェイプで出会ったゲラ=ハの生き方に共感を覚え、それ以来相棒として、またレイディラック号の乗り手として行動を共にするようになる。」
・ゲラ=ハの項目:「アロン島の港町ウェイプにいるときに偶然ホークと出会い、レイディラック号の操舵手を任される。ホークと一緒に、アロン島のどこかにあるというシルバーの財宝を手に入れることを夢見ている。」
ゲッコ族の古いしきたりから逃れ自由を求めたゲラ=ハにホークは共感したというのも事実であろうが、「おおー!ドラゴンじゃん!(このドラゴンと一緒に海賊をしたら憧れのシルバーみたいじゃん!)ぜひ仲間にせねば!」くらいの気持ちも少なからずあったのではないだろうか。

ということで、シルバーが「大海賊」というのは、大海賊団のキャプテンだったということではなく、為した偉業・・・即ち、現代海賊の礎を築いたことを讃えての呼称であろう。
(6)補足1:ホークは一匹狼?
(5)においてホークはシルバーに憧れてゲラ=ハとコンビで海賊稼業をしていることを述べた。
このことに関わって大全集に気になる記述がある。
海賊の項目:「一匹狼から徒党を組むものまでいるが(中略)一人で行動するのがキャプテンホーク、徒党の代表がブッチャー党である。」
ホークは・・・一人で行動する・・・一匹狼・・・???
これはつまり「ゲラ=ハはペット扱い」・・・あくまで「『一人』と『一匹』だ!」ということのように思ってしまうかもしれないが、おそらくホークは長い間一人で行動していて、最近になってようやく心を許せる相棒ゲラ=ハと出会ってコンビで活動を始めたということなのであろう。・・・そうだと信じたい。
このようにゲラ=ハについては説明がつくのであるが、実はもっと大きな問題がある。
ホークのオープニングでは開始0分で、
ホーク「野郎ども!行くぞ!!」(ゲーム内の台詞)
・・・ホークの船レイディラック号にはホークとゲラ=ハの他に少なくとも5人の乗船員の姿が見えるのである。

これでは(5)で述べた「ホークとゲラ=ハはコンビで活動している」、「シルバーは幼竜とのコンビで活動していた」という推察の前提が崩れてしまうことになる。
それでは困るので、ホークとゲラ=ハ以外のレイディラック号の乗船員たちは何者かについて推察をしておく。
まず、彼らの姿(シンボル)に着目してみる。
レイディラック号以外の船の乗船員を姿(シンボル)を見てみると、海賊船(ブッチャーの船シーデビル)に乗っているのは海賊、商船や定期船に乗っているのは茶髪男である。
それに対して、レイディラック号に乗っているのは青髪男である。
どうやら、レイディラック号の乗船員は下っ端海賊や、商船員、定期船の客とは括りが違うようである。

次、他の事例としてバーバラの場合に着目してみる。
バーバラの旅芸人一座は、踊り娘で占い師のバーバラ、会計係のエルマン、歌い手のナタリーの3人で旅をしている。
しかしながら、戦闘に登場するのはバーバラとエルマンの2人のみ。
これはナタリーが非戦闘員だから、3人パーティーでも、2人しか登場しないということだろう。
#船の代金にナタリーが含まれないのは、ナタリーは車でお留守番だからであろう。
#また、旅芸人一座には他にも座長がいるようであるが(大事典、時織人)、座長は同行していないのであろう。

ナタリーの扱いをもとにすると、レイディラック号の乗船員も非戦闘員だから戦闘に参加しないということだろうか?
しかしながら、そうだとすると「商人なので戦闘能力はほとんどなく、装備も護身用の携帯武器としてパンチを持っているだけだ。」(大事典)という商船員が戦闘に駆り出されていることの説明がつかない。
つまり、ナタリーは子どもだから戦闘に参加しないとしても、大人ならば非戦闘員であっても戦闘には参加せざるをえないと思われるのである。
■A6:商船員
HP | 防 | 腕 | 体 | 器 | 早 | 知 | 精 | 愛 | 魅 | 金 | 聖 | 竜 | 鳥 | ![]() |
||
20/20 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 0 | 4 | 4 | - | - | - | |||
火 | 水 | 土 | 風 | 冷 | 雷 | 光 | 闇 | 回 | 瞑 | 動 | 毒 | 幻 | 痺 | 石 | 死 | |
- | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
1:パンチ0 | ||||||||||||||||
術法:なし |
以上のような事実から推察される結論としては・・・レイディラック号の乗船員は・・・実は人間ではないのではないだろうか。
つまり、人数を多く見せる威嚇用、そして矢避け用を兼ねた張りぼて、案山子、デコイ(おとり)のようなものだと思われるのである。
従って、ホークのオープニングで、
ホーク「野郎ども!行くぞ!!」(ゲーム内の台詞)
乗船員「・・・・・・・・・・」
ゲラ=ハ「・・・・・・・・・・」
上記のように誰もホークに反応しないのは、
ホーク「野郎ども!行くぞ!!」 ←ゲラ=ハしかいないのに、雰囲気作りのため?に言っている。
乗船員「・・・・・・・・・・」 ←案山子だから当然反応しない。
ゲラ=ハ「・・・・・・・・・・」 ←「ホークさん、またおかしなこと言ってるよ・・・」と内心呆れている。
という状況なのでしょう。
ということで、本稿ではホークの「野郎ども」=「ゲラ=ハ一人」であり、ホークはゲラ=ハと二人で海賊稼業をしているという立場を取る。
(7)補足2:シルバーはゲッコ族?
本稿ではシルバーの人物像・英雄譚を海賊フィッシャー・タイガーに重ねて推察した。
それならば、フィッシャー・タイガーが人間ではなく魚人であったように、シルバーも人間ではなく・・・ゲッコ族だったという可能性はないだろうか?
シルバーがゲッコ族ならば「どうしてゲッコ族の族長がシルバーの洞窟の場所を知っているのか?」についても容易に説明できることになる。
#この場合、一般には「シルバー」と呼ばれているが、正しくは「ゲラ=ハ」の如く「シル=バ」で、それが訛って「シルバー」となったのかもしれない。
#さらに、シルバーのメルビル襲撃事件の際に助けたブルードラゴン(L)の幼竜がシルバーに懐いた理由として、「幼竜がトカゲのシルバーのことを同族(ドラゴン)だと思ったから」という可能性も出てくる。
しかしながら、実際にはやはりシルバーは人間だったであろう。
なぜなら、「シルバーは女性ではない」ことの根拠と同様に、仮にシルバーがゲッコ族だったならば「トカゲの海賊」のようにその特徴が強調されたはずだからである。
また、ゲッコ族の族長の「人間にも少しは 信じられる者がいるな。キャプテンシルバーの財宝を好きなだけ持っていくがいい!」という台詞の素っ気なさからも、シルバーを同族の英雄として讃えているようには思えない。
以上のような理由から、本稿ではシルバーは人間だったと結論づける。

では「どうしてゲッコ族の族長がシルバーの洞窟の場所を知っているのか?」については第2章で述べる。
2.シルバーとブルードラゴンの関係
(1)ブルードラゴンに関する謎
ロマ1のゲーム内において風のオパールを護るブルードラゴン(L)。
大事典によると、あのドラゴンは「シルバーが助けた幼竜の成長した姿」ということである。
「なるほどー!」と思う一方で、「あれ?」っと思うこともある。
それはシルバーの財宝の洞窟にはブルードラゴン(L)だけでなくブルードラゴン(S)もいるということである。
では、シルバーが助けた幼竜は2匹だったということなのだろうか?

さて、ロマ1をプレイしていて、皆様はあの2匹のブルードラゴンの関係をどのように捉えているだろうか?
大小の2匹だから親子ではないか?
雄と雌ではないか?
親分とその子分ではないか?
・・・というような可能性を思い浮かべるかもしれないが、実はあの2匹は同種族ではない。
以下に大事典の解説を抜粋する。
■ドラゴン(S)系
・グリーンドラゴン(S):「デスが冥府の土から造り上げた凶悪なドラゴンで(以下略)」
・ゴールドドラゴン(S):「小竜族の最強の種族に相応しく、(以下略)」
・ブルードラゴン(S):「デスによって造り上げられたモンスター(以下略)」
■ドラゴン(L)系
・グリーンドラゴン(L):「彼らも昔は神々の一員だったが、次第に信仰を失ってゆき、邪神と手を組むようになった。」
・ゴールドドラゴン(L):「三邪神と手を組んで神を超えようとしたが、エロールたちに敗れてしまった。」
・ブルードラゴン(L):「『風』のオパールを護っている巨竜族の一種。」
#レッドドラゴン(S)と(L)についてはルーツに関わる説明が無いので省略。
上記のようにドラゴン(L)系は古代神の時代から存在する巨竜族であり、ドラゴン(S)系はデスが造った小竜族なのである。

さらに、大事典のブルードラゴン(S)の解説には次のように述べられている。
「デスによって造り上げられたモンスターなので、彼の命令は絶対に聞くが、他の者の命令はサルーインであっても聞かない。」
つまり、ブルードラゴン(L)についてはシルバーに助けられた恩義で財宝の番人をしているのかもしれないが、ブルードラゴン(S)についてはシルバーの頼みはもちろんのこと、ブルードラゴン(L)の頼みであっても財宝の番人をするはずが無いのである。
それにもかかわらず、実際にはブルードラゴン(S)が財宝の番人をしているのは何故なのか?
この問いからロマ1のゲーム内や文献では述べられていないシルバーとデスとの繋がりがうっすらと見えてくるのである。
そこで第2章では、シルバーが幼竜とともに海賊になった後のエピソードについて推察する。
(2)幼竜を救え! -アロン島での戦い-
(i)幼竜を襲った異変
メルビル襲撃事件の後、シルバーは幼竜とともにサンゴ海で海賊として活動していた。
バファル帝国から追手があれば返り討ちにして、海賊同士のトラブルがあればその仲裁をする。
そんな平穏な日々を送っていた。
ところが、そんな平穏な日々に突然陰りが訪れた。
幼竜が衰弱して倒れたのである。
実のところ原因は栄養失調的なものであったが、これは決してシルバーが幼竜にエサを与えなかったからというわけではない。
(1)で述べた通りブルードラゴン(L)は古代神の時代から存在する神々に並ぶ巨竜族・・・即ち、神的存在であったために、シルバーが与える地上の食べ物では幼竜の生命活動を維持するためのエネルギーを十分に補給することができなかったからなのであった。
しかしながら、過去にブルードラゴン(L)を育てたことがある人間などいるはずもなく、シルバーがブルードラゴン(L)の生態について知らないことは仕方のないことだった。
打つ手無し。
自分一人ではもはや衰弱していく幼竜をただ見守ることしかできない。
そんな絶望の中、シルバーは一縷の望みに賭けて、幼竜を抱えてアロン島のジャングルを目指した。
「ゲッコ族ならば(ドラゴンっぽい存在だから)、幼竜を助けてくれるかもしれない!」
(ii)ゲッコ族の真相
シルバーのエピソードを進める前に、ゲッコ族に関わるいくつかの情報について整理しておく。
(a)ゲッコ族と人間の関係
アロン島のジャングルに住むゲッコ族。
ゴドンゴの茶髪男は語る。
「ジャングルに住むトカゲは人間嫌いだ。」(ゲーム内の台詞)
また、大全集のアロン島の解説には次のように記述されている。
「他の地域では見られない先住民族ゲッコ族が住むことで有名。サルーインが君臨した時代から生きる彼らのほとんどは人間嫌いのため滅多には協力を得られないという。」
実際、ゲッコ族長は人間を毛嫌いしているようである。
「人間に話すことは何もない・・・。」(ゲーム内の台詞)

何故ゲッコ族は人間を嫌っているのか?
その理由については、ゲラ=ハが仲間にいれば以下のように族長に問いただしてくれる。(以下、ゲーム内の台詞)
ゲラ=ハ「長、そう言わずに話してください。何故人間を避けるのですか?」
ゲッコ族長「人間は臭いが違うのだ。地べたを這いまわっていた我々を立ち上がらせたのはサルーインだ。エロールの子である人間とは違うのだ。お前は人間の匂いがするぞ。ゲッコとしての誇りはどうした?」
ゲラ=ハ「しかし、サルーインはもういません。人間と生きていくのが我らの道でしょう。」
ゲッコ族長「人間はそう思っておらん!その証拠に我らの仲間を攫って行くぞ。やはり、人間は信じられん!」

ゲッコ族長が語るように、ゲッコ族の人間嫌いは「誘拐事件」が根本にあるわけではなく、「ゲッコ族と人間の間には相容れないルーツの違いがある」という思想に基づいているのである。
この点については大全集のアロン島の解説に以下のように記述されている。
「人間たちがエロールをはじめとする神々を信仰するのと同様に、ゲッコ族は邪神サルーインを信仰の対象としていた。それは邪神崇拝というより、異形の存在である自分たちはサルーインに作られたものだという思想の違いによるものであった。それ故、彼らは人間を嫌い、接触を避けていたのだ。」
従って、シルバーが活動した当時も当然ゲッコ族は人間嫌いであり、人間との接触を避けていたのではあろうが、本稿の第1章で示した推察(バファル帝国支配下においてゲッコ族は奴隷にされた)をもとにすると、シルバーがメルビル襲撃事件を起こす以前には既にゲッコ族はモンスターと区別され、「知能を持った危険ではないトカゲ」として人間たちに周知されていたのだと思われる。
(b)ゲッコ族とゴドンゴの関係
(a)では「人間とゲッコ族の関係」について大まかに述べたが、「人間とゲッコ族の関係」と言えば人間とゲッコ族が共生する村「ゴドンゴ」が想起される。
ゴドンゴについて大事典には次のように説明されている。
「ゴドンゴはノースポイントから来た者たちによって作られた村だ。そのため、ローザリアの特徴を受け継ぐ住宅建築が見られる。アロン島の先住民であるゲッコ族と共同で開拓された。ここで生活するゲッコ族は、ジャングルの故郷を捨て、人間と生きていくことを決めた者たちばかり。」
上記の説明を構成する4文のうち、
・ゴドンゴはノースポイントから来た者たちによって作られた村だ。
・アロン島の先住民であるゲッコ族と共同で開拓された。
・ここで生活するゲッコ族は、ジャングルの故郷を捨て、人間と生きていくことを決めた者たちばかり。
については「なるほど!」となるのであるが、よく分からないのが、
・そのため、ローザリアの特徴を受け継ぐ住宅建築が見られる。
である。
というのは、ゴドンゴにはゲッコ族の洞窟の入り口に見られる竪穴式住居的な建築物しかないからである。
#竪穴式住居が見られるのはゴドンゴとジャングル内のゲッコ族の洞窟入り口のみで、ローザリアにはそういった建築物は無い。
従って、おそらくこの説明は誤りだと思われるが、わざわざこの説明を書いたのだから、ローザリアの特徴を受け継いだ何かしらは伝わっているのだと思われる。
そうだとすると、ローザリアの建国はAS864年だから、ゴドンゴが作られたのはそれ以降ということになる。
従って、シルバーが活動していたAS750年頃にはまだゴドンゴは存在しなかったことになるので、当時は現在ほど人間とゲッコ族の交流があったわけではないと思われる。

また、ゴドンゴについての説明にはもう一つよく分からないものがある。
それは徹底攻略編に記載されている以下の説明である。
「ゴドンゴではゲッコ族を通じていろいろな物資が取り引きされている。そのせいかゴドンゴの武器・防具屋にはなかなか強力なヴェルニーシリーズの防具が置いてある。しかし、ゲッコ族がこれらの防具をどこから手に入れるかは謎である。シルバーの財宝と何か関係があるのかもしれない。」
上記の説明において、
・ゴドンゴではゲッコ族を通じていろいろな物資が取り引きされている。
ということについては、実際にゴドンゴの茶髪男が、
「ジャングルに住むトカゲは人間嫌いだ。私はここのトカゲを通じていろんなものを取り引きしているのさ。」(ゲーム内の台詞)
と言っているので確かなのであろうが、それ以降の「ゲッコ族がヴェルニーシリーズを仕入れている」ということについては疑問である。
何故なら、ヴェルニーは旧エスタミル王国で発明された金属であり(基礎知識編、大事典)、ヴェルニー製の武具のほとんどはエスタミル周辺で取引されているからである。
つまり、ゲッコ族とエスタミル周辺に何か特別なルートがあって、ゲッコ族がエスタミル周辺からヴェルニー製の武具を仕入れているとは到底考えられないのである。
また、シルバーの洞窟を見てもヴェルニー製の武具の痕跡は見当たらないので、シルバーの財宝にヴェルニー製の武具があったという可能性もほぼほぼ無いと思われる。

では、ゴドンゴのヴェルニー製の防具はどこから仕入れているのか?
これはおそらくゲッコ族が仕入れているのではなく、普通に人間が仕入れているのであろう。
確かに、ヴェルニー製の防具を売っているのはゲッコ族であるが・・・と言うか、ゴドンゴの店の店員は全てゲッコ族であるが、それらの店の商品もゲッコ族が仕入れたわけではなく、普通に人間の流通ルートによるものだろう。
つまり、おそらくゴドンゴという村は「ゲッコ族が人間社会に適応するための職業訓練学校」のような村なのではないだろうか。
人間が物品を仕入れてきて、ゲッコ族が店員になってそれを売ることで、ゲッコ族が人間の社会のルールを学ぶ・・・そんなことをしているのだと思われる。
では、ゴドンゴ村の茶髪男が「私はここのトカゲを通じていろんなものを取り引きしているのさ。」(ゲーム内の台詞)と言っていたのは何だったのか?
それはおそらく冒険者たちの購入対象にはならないゲッコ族手作りの民芸品のようなものであろう。
(c)ゲッコ族とシルバーの洞窟の関係
ゲッコ族と人間の繋がりが示唆される場所がゴドンゴの他にもう一つある。
それはシルバーの財宝の洞窟である。
「聞いたことはあるぎゃ、どこきゃは知らん!ジャングルの村には知っとる者ぎゃおるきゃも。」(ゲーム内の台詞)
ゴドンゴ在住のゲッコ族たちもその存在を周知していて、
「このジャングルにはキャプテンシルバーの財宝ぎゃ、きゃくされている!」(ゲーム内の台詞)
ジャングル在住のゲッコ族たちはその存在を当然のものとしていて、
「人間にも少しは信じられる者がいるな。キャプテンシルバーの財宝を好きなだけ持っていくがいい!そこへ行くには、まずジャングルに出て、この穴の左上に見えている洞窟へ行け。そこは2階層の洞窟で出口がもう1つある。その出口から出ると近くに穴があって、その内部は二股になっておる。そこで正面の壁を丹念に調べるのだ!必ず抜け道があるはずだ。その抜け道のむこうにシルバーの洞窟がある。だが、シルバーの最高の宝はドラゴンが護っている!手を出すな!!」(ゲーム内の台詞)
ゲッコ族長はその場所の行き方をやたら詳しく知っているだけでなく、財宝の管轄権さえも持っているような口ぶりである。

(a)(b)で述べたようにシルバーの活躍した頃は、人間とゲッコ族の交流が現在ほどあったわけではないと思われるが、それにも関わらずどうしてシルバーの洞窟のことをゲッコ族長はかなり詳しく知っているのだろうか?
その疑問の答えを推察するために、まずはシルバーの洞窟とは何なのかについて推察してみる。
シルバーの洞窟というとオパールを護るブルードラゴンの存在が印象的ではあるが、その「作り」に着目すると、
・内部照明はたき火。
・中が通路になっている盛り土がある。
という特徴がある。
・・・この二つの特徴、実はゲッコ族の洞窟についても当てはまるのである。
つまり、おそらくシルバーの洞窟もゲッコ族に関わる場所なのである。
#完全解析編のゲッコ族の洞窟についての解説には「下り階段は盛り土の下に巧妙に隠されている」というように「盛り土」であると述べられている。

では、シルバーの洞窟はゲッコ族にとってどのような場所なのか?
そこで着目するのが、ジャングル内にあるオブジェクトの「トーテムポール」である。
トーテムポールとは私達の世界においては、インディアンが家の中や家の前、墓地等に立てた柱状木造彫刻のことである。
そんなトーテムポールがジャングルの入り口周辺、即ちゲッコ族の洞窟の傍に数本立てられている。
また、ゲッコ族が移り住んだゴドンゴの村の入り口にも立っている。
つまり、ゲッコ族の住んでいる場所にはトーテムポールが立っているのである。

そして、そんなトーテムポールが現在はゲッコ族の姿を見ることが無いシルバーの洞窟の入り口の前あたりにも立っているのである。
従って、シルバーの洞窟はもともとはゲッコ族の住処であったと推察されるのである。

では、どうしてシルバーの洞窟にゲッコ族は住まなくなったのか?
これは決してシルバーが奪い取ったからというわけではないだろう。
おそらくゲッコ族はもともとは現在住んでいる洞窟ではなく、シルバーの洞窟の方に住んでいた。
ところが、洞窟内に水棲生物系モンスターの「海の悪魔」が侵入してきて、ゲッコ族は洞窟から追いやられてしまったのである。
それ故に仕方なくゲッコ族は現在の洞窟に移住することを余儀なくされた。
その結果、ゲッコ族は人間の生活圏と近づいてしまったために、その存在が人間に周知され、後のバファル帝国支配によるゲッコ族の奴隷化に繋がってしまったのである。

「シルバーの洞窟がもともとゲッコ族の住処だったのならば、ゲッコ族の洞窟やゴドンゴの建物のように入り口は竪穴式住居のようになっていないとおかしいのではないか?」と思うかもしれない。
その点については、もともとはシルバーの洞窟の入り口にも竪穴式住居は建っていたと思われるが、上記で述べたようにシルバーが活躍した頃・・・ゲッコ族が奴隷にされていた頃(AS750年頃)には既にゲッコ族は現在住処としている洞窟に移り住んでいたわけで、最低でも250年以上放置されている間に朽ち果ててしまったのである。

(iii)厄災との戦い
衰弱した幼竜を抱えたシルバーはゲッコ族の洞窟(移住後の住処)に訪れ、幼竜を助けてほしいと懇願した。
人間嫌いのゲッコ族であったが、当時のゲッコ族長は必死に訴えるシルバーを見捨てることができなかった。
「人間よ、分かった。助けられるかは分からないが、できるだけのことはやってみよう。そのためには、お前にやってもらいたいことがある。」
ゲッコ族長は「自分たちがもともとはジャングルの奥地に住んでいたが、魔物の侵略によりその場所を追いやられたこと」、そして「その場所がゲッコ族にとっての神聖な場所(祭壇がある場所)であること」を伝えた。
つまり、ゲッコ族長の言うシルバーにやってもらいたいこととは、幼竜をゲッコ族の祭壇のある場所まで連れていくためには元住処を乗っ取った魔物を退治する必要があるということであった。
#シルバーの洞窟のB2(海の悪魔がいるフロア)が居住区、B3(ブル―ドラゴンがいるフロア)が祭壇の間だったのだと推察する。
#ゲッコ族はサルーイン信仰で、ブルードラゴン(L)がいるあたりがおそらく祭壇だったのではないだろうか。
・・・オパールに認められたシルバーにとってゲッコ族を襲った厄災「海の悪魔」など相手ではなく、難なく撃退。
シルバーとゲッコ族一行は無事に祭壇の間に到達することができ、ゲッコ族による回復の祈祷が行われた。
しかしながら、(封印されている)サルーインに祈ったところで幼竜が回復するわけもなく、幼竜は静かに息を引き取ったのであった。
なお、シルバーに難なく退治された海の悪魔であったが、海の悪魔は無限湧きする(フロアに入り直すと復活する)ため、ゲッコ族が元住処に再度移住することはなかった。
ジャングルの洞窟B2が水棲生物系の巣窟になっているので、シルバーの洞窟の海の悪魔が退治される度に新たな海の悪魔が派遣されてきているのかもしれないし、シルバーの洞窟B2の池の中に海の悪魔が大繁殖しているのかもしれない。

(3)幼竜を救え! -リガウ島での戦い-
(i)フレイムタイラントとの戦い
幼竜を救うことができず、悲しさと悔しさで泣き崩れるシルバー。
そんなシルバーにゲッコ族長は語った。
「リガウ島の地下、冥府を治める死の神ならば、この竜を助けることができるかもしれない。」
シルバーはゲッコ族長の言葉を最後の望みとしてアロン島を後にし、すがる思いでリガウ島に上陸した。
そして、冥府の入り口・・・トマエ火山にて伝説で語られる四天王フレイムタイラントと対峙した。
「よくもまあ、こんな所まで人間が来たものだなー。折角だから、一つ仕事を引き受けてくれないか?」(ゲーム内の台詞)
炎の暴君の呑気な問いに対して、シルバーは「幼竜を助けたい。だから、冥府に行かせてくれ!」と切実に訴える。
しかしながら、詩人が冥府行き宣告の際に「フレイムタイラントと話をつけ、さらにデスと上手く取り引きができれば・・・。なかなか難しいでしょうね。」(ゲーム内の台詞)と語るように、フレイムタイラントと話をつけるのはそう簡単なことではない。
幼竜を助けたい一心のシルバーの選択肢は「戦ってでも通る」、シルバーとフレイムタイラントとの戦いの火蓋が切って落とされた。

普通の人間が四天王フレイムタイラントと戦うなどまさに「無謀にも戦いを挑む」行為に他ならない。
しかしながら、シルバーは普通の人間ではなかった。
そう、風のオパールに選ばれし人間なのである。
「幼竜を助けたい!」というシルバーの想いにオパールが共鳴し、再度その眠れる力が解放された。
風をまとったシルバーの攻撃は風術コールドウエポンの如く「風の冷却効果」(大事典)によってフレイムタイラントの弱点である「冷」属性となったのである。
■BF:フレイムタイラント
HP | 防 | 腕 | 体 | 器 | 早 | 知 | 精 | 愛 | 魅 | 金 | 聖 | 竜 | 鳥 | ![]() |
||
9825/9902 | 74 | 101 | 74 | 74 | 74 | 74 | 74 | 0 | 74 | 4 | - | - | - | |||
火 | 水 | 土 | 風 | 冷 | 雷 | 光 | 闇 | 回 | 瞑 | 動 | 毒 | 幻 | 痺 | 石 | 死 | |
○ | - | - | - | × | - | - | - | - | - | ○ | - | - | - | - | ○ | |
1:炎14(炎(全)) 2:牙14(毒牙、麻痺牙) |
||||||||||||||||
火:99/99/0(なし) |
また、冷却された風をまとったためにシルバーの身体は冷え切って、シムラクラムのように「火」属性が弱点となってしまった。
名称 | 火 | 水 | 土 | 風 | 冷 | 雷 | 光 | 闇 | 回 | 瞑 | 動 | 毒 | 幻 | 痺 | 石 | 死 |
風:シムラクラム | × | - | - | - | ○ | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
その結果、シルバーはフレイムタイラントの炎攻撃が弱点、フレイムタイラントはシルバーの冷気をまとった攻撃が弱点というお互いノーガード状態での殴り合いが展開されたのだった。
#なお、オパールは全盛期でも「火」属性耐性は無い。
名称 | 火 | 水 | 土 | 風 | 冷 | 雷 | 光 | 闇 | 回 | 瞑 | 動 | 毒 | 幻 | 痺 | 石 | 死 |
E3:オパール | - | - | △ | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | △ |
そして、壮絶な殴り合いの末、シルバーとフレイムタイラントの間には「強敵」と書いて「とも」と読むような北斗の拳的な認め合う関係が育まれたのである。
「人間・・・いや、シルバー。お前は大した奴だな。行ってこい。」
そう言ってフレイムタイラントは笑顔でシルバーを冥府に送り出したのだった。
(ii)デスとの交渉
幼竜を抱えたシルバーはとうとう冥府の最奥、死の神の間に到達した。
「生ある者が、ここに何をしに来た!」(ゲーム内の台詞)
死の神デスの問いかけに対して、シルバーは「幼竜を生きかえらせてくれ!」と訴えた。
デスの表情が曇ったように見えた。
ガラハドを生き返らせる場合ならば「つまらんことのために来たなー。わざわざここまで来たのだ、手ぶらで帰すわけにもいくまい。願いは叶えてやるが代償はいただくぞ。それでもいいか?貴様なら絶対後悔するような代償だが。」(ゲーム内の台詞)とすんなりと受諾してくれるのであるが、幼竜の場合についてはそうではなかったのである。

デスは邪神封印戦争においてエロールらに降参し、冥府に封印されたものの、死者の王として人間等の命を管理することはエロールに黙認されているようである。
しかしながら、デスが管理できる命はあくまで神よりも下位の存在に限られるのだった。
即ち、古代神と同格であった巨竜族であるブルードラゴン(L)を生き返らせることは、デスにとっても決して容易なことではなかったのである。
「帰れ!」(ゲーム内の台詞)というどこぞの塩対応と違い、「わざわざここまで来たのだ、手ぶらで帰すわけにもいくまい。」という文字通りの神対応精神を持っているデスは思案した。
そして、エロールの「神々とて、それほど先のことが観えているわけではない。」(ゲーム内の台詞)という言葉の如く、デスはシルバーの少し先の未来を観た上でシルバーに尋ねた。
「願いは叶えてやるが代償はいただくぞ。それでもいいか?」
シルバーは迷うことなく了承した。

こうして幼竜は生き返った。
大事典の「彼の宝を守るドラゴンは、かつて彼が助けてやった幼竜の成長した姿ということだ。」という説明における「シルバーが幼竜を助けた」とは「メルビルでの解放」だけではなく「デスによる蘇生」も含まれていたわけである。
デスに謝意を伝え、地上に戻ろうとするシルバーをデスは呼び止めて言った。
「こいつを連れていけ。役に立つはずだ。」
このような経緯でシルバーに同行することになったのが「デスによって造り上げられたモンスターなので、彼の命令は絶対に聞くが、他の者の命令はサルーインであっても聞かない。」(大事典)というブルードラゴン(S)であった。

#ニュアンスとしてはガラハドを蘇生させた際の「これで奴は生きかえったぞ。・・・。バルハラントに凍りついた城がある。そこに強力な武器がある。行ってみろ!」(ゲーム内の台詞)というデスの優しさによるオマケ情報のような感じでブルードラゴン(S)をオマケとして同行させてくれた。
#デスがブルードラゴン(S)をシルバーに同行させた意図は、デスには幼竜が衰弱死した理由(栄養失調)が分かったので、幼竜用の食糧調達係(養育係)にブルードラゴン(S)を任命したわけである。そして、このブルードラゴン(S)の同行は、デスがシルバーのこの先の未来を観た上での配慮でもあった。

(4)シルバーの最期
(i)シルバー散華
サンゴ海に戻ったシルバーと幼竜、そして新たに仲間になったブルードラゴン(S)の1人と2匹に残された時間は長くは無かった。
シルバーにサンゴ海の海賊から「マスク島に来てほしい」という旨の書状が届いたのである。
その書状を見たシルバーは何かを決断したように、目に付いたバファル帝国発の悪徳商人の船を襲い、金品を奪った。
そして、それを持ってアロン島のジャングル・・・ゲッコ族の洞窟に行くと、ゲッコ族長に懇願した。
「あの洞窟(ゲッコ族の元住処の洞窟)を使わせてほしい!」と。
元気になった幼竜の姿、逆に以前のようなみなぎる生命力を全く感じられなくなったシルバーの姿を見て、全てを察したゲッコ族長は答えた。
「あの場所は一度放棄した場所だ。お前達ならば自由に使うがいい。」
その答えに安堵したシルバーは悪徳商人から奪った金品全てを謝礼としてゲッコ族に渡した。
そして、幼竜にオパールを託し、ゲッコ族の元住処でオパールを護るように言うと、ドラゴン2匹を残して1人出港した。
約束の場所・・・マスク島に訪れたシルバー。
マスク島を取り囲むバファル帝国の海軍艦隊。
・・・こうして伝説の海賊キャプテンシルバーはサンゴ海に散ったのであった。

(ii)シルバーの財宝伝説
「伝説の大海賊」(大事典)と称されるキャプテンシルバー。
ゲームをプレイしていてシルバーについて分かることは「アロン島にはシルバーの財宝が隠されている」という噂のみ。
確かにシルバーの洞窟に隠されている「風」のオパールは唯一無二の財宝ではあるが、他の金品的な財宝についてはゲッコ族長が「キャプテンシルバーの財宝を好きなだけ持っていくがいい! 」(ゲーム内の台詞)というほどたくさんあるわけではない。
そもそも、本稿の推察によれば、シルバーは金品目的で海賊をしていたわけではない。
つまり、シルバーはバファル帝国の暴走を抑制するために海賊行為をしていたにすぎない。
そのため、帝国の軍艦を返り討ちにしたり悪徳商人の船を襲撃したりしても、金品を奪うのではなく船ごと沈めていたのだと思われる。
#占領下で被害にあったアロン島やリガウ島に金品を届けると、それを奪い返すための争いが繰り返されることが危惧されたので、船ごと沈めていた。
従って、シルバーは(i)で述べたようにオパールについては幼竜に託すことで意図的にシルバーの洞窟に隠したが、金品類の財宝についてはそもそも全く持っていなかった(隠していなかった)のである。
それにもかかわらず、どうして後世まで語り継がれるシルバーの財宝伝説は誕生したのだろうか?
この真相は(i)で述べたシルバーの最後の海賊活動が噂の発端になっているのであった。
シルバーはデスが幼竜を蘇らせた際に、自分の命はもう長くないことを悟っていた。
心残りは「幼竜を今後安全に暮らせる場所に送り届けること」のみ。
そのような状態で冥府を後にし、サンゴ海に戻った時に、シルバーにサンゴ海の海賊から「マスク島に来てほしい」という旨の書状が届いたのであった。
その書状を読んで、自分に残された時間はもう残りわずかであるが、新たに加わった海賊仕事を終えるまでは生きながらえようと気力を奮い立たせた。
そして、最後の仕事の一つである「幼竜が安全に暮らせる場所の確保」を速やかに達成するために、即ち目星をつけていたゲッコ族の元住処を利用させてもらうために最初で最後の金品強奪((i)で述べた悪徳商人の船の襲撃)を行ったのである。
#さすがにタダで利用させてもらおうとは思わなかった。
#当時、人間とゲッコ族の交流は現在ほどあったわけではないが、細々とは金銭・物品の取り引きはなされていたと思われる。
悪徳商人の船を襲撃して、奪った金品を持ってジャングルに消えていくシルバー。
その姿をたまたま目撃した海賊たちがいた。
そして、その海賊たちは「大海賊シルバーは今までに奪った金品を全てアロン島のジャングルに隠している!」と思い込み、それがパイレーツコーストの海賊たちの間で噂話として広がることで、「アロン島にはシルバーの財宝が隠されている」という現在まで語り継がれるシルバーの財宝伝説になったわけである。

一方で、シルバーの財宝伝説は海賊たちだけでなくゲッコ族にも伝わっている。
この経緯としては、シルバーの懇願に対してゲッコ族長は「あの場所は一度放棄した場所だ。お前達ならば自由に使うがいい。」と元住処の使用を許可したのであるが、ゲッコ族長のこの言葉は元住処をシルバーに譲渡することを意図していた。
それ故に、元住処はゲッコ族の間で「シルバーの洞窟」と呼ばれるようになったのである。
また、ゲッコ族はそれほど金品を必要としていなかったので、シルバーが謝礼として置いていった金品を一旦シルバーの洞窟に保管することにした。
#シルバーが謝礼として置いていったものだと分かるようにシルバーの洞窟に保管した。
そして、有事の際等で必要になったらシルバーの残した金品を使わせてもらうことにしたのである。
従って、本稿でのシルバーの洞窟に関する疑問についての推察をまとめると、
・どうしてゲッコ族長はシルバーの財宝のことをやたら詳しく知っているのか?
→もともとはゲッコ族の住処だったから。
・どうしてゲッコ族の元住処なのにゲッコ族は「シルバーの洞窟」と呼ぶのか?
→当時のゲッコ族長がシルバーに譲渡したから。
・どうしてゲッコ族長は「シルバーの財宝を好きなだけ持っていくがいい!」というように、まるで財宝の管轄権を持っているかのような口ぶりだったのか?
→「シルバーの財宝」は正確には「シルバーがゲッコ族のために謝礼として置いていった財宝」であり、有事の際には使ってもよいと伝わっていたから。
ということだったわけである。

なお、ブルードラゴン(S)はデスから幼竜の食糧調達係(養育係)を任命されていたので、(シルバーがいなくなろうとも)幼竜とともにシルバーの洞窟に棲むことにし、その後も面倒を見続けて現在に至るわけである。
#これが本章の最初の問い「デスの命令しか聞かないブルードラゴン(S)がどうしてシルバーの洞窟で財宝を護っているのか?」の真相である。
(iii)幼竜蘇生の代償
幼竜は神々に並ぶ巨竜族ブルードラゴン(L)の末裔。
神クラスの幼竜をデスはいかにして蘇らせたのか?
そして、その蘇生の対価としてシルバーがデスに払った代償とは何だったのか?
この点について考えてみると、もっと根本的な疑問が生じてくる。
それは「そもそもデスはどのようにして人間を生き返らせているのか?」ということである。
ロマ1のゲーム内において、デスはガラハドの蘇生を「つまらないこと」と言い切り、何の苦も無くサラっと蘇らせている。
死者の王だからそれくらい簡単にできて当然だ・・・と思うかもしれないが、蘇生術法というとドラクエならばザオリク、FFならばアレイズに該当する術法であり、ロマ1でいうならば気術で習得できそうな術法である。
しかしながら、死の神デスは気術と対になる邪術のプロフェッショナルなので、気術を使用できるのか?となると疑問である。
#火と水、土と風、幻と魔の対になる術法を使用可能なサルーインも闇と邪の対になる光と気の術法は使用できない。

では、邪術で蘇生させているのか?
それらしい術法としては「意識の無い肉体を邪悪な霊で満たし、操作する」(大事典)術法であるアニメートがあるが、蘇ったガラハドが操られていたり、ゾンビ化していたりするようには見えないから、アニメートを使用しているワケでもないようである。
そこで、デスとの交渉に着目してみる。
デスとの交渉について整理すると以下のようになる。
デスへの依頼 | デスからのギフト | デスへの代償・対価 | 強い武器をくれ! | 死の剣&死の鎧 | 仲間一人の命 | ガラハドを生き返らせろ | ガラハド蘇生 | 主人公の最大HP50 | 幼竜を生き返らせてくれ | ? | ? |
まずは「強い武器をくれ!」から見てみると、死の剣は「デスが自分の脊髄から作ったといわれる剣」(大事典)なので、依頼の度に毎回作っていたら大変そうではあるが、死の鎧とセットでポンポン交換してくれることから察すると、定期的に製作していてストックがそれなりにあるのだと思われる。
よって、この場合は手元にある死の剣と死の鎧を主人公に渡して、労力は仲間の命を奪うことに使うことになる。
そして、この仲間の命を奪う方法はおそらく邪術ライフドレインの派生術法であると思われる。
邪術ライフドレインは「邪気を発して相手の生命力を吸い取る。さらに、奪った生命力の生命力を逆転させて闇の生命に変換し、自分の体力を回復させられるのだ。」(大事典)というHP吸収術法であるが、邪術のプロフェッショナルのデスはライフドレインをさらに強力にした命(魂)そのものを吸い取り吸収するソウルスティール的な術法を使用できるのであろう。

出典:ロマンシングサガ2, スクウェア.
次に「ガラハドを生き返らせろ」を見ると、ガラハドを蘇生させる方法は分からないが、主人公の最大HPを50減少させる方法もおそらく邪術ライフドレインの派生術法であると思われる。
つまり、邪術のプロフェッショナルであるデスは、通常ではHPの吸収しかできないライフドレインを、上手く力加減を変えることで命を奪ったり、最大HPを奪ったりすることもできるようなのである。
従って、邪術のプロフェッショナルのデスならば、邪術を通常利用した場合とは異なる派生した効果で使用することも可能と思われるのである。
それならば、邪術アニメートも通常とは違った効果で使用することが可能なのかもしれない。
具体的には言えば、「意識の無い肉体を邪悪な霊で満たす」(大事典)のではなく、「意識の無い肉体(命を失った肉体)をその者の霊(命)で満たす」という効果である。
このようなアニメートの派生術法によってガラハドを蘇らせたのではないだろうか。
#従って、「強い武器をくれ!」でガラハドを生贄にしてから「ガラハドを生き返らせろ」をした場合には、デスはまずソウルスティールでガラハドの命(魂)を食べて、蘇生させるために一度食べたガラハドの命(魂)を吐き出して、それをガラハドの遺体に投げ込んでいることになる。
このような方法でデスが人間を生き返らせたり、代償を奪っていたりしているとすると、幼竜を生き返らせるためにはどのような方法を用いて、どのような対価・代償をどのような方法で奪ったと考えられるだろうか?
人間の蘇生にはアニメートの派生術法を使用したと思われるが、神々に並ぶブルードラゴン(L)の命を扱うことはデスにとっても難しい(できない)ため、同じ方法を使用することはできなかったと思われる。
そこでデスが考え出した方法は、おそらくライフドレインの派生術法である。
「邪気を発してシルバーの生命力を吸い出し、それを巨竜族の生命に変換して、幼竜に流し込む」というライフドレインを応用した高等技術により、デスは幼竜を蘇らせたのである。
通常ならば同じ方法で人間の生命力を巨竜族の遺体に流し込んだとしても、人間と巨竜族では命(魂)の格が違い過ぎて蘇らせることはできなかっただろう。
しかしながら、シルバーと幼竜の場合には、シルバーが風のオパールに認められるほどの風の属性の才能を持っていたこと、そして幼竜が風の属性を持つブルードラゴン(L)であったことで、奇跡的にシルバーの生命力(命)が幼竜と適合したのであった。
それにより、デスであっても不可能と思われたブルードラゴン(L)の蘇生が可能になったのである。
#デスは未来を観て、この方法ならば成功すると確信した上で、「願いは叶えてやるが代償はいただくぞ。それでもいいか?」とシルバーに尋ねた。

この方法によって幼竜は蘇った。
逆に言えば、シルバーの生命力(命)はこの時点で全て失われたことになる。
本来ならば、その場でシルバーは死亡してもおかしくないはずであったが、不屈の根性・・・「幼竜を地上に送り届けるまでは死ねない!」という強い想いによってシルバーはまだ動くことができたのだった。
#「ジョジョの奇妙な冒険」第5部で組織のボスによって致命傷を負った後のブチャラティのような状態。
このようにしてシルバーは自身の生命力を失ったのであるが、その生命力は幼竜に移されたのであって、デスの労働への対価・代償として失ったわけではない。
では、デスは幼竜蘇生の代償としてシルバーから何を奪ったのか?
ガラハド(人間)の蘇生ならば最大HP50で済むが、神々に並ぶブルードラゴン(L)の蘇生となると通常の人間の限界である最大HP999でも済まないだろう。
それでも最大HPを取れるだけ取ったのかというと・・・幼竜を蘇生させるためのドナーとして生命力を失っているシルバーの最大HPなど、それはもはや抜け殻のようなものであって、デスにとっては何の意味もなさないもの(無味なもの)だろうから、最大HPを奪うということはしなかったのだと思われる。
では何を奪ったのかというと・・・何も奪わなかった。
もっと正確に言えば、何も奪えるものがなかった。
「死後のシルバーの魂が代償ではないのか?」という可能性もあるが、おそらく神クラスの巨竜族を蘇らせるという奇跡に生命力(命)を使ったことで、シルバーの魂は冥府に行くこともなく消滅してしまうのだと思われる。
そういう結末も分かった上で、デスはシルバーの願いを聞き入れたのである。
従って、強いて言えば「誰よりも風の属性の才能に恵まれた海風のように爽やかな一人の人間の魂の最期(消滅)を見届けられる唯一の存在になれること」がデスの得た代償だったのではないだろうか。
#神クラスを蘇らせることは容易ではない。容易ならば破壊女神サイヴァの復活という話もありえてしまうが、そういった動きは見られない。デスが仮に幼竜蘇生と同じ方法で破壊女神サイヴァの復活を試みるならば、サイヴァの小指の先から生まれたエロール、サイヴァの骨から生まれたデス、サイヴァの心臓から生まれたサルーイン、サイヴァの髪から生まれたシェラハ(基礎知識編)の4神の命は最低限必要であろう。
なお、デスのステータスは以下の通りで「邪術ライフドレイン、アニメートのどちらも使えないじゃないか!」という反論があるかもしれない。
HP | 防 | 腕 | 体 | 器 | 早 | 知 | 精 | 愛 | 魅 | 金 | 聖 | 竜 | 鳥 | ![]() |
||
9922/10000 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | 0 | 80 | 4 | - | - | - | |||
火 | 水 | 土 | 風 | 冷 | 雷 | 光 | 闇 | 回 | 瞑 | 動 | 毒 | 幻 | 痺 | 石 | 死 | |
- | - | - | - | - | - | × | ○ | - | - | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | |
1:死の剣14 | ||||||||||||||||
邪:99/99/255(デスハンド、イーブルスピリット、アゴニィ、ポイズンガス) |
(5)エピローグ
(i)シルバーがマスク島に向かった理由
第1章で述べたように、「帝国によって抑圧されていた海賊や、奴隷にされていた者たちに海賊としての命と自由、そして規律(鉄の掟)を与えて現代の海賊の礎を築いた海賊たちにとっての英雄」であるシルバーはサンゴ海の海賊たちから慕われていた。
しかしながら、海賊たちの中にはそれを面白く思わない者・・・シルバーが英雄として尊敬されていることを妬む者もいたのである。
そして、その海賊の嫉妬心はシルバーの抹殺計画につながった。
その海賊は帝国海軍の船を襲撃した際に、帝国海軍にシルバーの抹殺計画を持ち掛けたのである。
「お前らはシルバーが憎いんだろ?手を貸してやる。」
「本当は俺様がとどめを刺してやりたいが、そうすると海賊の中での俺の立場が危なくなる。」
#他の海賊たちはシルバーを慕っているから。
「俺様がシルバーをマスク島に誘い出してやるから、お前たちで始末してくれ!」
バファル帝国にとってのシルバーは「風のオパールを強奪しただけでなく、メルビルを破壊して壊滅的な被害をもたらし、なおかつその後の追手を全て返り討ちにしている大犯罪者」である。
故に「シルバーは消したい邪魔者」という点で利害が一致したため、帝国はその海賊の提案を受け入れた。
その後、その海賊はシルバーに「マスク島に来てほしい」という旨の書状を届ける。
おそらく「海賊業について相談がある」や「決闘をするから立会人になってほしい」といった海賊活動のトラブルに関する理由が書かれていたのだと思われる。
・・・自分の命はもう長くない。
残された時間で幼竜が安全に暮らせる場所を確保してやらなければならない。
そうではあるが、サンゴ海の海賊たちは自分を慕ってくれているから要望には応えてやりたい。
そんな責任感から、シルバーは「幼竜が安全に暮らせる場所の確保」だけでなく「マスク島に行く」ことも残された最後の仕事に加えたのであった。
そして、ゲッコ族と話をつけて幼竜の住処を確保し、最後の海賊仕事を全うするためにマスク島に向かったのである。
さて、本稿ではキャプテンシルバーのモデルをワンピースのフィッシャー・タイガーとして推察を進めてきた。
フィッシャー・タイガーは「人間を殺さない」という信条を持っていたが、その最期では、
「この世にゃァ心の優しい人間たちはいっぱいいるんだ!!!そんなことは分かってる!!!なのに・・・死んで消えゆく者たちが!!恨みだけこの世に残すなんて滑稽だろう!!!」
「・・・頭じゃあ分かっていても・・・!!!俺はもう心の『鬼』が邪魔をする。体が・・・その血を拒絶する!!!」
「俺はもう・・・!!! 人間を・・・!!! 愛せねェ・・・!!!」
と悲痛な胸の内を吐露して、その生涯を終えている。
#参照:ワンピース(63).「第623話 海賊フィッシャー・タイガー」

出典:尾田栄一郎(2011年8月)「ジャンプコミックス ワンピース(63)」. 集英社. p.171
では、シルバーもフィッシャー・タイガーのように非業の死を遂げたのか?
・・・おそらくそうではないだろう。
きっとシルバーは満たされた気持ちの中でその生涯を終えたのだと思われる。
フィッシャー・タイガーにちなんでワンピースで例えるならば、ドクター・ヒルルクのような最期だったのではないだろうか。
(ii)ドクター・ヒルルクの軌跡
ドクター・ヒルルクとは「ヤブ医者」と呼称される自称「医者」(であり、チョッパーの(最初の)育ての親のような存在)である。
彼の逸話はワンピース16巻の第141話「ヤブ医者」、第142話「ドクロと桜」、第143話「不器用」、第144話「雪物語」、第145話「受け継がれる意志」において描かれている。
ヒルルクの住む国は医療大国として知られていたが、悪政を行う国王が優れた医者20人だけを抱え込んで、他の医者たちを全て国外追放してしまっていた。
そのため、国民が医療を受けるためには悪政を行う国王に従わざるをえず、国民たちは絶望していた。
そんな状況において無料で診療するものの医療技術が怪しいために人々から疎まれていたのがヤブ医者のヒルルクであった。
ヒルルクは怪しい医療行為を行う一方で、30年もの時間を使って人々の「病んだ心」も癒せる万能薬の開発を行っていた。
そして、自分が余命幾ばくもないことを悟った後に、ついにその万能薬の開発に成功する。
時を同じくして、国王お抱えの20人の医者全員が病に倒れたという情報がヒルルクの耳に届いたのだった。
そこでヒルルクは国王が医者狩りをしていることを知りながらも、国王お抱えの医者を助けるために国王の城に向かう。
しかしながら、それはヒルルクを誘い出すための国王の罠であった。
取り囲む国王軍に銃を向けられたヒルルクは呟いた。
「・・・何だよ。よかった・・・病人はいねェのか・・・。」
「俺ァてっきり・・・国の一大事かと・・・何だァ・・・俺がダマされただけか・・・」
そして、ヒルルクを撃ち殺すように兵士たちに命令する国王の言葉を遮ってヒルルクは言った。
「やめておけ。お前らにゃあ、俺は殺せねェよ。」
「人はいつ死ぬと思う・・・?」
「心臓を銃で撃ち抜かれた時・・・ ・・・違う。」
「不治の病に侵された時・・・ ・・・違う。」
「猛毒キノコのスープを飲んだ時・・・ 違う!!!」
「・・・人に忘れられた時さ・・・!!!」
「俺が消えても俺の夢は叶う。病んだ国民の心もきっと救えるさ・・・!!」
上記のように自分の思いを語ったヒルルクの最後の言葉は、
「まったく!!!! いい人生だった!!!!」
こうしてヒルルクは笑顔で最期を迎えたのだった。
#参照:ワンピース(16).「第145話 受け継がれる意志」

出典:尾田栄一郎(2000年12月)「ジャンプコミックス ワンピース(16)」. 集英社. p.177
(iii)受け継がれる意志
マスク島に到着し、帝国海軍に取り囲まれたシルバーの心には絶望の気持ちなど全く無かった。
ドクター・ヒルルクが病人がいなかったことに安堵したように、シルバーも海賊のトラブルが無かったことに安堵したのであろう。
バファル帝国の支配下にあるアロン島で生まれ、その支配にたった一人で反旗を翻して見事に打ち破った。
バファル帝国の暴走を再び起こさせないための抑止力となる鉄の掟をサンゴ海の海賊たちに伝えた。
支配されていた自分と重ね合わせて観ていた幼竜・・・その幼竜が安全に暮らせる場所を手に入れた。
(死の神の助力・・・ブルードラゴン(S)も得たから、幼竜の今後の健やかな成長にも不安は無い。)
使い方を誤れば危険な宝石・・・「風」のオパールも幼竜に託した。
そして、最後の仕事・・・マスク島での立ち合いもこれで完了した。
・・・シルバーは自分のやるべき仕事は全て成し遂げたという達成感・安堵感で満たされ、もはや何も思い残すことは無かった。
「まったく!!!! いい人生だった!!!!」
本来ならば幼竜を蘇らせた時点で死んでいてもかおしくないはずだったが、不屈の精神でここまで生きながらえていたシルバーも、肩の荷が下りてようやく自分の死を受け入れられたのである。
こうして大海賊キャプテンシルバーはその生涯を終えた。
そして、その高潔な魂の消滅を死の神デスは冥府から見届けたのであった。
伝説の大海賊シルバーは魂ごと消滅した。
しかしながら、ドクター・ヒルルク流に言えば、シルバーは今もまだ生きている。
即ち、バファル帝国の暴走を再び起こさせないための抑止力として説いた鉄の掟は250年に渡って現在に至るまでサンゴ海の海賊たちの規律として受け継がれている。
中でもキャプテンホークはシルバーの意志を色濃く受け継いでいる海賊と言えるだろう。
また、シルバーの洞窟のブルードラゴン(L)もシルバーから託された「風」のオパールをひたすら護り続けてきた。
ブルードラゴン(L)もまたシルバーの意志を受け継ぐ者なのである。
#「ミニオン論5」において述べたように、一度はミニオンにオパールを奪われたが、取り返している。

このように、シルバーは今も忘れられることなくサンゴ海の海賊たちやブルードラゴン(L)の中に生き続け、シルバーの夢の続きは彼らに託されているのであった。
おわりに:
本稿では、ゲーム内や文献では語られないシルバー伝説について推察した。
風は「吹いて」初めて風になる。
バファル帝国に反旗を翻した時、シルバーは初めて風になった。
時にはそよ風のように優しく、時には嵐のように激しく、サンゴ海に吹いたシルバーという風は、サンゴ海の海賊たちにとっての英雄というだけでなく、デステニィストーンの一つ「風」のオパールに認められ、巨竜族ブルードラゴン(L)の幼竜に懐かれ、四天王フレイムタイラントや死の神デスに一目置かれるような傑物であり、その戦いの日々はまさにロマンシングサガだったと言えるでしょう。