虎の巣head

クラウス論

(2021年05月14日発表、2022年02月08日質疑応答を追加)

 1.クラウスについての疑問
 2.クラウスとは誰か?
  (1)カール1世の場合
  (2)カール2世の場合
  (3)カール3世の場合
  (4)さらなる可能性
 3.ガーラルシューズについての疑問
  (1)ニーサ教の違いに関する障壁
  (2)地底人の気持ちに関する障壁
 4.語られぬロマン
  (1)ニーサに奉納されたガーラルシューズ
  (2)カール3世に献上されたガーラルシューズ
 あとがき
 質疑応答
1.クラウスについての疑問
 クラウス論と言われても、クラウスって何?誰?と思う人もいるかもしれない。
 クラウスとは、アイシャの初期イベントにおいてナイトハルトとともに訪れたローザリアで、現ローザリア国王カール3世が語る悲恋の物語に登場するかつてのローザリア国王のことである。
 ナイトハルトの連れてきたタラール族の娘の名前がアイシャであることを聞いて、カール3世は次のように語る。
 「アイシャか・・・。2代目の王クラウスがまだ皇太子だった頃、タラール族と協力してステップにいたオングル族を打ち破ったことがある。その時のタラール族のリーダーがアイシャといったそうだ。クラウスとアイシャは愛し合うようになったが、タラール族の掟ではタラール族以外の者との結婚は許されていなかった。二人は結ばれることなく終わったそうだ。」
 

 この話を聞いて、「あぁ、なるほど、クラウスとは2代目の王のことなのか。」
 ・・・とゲームをプレイしているだけなら思うかもしれない。
 しかしながら、ロマ1世界の歴史と照らし合わせてみると、クラウスとは一体誰のことなのか?という疑問に変わるのである。

 ローザリア王国は物語の舞台からおよそ140年前のAS864年にライマン家当主のハインリヒ2世が独立宣言をすることで建国され、ハインリヒ2世がローザリアの初代国王になった。(基礎知識編、大全集)
 その後、AS880年にハインリヒ2世が逝去するが、ハインリヒ2世には世継ぎがいなかったため、傍流バーズリー家のレオポルドが王位を受け継ぎ、ローザリアの第2代国王となったのである。(基礎知識編、大全集)

 ではクラウスとは第2代ローザリア国王レオポルドのことなのか?
 いや、レオポルドは初代国王ハインリヒ2世の子ではないので、皇太子という立場になったことはないのである。
 従って、2代目の王クラウスとは第2代国王レオポルドではない。

 では2代目の王クラウスとは一体誰のことなのか?
 大全集には、クラウスとは「カール2世の別名」という記述がある。
 なるほど、それならば2代目の王とはカールの2代目ということなのか?
 一方で時織人には、悲恋の物語の「件の若き国王とは、実はカール3世本人のことではなかったか」と噂されているとの記述もある。
 このように、文献をもとにすると、2代目の王クラウスとは一体どの王のことを指すのかを必ずしも断定できるわけではないのである。
2.クラウスとは誰か?
 2代目の王クラウスとは誰のことなのかを明らかにするために、ローザリアの歴代国王がクラウスであった場合について考えてみましょう。

(1)カール1世の場合
 クラウスとは先々代国王カール1世の場合・・・つまり、「2代目の王」とはローザリア第2代国王レオポルドから始まり現在も続いている「バーズリー朝の2代目の王」という意味の場合である。
 カール1世はAS899年にオービルの戦いでバファル帝国に勝利して北バファル戦争を終結させ、AS925年にアルツールの戦いで侵攻してきたクジャラートを撃退し、さらにAS928年にミルザブールの戦いに援軍として参加し勝利をもたらした英雄であり(基礎知識編、大全集)、ゲーム内においてもタイニィフェザーの羽を持ち帰っていたり(ナイトハルト談、ローザリアの老人談)、名誉騎士になっていたり(テオドール談)といった武勇伝を聞くことのできる傑物である。
 

 AS899年のオービルの戦いのときには、カール1世はまだ皇太子であった。(基礎知識編)
 AS899年頃はロマ1の物語の舞台からおよそ100年前であり、フラーマやソフィア、ウェイ=クビンという実力者達の青春時代であり(本サイトの「ウェイ=クビン論」参照)、おそらく大海賊キャプテンシルバーの活躍した時代でもある(この件については続稿「運命石論」で述べる)。
 カール1世がクラウスならば、カール1世、族長アイシャ、フラーマ、ソフィア、ウェイ=クビン、キャプテンシルバーという歴史に名を残す者たちが同時代を生きたことになるので、彼らの織り成すロマンシングな物語に思いを馳せ、胸が躍る。

 しかしながら、カール1世が2代目の王クラウスであるというには、引っかかることもある。
 というのは、カール1世が皇太子の頃は「皇太子カール」と呼ばれていたのに対して(基礎知識編)、悲恋の物語の皇太子は「皇太子クラウス」と呼ばれていたのである(大全集)。
 同じ人物に対して「皇太子カール」と「皇太子クラウス」という二つの皇太子○○という呼称を用いるのか?と考えると、カール1世はクラウスではないように思う。

(2)カール2世の場合
 クラウスとは先代国王カール2世の場合・・・つまり、「2代目の王」とは「カールの2代目」という意味の場合である。
 先に述べたように、大全集にはクラウスとは「カール2世の別名」という記述があるので、カール2世が悲恋の物語の皇太子で確定である・・・と思うかもしれない。
 しかしながら、大全集の記述には少々怪しいところがあるのである。

 大全集のクラウスの項目には確かに「カール2世の別名」と記述されているのであるが、一方でカール2世の項目には次のように記述されている。
 「カール1世の子。父に負けず劣らずの勇者で、風の守護者タイニィフェザーの羽を持ち帰った剛の者。」
 ・・・カール1世の子というのは当然納得できる。
 しかし、タイニィフェザーの羽を持ち帰ったという記述については疑念が生じる。
 というのも、ローザリアの老人が自信満々に「スカーブ山には巨大な鳥が住んでいるのだ。その羽を持って帰ってきた勇者が今までに2人いる。先々代の国王カール1世と現在の皇太子ナイトハルト殿下だ!」と語る内容と食い違うからである。
 従って、大全集のカール2世についての記述を素直に信じるのは危険なように思うので、それに伴ってカール2世に言及しているクラウスとはカール2世の別名という記述についても鵜呑みにするわけにはいかないだろう。
 

 また、カール3世にとってカール2世は実の父親なのであるが、その父親のことを悲恋の物語の中で「2代目の王クラウス」と呼ぶことにも違和感がある。
 父親のことを名前で呼ぶ文化が無いわけではないが、ナイトハルトが羽を取りに行った逸話においてカール1世のことを「わが曽祖父カール1世」と呼んでいることから考えると、カール3世もカール2世について話す場合には「わが父カール2世」と呼んだほうが自然ではないだろうか。
 このように、カール3世のクラウスに対する「2代目の王クラウス」という呼び方は、カール3世とクラウスの関係が親子というよりは、より世代を隔てている印象を受けるのである。
 

(3)カール3世の場合
 クラウスとは現国王カール3世の場合・・・つまり、クラウスが2代目の王というのはデタラメな誤った情報、もしくは何の2代目の王なのかが不明な場合である。
 ロマ1の物語の舞台においては病気療養中で国政を息子のナイトハルトに任せているカール3世であるが、「かつては勇猛果敢で野心的な王として名を馳せており、積極的な領土拡張政策を押し進めていた」(時織人)ということなので、若かりし頃に領土拡張政策の一環としてタラール村に遠征し、悲恋の物語につながった・・・ということなのかもしれない。
 しかしながら、そうだとすると引っかかることがある。
 それは、タラール村への遠征・支配がカール3世以前になされていなかったというのは不自然ということである。

 まず、地図で見る限りは、クリスタルシティとタラール村の距離は、クリスタルシティとイスマス、オービルと同じくらいの距離であり、かつタラール村はニューロード沿いに存在するから、その存在を先代以前の国王が知らなかったということはないだろう。
 そして、タラール村は、ナイトハルトが少し圧をかけただけで容易に従属を誓わせることができたように、ローザリアが望めばいつでも保護下に置くことができる程度の脆弱な集落である。
 これらのことから、タラール村はカール3世以前の王でも容易に従属させることができたであろう。
 いやそれは、ニザムとナイトハルトの会話であったように、タラール村の存在などローザリアにとっては毒にも薬にもならないから放置されていただけなのでは?と思うかもしれない。
 しかしながら、タラール村はローザリアにとって決して毒にも薬にもならない存在ではないのである。
 

 というのは、徹底攻略編に「カクラム砂漠一帯の乾燥地帯は名馬の産地として有名である。東側を通るニューロードを利用して、ガレサステップ産の馬たちが都会に売られていく。」、「ステップ地方で生まれた馬は血統がよく、名馬として尊重されている。ローザリア王国騎兵隊の馬たちも、ほとんどがガレサステップ産」と記述されているように、タラール村はローザリアと名馬をつなぐ要所だからである。
 つまり、タラール村を押さえるということは、ステップ産の名馬の供給ルートを確立することができるというだけでなく、ステップ産の名馬が敵対国であるバファルやクジャラートに流出することを防ぐことができるという軍事的に大きなメリットがあるのである。
 このような軍事的に大きなメリットがあるにもかかわらず、幾多の戦時中や戦後の緊張状態の中で先代の王たちがタラール村を放置しておくということが果たしてあるのだろうか?

 大全集のカール3世の項目にはカール3世について「かつては父祖に劣らぬ強者であった」という記述があるので、カール1世だけでなく、カール2世も類稀なる猛者であっただろう。
 このような猛者たちの存在と当時のローザリアの置かれた状況を合わせて鑑みると、カール3世以前にタラール村を放置しておいたということは到底ありえないように思う。
 従って、カール3世によるタラール村への領土拡張政策の際に悲恋の物語が起こったということはないのではないだろうか。

 それならば、先代以前に支配されたタラール村にカール3世が遠征したときに悲恋の物語が起こったのでは?ということも考えられるかもしれない。
 しかしながら、上述で述べたように軍事的に有益であるタラール村がローザリアに支配されないままでいた理由は悲恋の物語の一件によってタラール村とローザリアの友好関係が築かれたからとしか考えようがない。
 以上から、カール3世が悲恋の物語のクラウスであるということはないように思う。

(4)さらなる可能性
 上述(1)~(3)においてカール1世、2世、3世がクラウスだったのかについて考察をした。
 いずれもそれぞれの王がクラウスではないと断定できるものではないが、クラウスとするには怪しい点があることを述べた。
 では、結局のところ、クラウスとは誰なのだろうか?
 カール1世、2世、3世がいずれもクラウスではないと仮定すると、新たにもう一つの可能性が見えてくる。

 上述の(1)ではカール1世がバーズリー朝の2代目の王と述べたが、実はそうではないという可能性もあるのではないだろうか。
 つまり、(1)では第2代国王レオポルドの息子がカール1世であると想定して述べたのであるが、そうではなくレオポルドとカール1世の間にはレオポルドの息子でありカール1世の父親である人物がもう1代存在したのではないだろうか。
 AS880年にレオポルドが国王に即位し、AS899年にはカール1世が皇太子であったことから、AS890あたりにレオポルドが王位を息子に譲り、カール1世が皇太子になったというような経緯でも筋が通るだろう。
 そして、そのレオポルドの息子でありカール1世の父親であるバーズリー朝2代目の王である人物こそが、そうクラウスである。

 AS880年にレオポルドがローザリア第2代国王になったことで、その息子であるクラウスは皇太子となった。
 当時はローザリア王国建国以前のAS852年から続く北バファル戦争の最中であり、ローザリアにとって自国の軍事力を強化することは最優先事項だったはずである。
 軍事力強化を画策して北方に赴いていた皇太子クラウスがローザリアの北方のガレサステップを通ったときに1人の女性が蛮族に襲われているのを目撃し、救援に入る。
 後のアイシャとナイトハルトの出会いのように、族長アイシャと皇太子クラウスも出会ったのである。
 族長アイシャから事情を聴いた皇太子クラウスは、族長アイシャ率いるタラール族と協力して、当時のガレサステップで猛威を振るっていたであろうオングル族を打ち倒す。
 その一件を発端として皇太子クラウスと族長アイシャはお互いに想い合う仲になったことから、皇太子クラウスはタラール族を支配下に置くことはせず、友好関係を築くに至った・・・という経緯である。
 #大全集のタラール族の項目には、タラール族は「ローザリア王家とは長年友好関係を保ってきた」と記述されている。
 
 こうして、ローザリアはステップ産の名馬の供給ルートを確立することができたので、強力なローザリア王国騎兵隊を組織することができるようになった。
 そして、それが北バファル戦争を終結させたAS899年のオービルの戦い等の一連の戦いに配備されることで、ローザリア軍のユニコーン騎士団と王国騎兵隊による連携戦術の「建国以来不敗」(大全集)を実現することにつながったのであろう。

 以上のように本章では、クラウスとはレオポルドの息子でありカール1世の父親であるバーズリー朝2代目の王であるという説について述べた。
 そのような人物の存在がロマ1関連の文献に記述されているわけではないので、この説は筆者の一推察に過ぎない。
 しかしながら、先述したようにクラウスがカール1世、2世、3世のいずれかであるとするには怪しい点があることから考えると、もう一人の別の人物が存在するという可能性も十分にあるのではないだろうか。
3.ガーラルシューズについての疑問
 クラウスの存在に関連して、ガーラルシューズに関する疑問についても言及したい。
 ゲーム内においてガーラルシューズはカクラム砂漠の地下の地底人の町にある宝箱に納められていて、地底人の長ジェフティメスにニーサの戦士と認められることで、その宝箱を開けることができるようになる。
 また、ガーラルシューズについて大事典には次のように解説されている。
 「ガーラルの発見直後にたった二つだけ製作された。一つはローザリア国王カール3世へと献上され、もう一つは大地と豊穣の女神ニーサに奉納されている。この靴の完全度カール3世は大いに満足し、ガーラルの研究開発スタートしたという。製作の難しさから現在は生産されていない。」
 この解説を読むと、おそらく「なるほど。砂漠の地下の地底湖の町にはニーサの祭壇があるから、地底人の町にあるガーラルシューズはニーサに奉納されたものなのだろう。」と思うことだろう。
 しかし、果たして本当にそうなのだろうか?

 クリスタルシティ内にニーサ神殿があり、アルベルトの両親がニーサ神殿に葬られたことからも分かるように、ニーサはローザリアにおいて宗教的に重要な神である。
 故に、ガーラルシューズがニーサに奉納されたという話はとりあえず納得できる。
 しかしながら、ニーサに奉納されたガーラルシューズが地底人の町に納められているものであるとするには、大きな障壁が二つあるのである。
 

(1)ニーサ教の違いに関する障壁
 重要な事実として、ローザリア王国において信仰されているニーサ教とタラール族や地底人が信仰しているニーサ教は別物なのである。
 大事典にはニーサ教について次のように解説されている。
 「教団は大きく二つに分けることができる。原始ニーサ教と近世ニーサ教だ。原始ニーサ教は実際のところ教団として運営しているわけではなく、地底人とタラール族のニーサ崇拝を便宜上こう呼んでいるだけである。一方、近世ニーサ教はローザリア国クリスタルシティに総本山を置く近代宗教。」
 「二つのニーサ教は完全な別物だが、唯一の共通点といえば、両者とも一切の飲酒を禁じ、絶対的な菜食主義を取っている点が挙げられる。」
 さらに、次のような記述もある。
 「二つのニーサ教はこれまで紛争を繰り返してきたが、今後とも和解する予定はないようだ。」
 「原始ニーサ教の聖地、ニーサの祭壇。土のデステニィストーンのトパーズが奉られているが、近世ニーサ教団は祭壇の存在すら知らない。」

 このような事実から、近世ニーサ教と原始ニーサ教の仲は決して良くはないため、近世ニーサ教であるクリスタルシティのニーサ神殿にガーラルシューズが奉納されたとしても、それを原始ニーサ教に譲るとは到底考えられないし、そもそも近世ニーサ教は砂漠の地下にあるニーサの祭壇の存在を知らないので、そこにガーラルシューズを奉納してほしいという話にはならないはずである。
 

(2)地底人の気持ちに関する障壁
 仮にガーラルシューズが地底人たちのもとに届いたとしても、地底人たちがそれを受け取るというところにも大きな障害がある。
 というのは、ゲーム内において、無視されたり、「上から来おったな!帰れ!」と一蹴されたりすることからも分かるように、地底人たちは現生人類が嫌いである。
 大全集にも地底人について「厭世的な人々で地上の人間を嫌っている」とはっきり述べられている。
 そのような現生人類嫌いの地底人たちが、現生人類が製作したガーラルシューズをニーサに奉納されたからといってすんなりと受け取るのだろうか?
 素直に考えれば、現生人類の作ったものなど汚らわしいと思い、そんな不浄なものをニーサに近づるなんてとんでもないと考えるだろうから、おそらく受け取りを拒否するだろう。
 

 このような理由から、地底人の町にガーラルシューズが大切に保管されているということは、実はかなり不自然なことなのである。
4.語られぬロマン
 ニーサの祭壇と縁のある地底人の町に納められているガーラルシューズなのだから、それはニーサに奉納されたものであると考えてしまいがちであるが、実はそうではないのではないだろうか。
 つまり、地底人の町にあるガーラルシューズはニーサに奉納されたものではなく、もう一足のカール3世に献上されたものではないだろうか。

(1)ニーサに奉納されたガーラルシューズ
 そもそもなぜガーラルシューズがニーサに奉納されたのか?
 ガーラルとは基礎知識編によれば「物語の舞台から約10年ほど前に発見された新素材。とにかく軽いのが特徴で、しかもきめが細かく、加工しやすい。」素材であり、大事典によれば「30年ほど前に発明された新素材。セラミックに近い分子構造をしている。」素材である。
 発明時期に違いがあるのが気がかりではあるが、これらの記述からすると、おそらくガーラルはセラミック・・・つまり陶磁器のようなものであるから、特殊な粘土を焼き固めることで作られるものなのではないだろうか。
 故に、大地からいただいた産物で作られたガーラルであるから、その恩恵のお返しとしてガーラル製品をニーサに奉納したのであろう。
 靴という特殊な製品が奉納されたのには、人と大地との接点が靴であり、人からの感謝の気持ちが最も伝わるというような意味合いがあったのかもしれない。
 ともかく、大地からいただいた恩恵の返礼として一足はクリスタルシティのニーサ神殿に奉納され、現在もそこに納められているのであろう。

(2)カール3世に献上されたガーラルシューズ
 そして、もう一足はローザリア国王カール3世に献上された。
 文献に記述は無いが、おそらくガーラルはローザリアで発明されたためであろう。
 では、そのガーラルシューズがどうして地底人の町に納められるに至るのか?
 その経緯についての推察を述べる。

 カール3世は武勇を誇る一方で、ロマンチストな一面もあったのだと思われる。
 なぜなら、悲恋の物語の「件の若き国王とは、実はカール3世本人のことではなかったか」と噂されている(時織人)くらいなので、カール3世が宮中の者たちに悲恋の物語を何度か語ったことがあり、それも疑惑を持たれるくらい雰囲気のある語り方をしたのだと思われるからである。

 そんなカール3世は、2足のガーラルシューズの一方がニーサ神殿に奉納され、もう一方を自分が持っているという話を聞いて、ロマンチックな考え方をしたのではないだろうか。
 ロマ1の世界においてニーサ神殿は「宗派を問わず世界各地の貴族たちが葬られる霊場」(大事典)であるから、ローザリア国王であったクラウスも当然ニーサ神殿に葬られていることになる。
 宮中の者たちに語って聞かせるくらい悲恋の物語のことが好きだったカール3世は、一足がニーサ神殿のクラウスのもとにあるのなら、もう一足を族長アイシャに捧げることで、悲恋の二人に世界にたった二つだけしかない特別を共有してほしいという思いに駆られたのであろう。
 そこで、カール3世はタラール村に赴き、族長アイシャの墓前に供えてほしいという願いとともにガーラルシューズを族長ニザムに託したのである。

 こうしてカール3世に献上されたガーラルシューズはタラール族長ニザムのもとに移った。
 このガーラルシューズがさらに地底人のもとに移らなければいけないのであるが、ニザムが届けたからといって、現生人類嫌いの地底人たちがすんなりとそれを受け取ることはないだろう。
 従って、ガーラルシューズの受け取りを地底人たちが認めうる何かしらの出来事がかつてあったと考えられるのである。

 カール3世の語る悲恋の物語は「二人は結ばれることなく終わったそうだ。」で終わる。
 しかし、実はこの物語にはアフターストーリーがあったのではないだろうか。
 

 恋仲になった皇太子クラウスとタラール族長アイシャであったが、タラール族の掟により二人が結ばれることは許されなかった。
 その一方で北バファル戦争は激しさを増していき、二人は離れ離れになる。
 その後、クラウスが国王の時に、皇太子カール(後のカール1世)の活躍によりオービルの戦いに勝利して北バファル戦争が終結した。
 その勝利を見届けたクラウスは、国民が戦争の英雄カールを讃えるムードを気運として、カールに王位を譲ったのである。

 当時の王妃(クラウスの妻)が既に逝去していたのか、それともクラウスの断ち切れぬ思いに理解を示して背中を押したのか、その辺りは分からないが、退位したクラウスは族長アイシャのもとに向かった。
 離れ離れになっていた二人であったが、二人の気持ちは一緒であった。
 族長アイシャはクラウスの気持ちを受け入れた。
 タラール族の掟を破ることになるため、族長アイシャは族長の座をニザムに託し、クラウスとともに村を後にする。
 そして二人は砂漠の地下の地底湖の町で二人だけの穏やかな生活を始めたのであった。

 しかし、そんな日々に終止符が打たれることなる。
 当時は既にサルーインの封印が解け始めていた頃であったためか(詳細については続稿「運命石論」で述べる)、何かしらの脅威が地底人の町に襲ってきたのである。
 その脅威に勇敢に立ち向かったのが地底湖の町にいたクラウスとアイシャであった。
 二人の奮闘により、脅威は撃退され、地底人の町は守られたが、その代償として二人は帰らぬ人となった。
 命懸けで町を守ってくれた二人を、現生人類嫌いの地底人達も認めざるをえず、町を救った英雄として二人の亡骸は地底人の町に葬られたのである。

 村を去ったクラウスとアイシャが地底湖の町で暮らしていたこと、そして二人が地底人の町を救って戦死したことを知っていたニザムは、カール3世に託されたガーラルシューズを地底人の町に届ける。
 町を救った英雄への供物ならばということで、大嫌いな現生人類の作ったものであるが、地底人たちはガーラルシューズをニザムから受け取ったのである。
 そして、英雄への供物であることからガーラルシューズは宝箱に納められ、大切に保管されることになったわけである。

 このような経緯で、カール3世に献上されたガーラルシューズが地底人の町の宝箱に納められるに至ったのではないだろうか。
あとがき:
 本稿では「悲恋の物語のクラウスとは誰か?」という疑問から出発して、クラウスとアイシャのアフターストーリーにまで迫ってみた。
 4.で述べた悲恋の物語のアフターストーリーは悲恋の物語を語るカール3世も知らなかったことである。
 そのため、クラウスとアイシャで一足ずつというカール3世が当初思い描いたようにはならなかったわけではあるが、結果として一足をクラウスとアイシャの二人で分け合うようなかたちになり、よりロマンチックな結末になったように思う。
質疑応答:
 以下に、BBSにおける質疑応答を抜粋して記載します。

■かず - 2021/05/15(Sat) 19:48 No.5106
 主人公アイシャ・ニザムがモブキャラのタラール族と肌の色が違う理由はどうお考えでしょうか?
 私は(ありがちな考えですが)、族長アイシャがシングルマザーとしてクラウスと成した子を産み、ニザムに繋がるみたいに考えています。

■とら - 2021/05/16(Sun) 20:43 No.5107
 面白い着眼点ですね。
 ただ、移動時のアイコンはあくまでシンボルなので、あまりあてにならないと思っています。
 例えば、敵のシンボルで水棲生物系のシンボルは青いタコですが、戦闘に入ってみたら全然違うのが出てくるとか、巨人の里の長サラキーンは移動時アイコンでは髭の生えたおっさんですが小林画伯の絵では髭すら生えていないとか(完全解析編の表紙の巨人・・・この表紙がサラキーンだと時織人には書かれている)。
 なので、私の私見としては、タラール族の人々とアイシャ、ニザムの肌の色がアイコン上では違っていても、それはあまりあてにならない・・・さらに言えば、実際にはアイシャやニザムも他のタラール族と肌の色は違わないと思います。

 クラウス論を書くにあたり当然アイシャやニザムと族長アイシャの関係も考えざるをえないのですが、私見としては族長アイシャとアイシャに直系の血の繋がりはないと思います。

 まず、生物学的な側面から考えると、巨人や地底人、タラール族は旧人類でマルダーの時代に作られました。
 一方で現生人類はエロール達に作られています。
 つまり、アイシャの「私たちは人間じゃなかったのね」という台詞のそのままズバリで、旧人類と現生人類は姿かたちはそっくりでも全く別の生き物なのだと思います。
 なので、旧人類の族長アイシャと現生人類のクラウスの間に子どもができるのか?と考えると、厳しいのではと思います。

 次に、仮に旧人類と現生人類の間に子どもができると仮定します。
 この場合については歴史的な側面から考えます。

 まず、既に他界したアイシャの両親がクラウスと族長アイシャの場合。
 アイシャは16歳なので、16年前に産まれている。
 クラウス論で述べた立場からすると、カール1世の父クラウスが戦死していなかったとしても厳しいでしょう。

 アイシャの祖母が族長アイシャの場合・・・アイシャの母は自分の母親の名前を娘につけたことになる・・・つけるかな?
 また、アイシャの祖父はニザムだから、クラウスに嫁を取られちゃうのか?とか、嫁の名前を孫につけられるのはどうなのか?とか、いろいろ深みにはまる。

 さらに世代を遡って・・・というのもあるのですが、私見としては悲恋の物語のときに既にニザムはいたと思っています。
 タラール族は旧人類なので現生人類と比べて長寿です。(これは河津氏が明言しています)
 で、族長アイシャとニザムは同じ時代を生きていた。
 穏健派なニザムに対し、積極的な族長アイシャがオングル族討伐のために立ち上がった。
 ステップも平和になっていたので、族長アイシャはクラウスの気持ちを受け入れて、ニザムに村を託して去った。

 アイシャの両親は村の英雄のように立派な女性になってほしいという願いを込めて娘にアイシャと名付けた。
 といったところではないかと考えています。

 >私は(ありがちな考えですが)、族長アイシャがシングルマザーとしてクラウスと成した子を産み、ニザムに繋がる
 純血主義のタラール族で混血が族長になるということはないように思います。
 狭い村社会で父親が誰かを隠し通したり、騙し通したりするのは厳しいのでは。

■かず - 2021/05/17(Mon) 12:54 No.5110
 司馬遼太郎の、土佐の戦国大名・長曽我部氏の興隆を描いた『夏草の賦』に、このような話がありました
 ・閉鎖的な集落では、血が濃ゆくなりがち
 ・そのため、行きずりの旅人を家に泊め、そこの娘を夜伽に出す風習がある
 ・貴人ならこの上ない好都合
 私はこれに引きずられたんだと思います。タラール族も案外そんなんでないかと……
 (むろん、司馬遼太郎のお話の世界ですし、史実の中世日本の集落や
 ロマサガ1のタラール族ともまた違うのでしょう)

■とら - 2021/05/17(Mon) 20:03 No.5111
 >血が濃くなるから外部から~
 それだとタラール族の純血主義の掟という大前提が破綻しちゃいますからね。
 もしそうならクラウスとの結婚は大歓迎なはずですし。
 でも、文学作品とロマ1の世界観の関係・影響っていうのは少なからずあると思ってます。
 河津氏はサルーインの名前についてトールキンの指輪物語を挙げて悩んだって言ってますし。