虎の巣head

世界石像論

(2025年12月28日発表)

 0.はじめに
 1.柱編
  (1)柱Bタイプ
  (2)柱Cタイプ
  (3)柱Aタイプ
  (4)石柱
 2.石像編
  (1)神様像
  (2)戦士像
  (3)巨竜像
  (4)悪魔像
 3.おわりに

0.はじめに

 ロマ1の世界を彩るオブジェクトの数々・・・それらは背景の一部にすぎないが、それらをじっくりと眺めてみると、今までは見えていなかった事柄が見えてくる。
 そこで本稿では、ロマ1のオブジェクトの中から柱と石像に焦点を当てて、それらから見えてくるロマ1世界の真相について言及する。

1.柱編

 ロマ1において目にする柱には主に3つの様式(A、B、C)がある。
 柱の3様式と言うとギリシャの3様式(ドーリア式、イオニア式、コリント式)を想起させられるので、ロマ1の柱にも類似した背景があるのかもしれない。
 と言うことで、ロマ1の柱の3様式について、材質も区別してその設置場所について調べてみると、その分布は以下のようになっていた。
 #表における数値は設置本数。

設置場所

柱A1

柱A2

柱B1

柱B2

柱C1

柱C2

柱C3
セケト宮殿1F 6
セケト宮殿2F 2
アサシンギルドB4 80
南エスタミルのウコム神殿 4
エスタミル下水道のデス教神殿 4
エスタミル下水道のカタコーム 8
北エスタミルのアムト神殿 8
クリスタルシティの宮殿1F 6
クリスタルシティの宮殿3F 4
クリスタルシティのニーサ神殿 6
クリスタルシティのミルザ神殿 6
イスマス城(崩壊前) 4
イスマス城(崩壊後) 1
クリスタルレイクの洞窟 2
砂漠の地下の地底人の村 6
ミルザブールの城2F 4
バイゼルハイムの塔1F 12
バイゼルハイムの塔2F 4
バイゼルハイムの塔3F 4
バイゼルハイムの塔4F 4
バイゼルハイムの塔5F 2
オイゲンシュタットの城 2
コンスタンツの洞窟B4 6
メルビルの宮殿2F 4
メルビルのエロール神殿 4
メルビルのウコム神殿 6
メルビルのサルーイン教地下神殿1 6
メルビルのサルーイン教地下神殿2 4
二つの月の神殿B3 6
二つの月の神殿B4 8

 さて、あなたならばこの表からどんなロマ1世界の背景を読み取りますか?

(1)柱Bタイプ

(i)地底人の村
 柱について読み解くために、まず注目すべきなのはBタイプの柱である。
 と言うのは、Bタイプの柱は砂漠の地下の地底人の村にも設置されているからである。
 地底人たちは古代神戦争の際に地上を捨てて地下に移り住んだ旧人類であり、「厭世(えんせい)的な人々で地上の人間を嫌っている」(大全集)。
 #厭世的:世の中に対して悲観的に見ている。
 そんな現生人類との接点を断っている地底人の村にどうして現生人類の文化圏で目にするBタイプの柱が存在するのだろうか?
 

 可能性はいろいろ考えられるだろうが、本稿ではBタイプの柱は現生人類が開発したものではなく、古代神時代に開発されたものであると推察する。
 つまり、砂漠の地下の柱については、地底人たちが地下に移り住んだ際に自分たちの文化(古代神時代の人類の文化)で製造したものである。
 材質は村の入り口の枠や地底湖の祭壇と同じもので、現生人類がまだ発見していない彼ら独自のものだと思われる。
 

(ii)クジャラート地方
 次、ポイントとなるのはアサシンギルドの最下層である。
 アサシンギルドB4にはBタイプの柱が膨大にある・・・それも乱雑に配置されていて、とても天井を支えるために配置されているとは思えない。
 思うに、アサシンギルドのダンジョンはもともとは古代神時代の採石場かつBタイプの柱の製造場所だったのではないだろうか。
 それが古代神時代の戦争で放置され、後にアサシンギルドのアジトになって、柱はそのままになっているわけである。
 

 そして、時が経ってAS700年頃、クジャラートを建国したアイルザックスがアサシンギルドを壊滅する。
 その戦利品として、美術的価値の高かったBタイプの柱を主都タルミッタに持ち帰り、それをセケト宮殿の柱に用いたのである。
 

 では、当時はまだクジャラートとは敵国だったエスタミルの下水道にBタイプの柱があるのはどうしてなのか?
 クジャラートという国は野蛮で好戦的・侵略的なイメージが強いが、おそらく当時のクジャラートの為政者は対外政策面で愚かでは無かった。
 当面は国内の整備を最優先にすることにした当時のクジャラートの為政者はエスタミル王国に対して喧嘩を売るようなことは考えず、隣国のエスタミル王国と当面は良好な関係を築くことを考えてアサシンギルド壊滅の際の戦利品であるBタイプの柱をエスタミル王国に送ったのである。
 その美術的価値を当時のエスタミル王族たちも認めて、エスタミル王族・貴族たちの墓(カタコーム)や地下神殿(後のデス教神殿)の柱として使用したのでしょう。
 

◆クジャラートにおけるBタイプ柱についての時系列の整理
事柄
BS2000以前

・古代神の時代。現アサシンギルドのダンジョンで古代人類が採石し、Bタイプの柱を製造していた。

BS2000頃 ・古代神戦争が勃発。古代人類は地下に逃れ、居住地を建設する(当時の様式であるBタイプの柱を使用)。

AS0頃

・邪神が活動していた時代。クジャル諸部族も抗争中。アサシンギルドが暗躍し(大全集)、現アサシンギルドのダンジョンをアジトにする。

AS520

・ボガスラル海峡両岸の都市が連合してエスタミル王国を建国。エスタミル地下水道の建造が始まる。(大全集)

AS700頃

・クジャル諸族がアイルザックス・クジャラスツにより統一されて、首都をタルミッタとしてクジャラートを建国。(大全集)

・クジャラートを建国後、アイルザックスはアサシンギルドを壊滅させる。アサシンギルドのダンジョンから戦利品としてBタイプの柱を持ち帰り、タルミッタのセケト宮殿の建設に利用する。

AS843頃

・南エスタミルにボガスラル海峡を鎮めるためにウコム正教派神殿が建設され、その後エスタミル下水道が完成する。(大事典)

・当時のクジャラート政府が、エスタミル下水道の完成祝いとして、アサシンギルドのダンジョンのBタイプの柱をエスタミル王国に贈呈する。エスタミル王国はそれを受け取り、下水道内の王像・貴族の墓や地下神殿の柱として使用する。

AS903

・クジャラートがエスタミル王国に侵攻し、エスタミル王国が滅びる。クジャラートが首都をエスタミルに遷都する。(大全集)


(iii)クリスタルレイクとメルビル
 Bタイプの柱は他にもクリスタルレイクの洞窟内とメルビルの二つの神殿内(エロール神殿とウコム神殿)にもあるが、これらの柱は現生人類が新たに造ったり、アサシンギルドのダンジョンから移動されたものではなく、おそらく古代神時代からその場所にあったものだと思われる。
 

 と言うのは、これらの場所はバルハラント西の洞窟B3(古代神時代の世界地図)においても、当時からその場所は個別に表記されているような場所なので、当時からBタイプの柱が用いられて催事等が行われていたと思われるのである。
 

 古代神時代から現代まででおよそ2000年の年月が経つわけなので「当時の柱がそのまま残るのか?」と疑問に思う方もいるかもしれないが、当時の古代建築(オールドキャッスル、凍結湖の城、砂漠の地下のニーサ神殿)が現代にもほぼほぼそのまま残っていることから考えれば、当時の柱が現存しても何ら不思議ではないでしょう。

(2)柱Cタイプ

 次に注目するのはCタイプの柱である。
 柱Cタイプの設置されている場所には傾向がある。
 それは戦士像(ウコム像、ミルザ像)の設置されている場所もしくはそれに縁のある場所に設置されているということである。
 従って、柱Cタイプは「戦に打ち勝つ強さの象徴」のような意味合いが込められた柱なのだと思われる。
 このようにCタイプの柱については推察するのであるが、その際に要検討しなければならないのが例外である「二つの月の神殿」である。
 二つの月の神殿はアムトとエリスを祀った神殿であって、実際に設置されているのは戦士像ではなく神様像である。
 故にCタイプの柱が設置されている場所としては、二つの月の神殿だけが例外となってしまうのである。
 

(i)二つの月の神殿
 例外である二つの月の神殿について説明するために、当サイトでこれまでに述べてきたロマ1論をもとに議論する。
 古代神話論で述べたように、二つの月の神殿はそもそもは古代神時代の建造物であって、邪神封印戦争の頃に入り口に二つのシンボルを鍵とする細工がなされたと思われる。
 つまり、邪神封印戦争の頃以降は二つの月の神殿の入り口は人一人が通るのがやっとの大きさになっているわけなので、それ以降に二つの月の神殿内にCタイプの柱が造られたとは考えにくい。
 即ち、二つの月の神殿内にあるCタイプの柱も、現生人類が造ったものではなく、古代神時代に旧人類たちが造ったものと考えたほうが妥当なのである。
 

 では、その他の場所のCタイプの柱も古代神時代にものなのかと言えば、それらはおそらく現生人類が二つの月の神殿の柱を模して造ったものであろう。
 と言うのは、アムト神は愛の女神であるが、その誕生の経緯はエロールがデスやシェラハの力を抑制するためであり、実際にエリスとアムトの二つの月の力によってデスとシェラハは弱体化して、降参するに至っているのである。
 つまり、二つの月の女神は当時の人類にとっては邪神一派撃退の象徴のような存在になるわけである。
 故に当時の戦士たちは、邪神を倒す強さの象徴として二つの月を崇め、その力にあやかるために、二つの月の神殿に設置してあったCタイプの柱を模した柱を造るようになったのである。
 こうした経緯で、戦士像(ウコム像、ミルザ像)の設置されている場所もしくはそれに縁のある場所に二つの月の神殿と同じデザインであるCタイプの柱が用いられるようになったのであろう。

(ii)バイゼルハイムの塔
 バイゼルハイムの塔の柱の色が他と少し異なるのは、ミニオン論1で述べたようにフラーマは塔に「外部からの邪悪なものの侵入を防ぐ結界を張っている」からであり、その結界の媒介物がCタイプの柱や戦士像だからなのでしょう。
 つまり、フラーマによって魔法による加工がなされているのである。
 

(3)柱Aタイプ

 Bタイプの柱とCタイプの柱が古代神時代由来のものだったのに対して、Aタイプの柱はおそらく現生人類が造った柱なのだと思われる。
 

 黄金のAタイプの柱については、

・アムト神殿はアフマドさんの贅沢豪華仕様

・ニーサ神殿はニーサのシンボルが「小麦」で象徴色が「小麦色」(基礎知識編)なので実った小麦をイメージしたもの

・サルーイン地下神殿は制圧したゴールドマイン金鉱深部からの横流し品を鋳造したもの

 なのでしょう。
 

(4)石柱

 彫刻されて造られた柱ではないが、石柱もロマ1の世界には点在していて、その設置場所は以下のようになっている。
 #表における数値は設置本数。

設置場所

石柱1

石柱2

石柱3
スカーブ山外部 4
スカーブ山内部1 4
スカーブ山最深部 2
ガレサステップ 23
タラール族の村 3
ウロ 4
最終試練 25
迷いの森 3
アロン島のジャングル 2
ゲッコ族の村B1 5
ゲッコ族の村B2 2
ジャングルの洞窟 31
シルバーの洞窟B2 8
二つの月の神殿B1 6
トマエ火山B2 4
トマエ火山B5 7

 石柱の設置は主に2通りの用途によってなされていると思われる。
 つまり、宗教的・魔法的な役割、もしくは門的な役割である。
 とは言え、門的に使われている場所はタラール村の入り口とウロの入り口だけで、他は全て宗教的・魔法的な役割で設置されていると思われる。
 

(i)スカーブ山
 ガレサステップの太陽の祭壇と距離的には近くであるが、太陽の祭壇とは異なる石柱の配置がなされているので、スカーブ山固有の目的・・・タイニィフェザーを祀るための石柱だと思われる。
 配置の特徴としては、石柱と岩で1セットになっていて、その組み合わせで外部と内部に複数配置されている。
 

(ii)太陽の祭壇
 エロール信仰によるもので、円周上や円の中心に石柱が配置されるところに特徴がある。
 

(iii)迷いの森
 迷いの森の石柱は迷いの森に施された迷彩効果の媒介物なのかもしれない。
 

(iv)ゲッコ族
 ゲッコ族はサルーイン信仰のために石柱を用いていたようである。
 シルバーの洞窟にもいくつか設置されているが、シルバーの洞窟はもともとはゲッコ族の住処だったと思われるので(シルバー論を参照)、その名残であろう。
 また、ジャングルの洞窟には大量の石柱があるが、その乱雑さから推察すると、宗教的な目的で設置してあるわけではなく、アサシンギルドの柱の如く、この場所が古代ゲッコ族の石柱造りの作業場だったのではないだろうか。
 

(v)二つの月の神殿
 おそらく古代神時代の旧人類が宗教的な目的で設置したのだと思われる。
 

(vi)トマエ火山
 邪神封印戦争後にフレイムタイラントを祀るために配置されたのだと思われるが、一部は溶岩に押し流されてしまって本来の設置場所からはズレてしまっているようである。
 

2.石像編

 ロマ1の世界には神様像、戦士像、巨竜像、悪魔像の4種類の石像が設置されている。
 次はこれらの設置理由について検討してみる。

(1)神様像

 神様像の設置場所は以下のようになっている。
 #表における数値は設置数。

設置場所

神様像1

神様像2
北エスタミルのアムト神殿 4
クリスタルシティのニーサ神殿 4
凍結湖の城B2 2
メルビルのエロール神殿 2
二つの月の神殿B5 2

 神様像は武神系ではない神様を象(かたど)ったもの・・・即ち、エロール神殿はエロール、ニーサ神殿はニーサ、アムト神殿はアムト、二つの月の神殿はエリスとアムトを象ったものである。
 

 また、凍結湖の城の神様像は古代神話論で述べたように古代神(外界の人物のアバター)を象ったものであろう。
 

(2)戦士像

 戦士像の設置場所は以下のようになっている。
 #表における数値は設置数。

設置場所

戦士像1

戦士像2

戦士像3
南エスタミルのウコム神殿 4
クリスタルシティのミルザ神殿 4
ミルザブールの城1F 4
バイゼルハイムの塔5F 2
メルビルの宮殿1F 4
メルビルのウコム神殿 無し

 戦士像は武神系の神様を象ったもの・・・即ち、ウコムやミルザを象ったものである。
 ウコム神殿やミルザ神殿の祀っている神は名前から明らかであり、騎士団領は当然ミルザを祀り、メルビルの宮殿についてはバファルの信仰がウコム(大事典)なのでウコムを祀っている。
 

(i)メルビルのウコム神殿
 メルビルのウコム神殿にはウコムを象った像が設置されていない。
 神殿なのに像が設置されていないのはメルビルのウコム神殿だけであり、明らかにイレギュラーである。
 

 何故なのか?・・・その答えは大事典に記載してある。
 メルビル市のウコム正教派神殿。ここにはウコムの御神体とされる鉾が安置されていたが、数年前に突如消失。(大事典)
 このように、メルビルのウコム神殿には昔から「ウコムの鉾」が御神体として祀ってあったので、ウコムの像が設置されていないのである。

(ii)タペストリーに込められた意味
 壁に掛けられたタペストリーは3種類あるが、それらの設置されている場所は以下のようになっている。


タペストリーA

タペストリーB

タペストリーC
設置場所 北エスタミルのアムト神殿
クリスタルシティのニーサ神殿
メルビルのエロール神殿
南エスタミルのウコム神殿
クリスタルシティのミルザ神殿
オイゲンシュタットの城
メルビルのウコム神殿
北エスタミルの首長邸
クリスタルシティの宮殿
ミルザブールの城

 上記のように、タペストリーAは神様像が設置される場所・・・即ち、エロール、ニーサ、アムトを祀る場所に掛けられ、タペストリーBは戦士像が設置される場所・・・即ち、ウコムやミルザを祀る場所に掛けられ、タペストリーCは各国の為政者の執務室に掛けられている。
 

 興味深い点は「メルビルの宮殿にはタペストリーCが掛けられていない」ということである。
 バファル帝国は代々そうしてきたのか?それとも、現皇帝フェル6世に何か思うところがあっての実行なのだろうか?
 

(3)巨竜像

 巨竜像の設置場所は以下のようになっている。
 #表における数値は設置数。

設置場所

巨竜像1

巨竜像2

巨竜像3
ヴァンパイアB4 32
(墓24)
水竜神殿外部 12
水竜神殿1F 4
水竜神殿B1 4
水竜神殿B2 4
水竜神殿B3 8
水竜神殿B4 6
水竜神殿B5 8
魔の島外部 8
凍結湖の城B2 2
凍結湖の城B4 12
メルビルの地下神殿1 2
メルビルの地下神殿2 2

 水竜神殿の巨竜像が水竜を象ったものであるのは明らかであろうが、他の巨竜像は何を象っているのだろうか?
 

(i)ヴァンパイアの洞窟
 ヴァンパイアの洞窟の最下層には32体もの巨竜像が規則正しく設置されているが、どうして巨竜像が設置されているのだろうか?
 ・・・おそらく、あの像は水竜を象ったものだと本稿では推察する。
 

 まず本稿の前提・・・ミニオン論4で述べたヴァンパイア封印までのあらましを簡単に説明する。
 AS200年頃(ロマ1の物語の舞台からおよそ800年前)、「冥府を説く」の信者が偶然にもかつて天才が開発・封印したヴァンパイア化する道具・技法を発見し、それに魅了された信者たちがそれを使ってヴァンパイア化した。
 力を得た彼らは神になり替わろうと行動を起こしたが、気のムーンストーンを携えたエロール教神官とアムトとエリスの信者からなる討伐隊の攻撃を受けて重傷を負い、瀕死の状態で未開の地フロンティアに敗走。
 時は流れてAS580年頃(ロマ1の物語の舞台からおよそ400年前)、フロンティアで傷を癒したヴァンパイアたちは再び侵攻を開始する。
 ヴァンパイアたちは当時のエスタミル王国を恐怖のどん底に陥れるも、聖杯を携えたアムトの神官アグネスによって撃退され、彼らの隠れ住んでいたフロンティアの地に封印されたのであった。

 ゲーム内で水竜信仰と言えばクジャラートであるが、ヴァンパイアがアグネスによって封印された当時はエスタミル王国であって、まだエスタミルはクジャラートに侵略されているわけではない。
 それにもかかわらず、どうしてアグネスに討伐されてヴァンパイア封印の地に水竜の像が設置されているのか?
 この理由はおそらく当時のエスタミル王国も水竜信仰だったからである。
 四天王論補論で述べたように、南北エスタミルに挟まれたボガスラル海峡にはもともと元祖水竜様であるリバイアサンが棲んでいたために、エスタミル周辺には古くから水竜を荒ぶる神として恐れて、信仰する文化があったのだと思われる。
 それ故に、当時のエスタミルの信仰対象であった水竜の像を封印の媒介物に用いたのである。
 

 「アムトの神官アグネスが封印したのだから、封印にはアムトを象った像を使うのではないか?」と考える人もいるだろうが、アムト信仰がエスタミルで広まったのはこの一件以降であり、封印のために使用できたのが量産してあった水竜の像しかなかったのであろう。

 また、ヴァンパイア封印の地にはお墓もたくさんある。
 ヴァンパイアはアンデッドの王であるから、あれらは誰かのお墓のように思うかもしれないが、未開の地フロンティアに人々が棲み始めたのは近年になってからであり、ヴァンパイアがあの場所に潜伏し始めたのはずっと昔であることから推察すると、あれらは誰かのお墓ではなく、あくまでヴァンパイア封印のための石碑なのだと思われる。

 そして現在、ヴァンパイアの瘴気を浴び続けた水竜像は劣化して白色化し、その封印の効果も薄れてきているようである。

◆ヴァンパイア封印に関わる時系列の整理
事柄
AS200頃

・ヴァンパイア誕生。(ゲーム内の台詞「私は800年生きている」からの推察)

・エロール教神官とアムトとエリスの信者からなる討伐隊によってヴァンパイア討伐。ヴァンパイアたちは未開の地フロンティアに敗走。(ミニオン論4)

AS520

・ボガスラル海峡両岸の都市が連合してエスタミル王国を建国。エスタミル地下水道の建造が始まる。(大全集)

AS580頃

・フロンティアで傷を癒したヴァンパイア復活。(ミニオン論4)

・ヴァンパイアがエスタミル王国を襲撃するが、アムト正派教団の神官アグネスに撃退されて封印される。(大事典)封印には当時エスタミル王国で信仰されていた水竜の像が用いられる。

・アグネスの功績を讃えて、エスタミル王が北エスタミルにアムト神殿を建造する。(大事典)

AS843

・南エスタミルにボガスラル海峡を鎮めるためにウコム正教派神殿が建設され、その後エスタミル下水道が完成する。(大事典)

AS903

・クジャラートがエスタミル王国に侵攻し、エスタミル王国が滅びる。クジャラートが首都をエスタミルに遷都する。(大全集)

 #上記のように、エスタミルにおけるアムト信仰、ウコム信仰はAS580年のヴァンパイア封印以降のことなのである。

(ii)魔の島
 ウェイ=クビン論で述べたように、魔の島の塔はウェイ=クビンがクジャラートを利用して建造させたものであり、「イナーシーに水竜を祀って嵐を鎮める」という名目で水竜の像が設置されている。
 

(iii)凍結湖の城
 凍結湖の城の神様像と同様に古代神(外界の人物のアバター)を象ったものであろう。
 

(iv)メルビルの地下神殿
 メルビルの地下神殿はサルーイン教団の神殿であるにもかかわらず、悪魔像ではなく巨竜像が設置されているのはなぜだろうか?
 その理由については以下のように推察する。
 

 大事典によると、サルーイン教団(正式名称「サルーインの下僕粛清教団」)はBS70年頃に発生し、徐々に勢力を拡大していったが、彼らの活動はあまりに反社会的であったため全世界で活動を禁止され、現在では地下組織として暗躍を続けるに至っているとのことである。
 即ち、サルーイン教団の活動は昔から弾圧・摘発される対象だったのである。
 今でこそサルーイン教団の神官は力をつけ、メルビル下水にもモンスターが蔓延ってしまっているためメルビル警備隊が手を出せない状況になっているが(大全集)、以前はメルビル警備隊等の治安維持部隊による摘発があったはずである。
 その際に邪神を象った像を設置していたら言い逃れができないので、迷彩のために泣く泣く巨竜像を設置したのであろう。

 では、あの巨竜像は何を象っているのか?
 バファルの巨竜と言えば、グレートピットのアディリスとゴールドマインのゴールドドラゴン(S)が想起されるが、これらは信仰の対象にはなっていない(大事典)ので、おそらく水竜を象っているのではないだろうか。
 つまり、サンゴ海貿易で発展してきたメルビルなので、海上の平穏無事を祈願するという名目で水竜を祀っているように見せかけたわけである。
 メルビルはウコム信仰によって海上の平穏無事を祈願しているが、サルーイン教団としては敵であるウコムの像を偽装であったとしても設置することには耐えられず、妥協案として水竜を祀ることを口実にしたのであろう。
 そして、メルビル警備隊が手出しをできなくなった現在も、昔の名残のまま水竜像が設置され続けているのである。
 

(4)悪魔像

 悪魔像の設置場所は以下のようになっている。
 #表における数値は設置数。

設置場所

悪魔像1

悪魔像2

悪魔像3
エスタミル下水道のデス教神殿 4
モンスターB3 4
テオドールB5 2
グレートピットB4 2
冥府最奥 14

(i)デス教神殿
 まず悪魔像とは何なのかについて考えたいと思う。
 取っ掛かりとしてはエスタミル下水道のデス教神殿・・・デス教の神殿なのだからデスを象った像を設置すればよさそうなものなのだが、なぜ悪魔像なのか?
 思うに、悪魔像に限らず神様像、戦士像、巨竜像といった石像はモンスターシンボルと同様に石像のシンボルでしかないのだと思われる。
 つまり、フィールド上では同じ「神様像」の造形に見えてはいるけれど、現物としてはそれぞれエロール像、ニーサ像、アムト像、エリス像で造形は違っている。
 戦士像もウコム像とミルザ像では現物の造形は違っている。
 同様に悪魔像もサルーインやデスといった邪神を象った像を表すシンボルなのだと思われるのである。
 故にデス教神殿の悪魔像はフィールド上の見た目は悪魔を象ってはいるものの、現物としてはデスを象ったものなのだと思われるのである。
 

(ii)騎士団領の二つのダンジョン
 騎士団領の二つのダンジョンに配置されている悪魔像は何なのか?について考える前に、あの二つのダンジョン・・・「モンスター」と「テオドール」のダンジョンとは何なのか?について推察しておく。
 あの二つのダンジョンは「コンスタンツ」のダンジョンとは明らかに造りが違う・・・つまり、「コンスタンツ」のダンジョンがただ掘ったような造りなのに対して「モンスター」と「テオドール」のダンジョンは多重構造の建造物のような造りなのである。
 

 これらのダンジョンについて基礎知識編には次のように説明されている。
 クジャラート領との境界にそびえる山脈の中には、未知の存在によって造られたと思われる地下迷宮が点在している。以前は、見習い騎士たちの訓練などに使用されていたらしいが、今は足を踏み入れる者もいない廃墟だ。(基礎知識編)
 未知の存在によって造られた・・・未知の存在とは誰なのか?
 それはおそらく古代神時代の旧人類であろう。
 何故ならば、「モンスター」と「テオドール」のダンジョンのような多重構造のダンジョンは他にも二つの月の神殿とラストダンジョンがあるが、これらはいずれも古代神時代に造られたものだからである(古代神話論を参照)。
 バルハラント西の洞窟B3(古代神時代の世界地図)から推察すると古代神時代にはオイゲンシュタット付近に旧人類の都市があったと思われるので、その都市に関わって造られた場所なのであろう。
 

 では、悪魔像を設置したのが旧人類なのかと言うと、おそらくそうではない。
 おそらく古代神戦争で世界が崩壊して「モンスター」と「テオドール」のダンジョンは放置された。
 その後、3邪神が活動を開始し、現生人類の中に邪神を崇拝する者たちも現れた。
 しかし、反社会的な邪神崇拝者たちは弾圧されて、彼らの逃げ延びた先の一つが「モンスター」や「テオドール」のダンジョンだったわけである。
 故に「モンスター」や「テオドール」のダンジョンの悪魔像は昔潜伏していたサルーイン教団、もしくはデス教団が邪神を祀って設置した像なのだと思われる。
 

 なお、大事典には以下のようにイフリート信仰にも言及されている。
 また森林部には、醜悪なモンスターを信仰する地域もある。最も有名なのは、炎の悪魔イフリートを崇拝する集団である。サルーイン教の信者と一緒に貴族を懐柔しようともくろみ、時のローザリア政府から弾圧を受けたこともあった。(大事典)
 騎士団領での事件を鑑みると、悪魔像がイフリートを象ったものだという可能性も否定できないが、大事典の記述によればイフリート信仰はローザリア領内での事件であるし、他の石像の象った対象と比較してイフリートは正直格落ちなので、本稿としては悪魔像が邪神を象ったものであると結論付けることにした。

 また、「モンスター」と「テオドール」のダンジョンが以前に騎士の訓練場として使われていたかどうかについては何とも言えないが、「コンスタンツ」のダンジョンにはタイプCの柱(戦士像に関わる柱)が設置されているので騎士の訓練場として使われていたと見て間違いないであろう。
 

(iii)グレートピット
 アディリスの鎮座する場所にも悪魔像が設置されている。
 アディリスは水竜とは違って信仰の対象にはなっていないから、アディリス信仰に関わって悪魔像が設置されているわけではないだろう。
 では何なのかと言うと、おそらくこの悪魔像も騎士団領の悪魔像と同様に以前にこの地に逃亡して来て、潜伏していた邪神崇拝者たちが設置したものなのではないだろうか。
 つまり、もともとは邪神崇拝者たちの潜伏地だったが、そこに後からアディリスがやってきて住処にしてしまったために、邪神崇拝者たちは追い出されてしまったという経緯なのだと思われる。
 

(iv)冥府最奥
 水竜神殿の水竜像が人間からの崇拝の意思を示すものであるのと同様に、邪神デスに対する崇拝の意思を示すためにデス教団「冥府を説く」がデスを象って設置したものであろう。
 石像の色が特殊なのは、リガウ島産の特殊が岩石を使っているからかもしれないし、冥府に充満する邪気の影響なのかもしれない。
 

(v)おまけ:「テオドール」のダンジョンの宝箱
 以上が石像に関する推察であるが、「テオドール」のダンジョンについて言及したついでに「テオドール」のダンジョンの特殊な点についても触れておく。
 「テオドール」のダンジョンには他では見られない特殊な仕掛け・・・偽装宝箱が設置されている。
 偽装宝箱には以下の3タイプがある。
 ・空箱
 ・接触すると瓦礫に変化する宝箱
 ・部屋の外から見ると宝箱だが部屋に侵入するとモンスターになる宝箱や、部屋に侵入すると見えるようになる宝箱
 

 さて、これらの偽装宝箱はどうして「テオドール」のダンジョンにだけあるのだろうか?
 空箱はともかくとして、瓦礫に変化する宝箱や部屋に侵入すると変化する宝箱という視覚的に特殊な宝箱の存在に着目して推察を進める。
 

 (ii)で述べたように、「テオドール」のダンジョンは以前は邪神崇拝者たちの潜伏場所だったと思われる。
 騎士団領で・・・邪神崇拝者の人物・・・そして視覚的におかしな偽装宝箱・・・これらのキーワードから想起される人物が一人いる。
 それはウェイ=クビンである。

 ウェイ=クビン論及びアイスソード論3で述べた彼の若き日々を簡単にまとめる。
事柄
AS899

・皇太子カールと3人の術法使い(フラーマ、ソフィア、ウェイ=クビン)が巨人の里に遠征する。その際に、3人の術法使いは最高位の術法を習得する。(アイスソード論3)

AS900頃

・カール(1世)がクラウスから王位を継承する。

・フラーマは騎士団領専属術法顧問となり、ソフィアはエロール教団エリートコースを進む。そしてウェイ=クビンはフラーマとソフィアへの劣等感・敗北感で悶える。(ウェイ=クビン論)

・ウェイ=クビンが不老不死を求めてサルーイン教団と接触する。(ウェイ=クビン論)

AS903

・ウェイ=クビンがクジャラートを唆す。(ウェイ=クビン論)

・クジャラートがエスタミル王国を攻略し、首都をエスタミルへ遷都する。(基礎知識編、大全集)

・ウェイ=クビンがクジャラートに進言して魔の島に塔を建造させる。そして、乗っ取る。(ウェイ=クビン論)


 ウェイ=クビンは騎士団領出身であるが、同期の火術マスター・フラーマが騎士団領のルビーの守護者に任命されたことに大きな劣等感・敗北感を感じて、それを払拭するために「不老不死を実現することによって自分が世界最高の魔道士であることを世に知らしめる」という野望を持つに至った。
 そして、彼が不老不死の手がかりを求めて最初に接触したのがサルーイン教団だった。
 ・・・つまり、彼が接触したサルーイン教団のアジトが騎士団領の「モンスター」や「テオドール」のダンジョンだったのである。

 サルーイン教団に不老不死を求めて潜入した彼は、サルーイン教団から情報を聞き出すために自分の力を示して自分のポジションを高めていった。
 つまり、後に魔の島の塔に数々の仕掛けをしたように、サルーイン教団のアジトでも数々の匠の技を披露したのであり、それらの一つが「テオドール」のダンジョンの偽装宝箱なのである。
 クジャラートがエスタミル王国に侵攻した際に用いた光学迷彩的な不可視や、魔の島を覆う防御壁(外からは塔が見えず、中は常に真っ暗)と類似した原理で、瓦礫やモンスターを宝箱に偽装してあるのでしょう。
 

3.おわりに

 ロマ1世界の柱や石像はどういう意図で設置してあるのだろう?
 ・・・という本稿の論点は実のところ2010年くらいには疑問に思っていたことである。
 しかしながら、考えてみても全く理由が見えないままで、この疑問はずっと頓挫したままであった。
 ところが2025年末、改めてこの疑問について再検討してみたところ、これまでに発表したロマ1論を前提とすることで私なりに納得のいく説明をすることができるところにまで至ったのでした。
 積み上げてきたものが結実する喜び・・・ロマ1論を書いてきて良かったと実感しています。